散歩主義

2004年11月22日(月) 山手線で書かれた小説

京都新聞に不定期連載の「文人往来」というコラムがあります。
タイトルのとおり、「文人が文人を語る」という内容です。ほとんど小説家が小説家を語っていて、いつも興味深く読んでいます。
ここでもたしか村松友視さんが吉行淳之介さんを語られている内容を書いたと思います。

今回は新井満さんが森敦さんを語るという内容。
面白かったです。
お二人とも芥川賞作家。森さんは「月山」で受賞された「伝説の作家」として有名です。新井さんは「尋ね人の時間」で受賞されていますが、作曲家としてご存じの方も多いと思います。

新井さんにとって森さんは『文学の師と言うよりも人生の師』だそうです。
二十八歳の時に「月山」を、勤務していた広告会社の仕事で森さんに会わねばならないという事情から初めて読み、『天上の音楽を聴くように気持ちのいい作品』と感じられたといいます。
で、初めて読んだその感動を伝えようと、スウィングル・シンガーズの歌う、バッハの「G線上のアリア」を持参したというから、新井さんも新井さんだけれど(凄い!)、「そうかあ」といって5回も聴いた森さんも森さん(凄い!!)です。

新井さんはコラムで「月山」を解説してくれます。
強調されるのは森さんの「客観的な視点」。新井さんは「宇宙媒介的自己遠望」と表現されていますが、例えば「月山」の冒頭での、天から見た庄内平野、月山、鳥海山、村と超ロングの視点からのズームインしていく手法ですね。
その空から、あるいは月から見つめる視点というのが、森作品では際だっていた、と。

それともう一つ、「対応」というものに非常にこだわられたそうです。
「生を通して死を書いた作品」があると「死を通して生を書く作品」を創る、といったふうに。
新井さんによれば
『それぞれの作品を合わせるとプラスマイナスゼロになるような世界を書いている』と。
それを「ゼロを目指す力」とも。つまりは一つの円環を創る力だと思うんですが、ぼくが思うには、それってつまり「曼荼羅」を書いているんじゃないかと思うんですが。

まさか円環つながりじゃないだろうけれど、森さんは小説を山手線の中で書いていたそうです。それに倣って新井さんは芥川賞受賞の発表までの時間、山手線に乗って時間を潰されたとか。

で、どうも「まさか」ではないようです。
「山手線に乗ると言うことは東京にゼロを描くことになります。そのゼロの中から生まれるものを待っていたのです」と新井さん。

二人とも、凄いなあ!!!!
最近森さんについての新刊が出ました。発注して待っているところです。








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