「考える人」に掲載されていた堀江敏幸さんの短編小説「プリン」をようやく読んだ。
堀江さんの作品で、生活のリズム調整が出来るときがある。 そういう人はあまりいない。 ものを考える姿勢というか癖を直すのにちょうどよかったりする。
さて、物語は自家製プリンを作っているときに、母親が胸が苦しいと訴えだし、救急車で病院へ行くという出来事の時間軸が真ん中にあって、時間を遡るお話の枝が伸びていく。 中心はプリンを褒めてくれた優しい義父。故人である。 そのお葬式。そこに現れた人をくさす高圧的な親戚の話。 そして物語は最後に優しさがすっと現れて、フェードアウト。
さりげなく「優しさが救われる」ところが、堀江さんらしいとおもった。 その物語を進める「手つき」というようなもの、雰囲気がとても好きなのだ。
今日、自分のとても短い作品を書いていて、この人をどうするの、これでいいの、と検討したときに むしろ堀江さんの「手つき」に近しくなろうとおもうぐらい。
文章のうまさと柔らかさは相変わらず。 短編小説のお手本にしたい作家の一人です。
ところで、作品中に「雪沼」という地名が現れたから、あの本に関連した内容なのかな、ともおもう。 まだ読んでいないのです「雪沼、その周辺」。
ごろん、と話題が変わって 多和田葉子「溶ける街 透ける路」が届いたので読み始める。 挿絵のエッチングが素敵です。 原画でみられたらもっといいだろうな。
|