散歩主義

2007年05月30日(水) プリン/堀江敏幸

「考える人」に掲載されていた堀江敏幸さんの短編小説「プリン」をようやく読んだ。

堀江さんの作品で、生活のリズム調整が出来るときがある。
そういう人はあまりいない。
ものを考える姿勢というか癖を直すのにちょうどよかったりする。

さて、物語は自家製プリンを作っているときに、母親が胸が苦しいと訴えだし、救急車で病院へ行くという出来事の時間軸が真ん中にあって、時間を遡るお話の枝が伸びていく。
中心はプリンを褒めてくれた優しい義父。故人である。
そのお葬式。そこに現れた人をくさす高圧的な親戚の話。
そして物語は最後に優しさがすっと現れて、フェードアウト。

さりげなく「優しさが救われる」ところが、堀江さんらしいとおもった。
その物語を進める「手つき」というようなもの、雰囲気がとても好きなのだ。

今日、自分のとても短い作品を書いていて、この人をどうするの、これでいいの、と検討したときに
むしろ堀江さんの「手つき」に近しくなろうとおもうぐらい。

文章のうまさと柔らかさは相変わらず。
短編小説のお手本にしたい作家の一人です。


ところで、作品中に「雪沼」という地名が現れたから、あの本に関連した内容なのかな、ともおもう。
まだ読んでいないのです「雪沼、その周辺」。

ごろん、と話題が変わって
多和田葉子「溶ける街 透ける路」が届いたので読み始める。
挿絵のエッチングが素敵です。
原画でみられたらもっといいだろうな。


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