| 2004年11月20日(土) |
N`s jazz house vol.10 |
「DIG」
真っ暗。 いきなり飛び出したバップの音の塊を耳にした瞬間に感じた。 熱のこもった闇だ、と。壁でもなければ突き放すものでもない、じんわりと身体の中にまで忍び込んでくる柔らかで賑やかなジャズの闇。 1951年10月5日、この日のセッションに招集されたメンバーによる音源の記録はこの「DIG」以外に知らない。リーダーはマイルス・ディヴィス。テナー・サックスにソニー・ロリンズ、途中で退席するけれどアルト・サックスにジャッキー・マクリーン。ピアノのウォルター・ビショップとベースのトミー・ポッターは手練れのバップ・ミュージシャンだ。そしてバンド全体の華やいだ雰囲気を決定的に演出しているアート・ブレイキーの派手なドラム。
マイルスのディスコグラフィーの中では、ちょうど変革のきっかけの頃。バップからクールへ、そしてハード・バップへと移行していくスタイルのうち、クールからハード・バップへ移ろうとしはじめた頃だといえるだろう。マイルスの有名なプレスティッジ・セッションは本作の4年後になる。そして、若手のロリンズとマクリーンにもソロのパートをつくってフレッシュな演奏を引き出しているのも聞き物。それとなんといってもマイルス自身が吹きまくっている。
マイルスのバイオグラフィーの中ではヘロイン中毒に苦しみ抜いている時期。ジャケットに写るマイルスの、こんな姿は他にないように思う。 いつもスタイリッシュな男の、実はいちばん苦しい頃だったんじゃないかな。 (だけれどバラードの音は澄み切っている…。)
時代が古いせいもあるけれど、録音状態は悪い。それでもCD化されて、よりオリジナルな音源に近くなっているんだと思う。それに何故が分割されていた最後の二曲がくっついて、CDでようやく「10月5日セッション」が通して聞けるようにもなっている。そんな音は、アナログ一発録りのセッションでなければ発生しない緊張感と一体感に溢れている。ルーズでレイジーで「自由」で、しかもコンセントレートしている。とにかく「イカしてる」。なんだか「懐かしい」気分になる部分もあって…。
ぼくのフェヴァリットは4曲目のBLUINGと7曲目のMY OLD FLAME。前者はマイルス、オリジナルの深いブルーズ。後者はスタンダードのバラードでともにマイルスのソロは絶品。 いろんなスタイルのマイルスがあって、そのすべてを聴くし、好きだけれど、このころのマイルスはほんとにいいと思う。
負けない、ということ。躯は潰れてもハートは絶対に潰されない、という演奏。 貧乏でクスリ中毒で、それでも前のめりで進んでいく姿。馬鹿馬鹿しく見えるだろうけれど、ぼくは好きだ。 「DIG」、名盤です。 *「DIG」 マイルス・ディヴィス featurring ソニー・ロリンズ (プレスティッジ)
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