散歩主義

2007年03月02日(金) 「書いています」

「詩を書いています」と他人に堂々と語り出したのはいつ頃からだろう。
Nは自分が投稿を続けている雑誌から詩を切り取り、ファアイルをつくりながらふと考えた。

 Nは思う。
 高校の頃から書き始めていたが、「私は詩を書いています」と他者にいうことは面映ゆいことだった。
 
 あれから30年が過ぎ、Nはいまだに詩を書こうと何度目かの発心をしているようだ。毎月、なにがしかの詩を書いているにもかかわらず、「発心」というのはあるらしい。

 書かなければ生きていけなかったが、
 書かなくても生きていけるようにならねばならなかった。

 しかし、詩はそんなレベルで語り終えることなぞ許さなかった。
 経験がNを変えたのかもしれない。
「私」から出て「私」を超えろ、とねがった。

 Nは白紙を前に、周りから音も色も消す。
 誰にも言わなかったことだけれど 
 別にもう、言っても良いのだろう、とNは思う。
 「詩が私を書いています」と。


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にしはら ただし [MAIL] [HOMEPAGE]