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2004年01月22日(木)  総天然色 AKIRA(その3)

前回の続きです。
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今回のフルカラー国際版は、大友さんのオリジナルを
アメリカのMARVEL [EPIC] COMICS社が翻訳出版したものを、
再度日本語に翻訳し直してあるのもポイントです。

ただフルカラ−版を楽しむだけなら、
またオリジナルのセリフを貼り込めば足りるのですが、
あえてそうせず、海外で読まれているAKIRAがどんなものか
感じて欲しいとのことで、再翻訳という形にしたそうです。
わざわざそうするということは、
オリジナルと国際版は違うのか?というと、
びっくりするくらい違っています。

連載当時は、ストーリーを把握できない読者も
かなりいたらしいのですが、この国際版は
我が妹をして「妙に判り易かった」と言わしめる程で、
広い読者層をターゲットにしているようです。

オリジナルの場合は、絵から雰囲気を感じ取って、
少ないセリフの中でキャラが何を言いたいのかを
読者が自分で読み取る必要があったのですが、
国際版では、このコマの絵は何をしているかを
わざわざセリフで説明しています。

例えば、バイクで走行中、道路が行き止まりに
なっているのを見つけた金田が、
後続にそれを知らせるため、左手を上げるシーン。

オリジナルでのセリフは「チッ」の一言だけ。
これが国際版では、右手を上げて(笑)
「合図してみんなを止めた方がいいな」
って、実に説明的です。全体的にこんな感じ。

日本語 → 英語 → 日本語と訳した為に、
なんだか意味不明の言葉になったセリフもあります。
例えば、問題を起こした金田達に
体育教師が順番に体罰を加えるシーン。

オリジナルでは
「指導オ 行くぞオ」ガン。
「指導オ」ゴッ。

これが国際版では、
「いつでも喜んで多少の体育は教えてやる」WHACK。
「行動療法」THUD。

・・・訳分かりません。(笑)

おかしな言葉になっているのは、
訳者のせいかもしれませんね。
故・黒丸氏によるこの国際版の翻訳の文章は、
意訳がほとんどなく、全体的に直訳ぽい感じがします。
(上記のセリフなんて、翻訳前の英語が
 想像できそうじゃありませんか?)
言葉がキャラのものになっていないんですよね。
こう言っては申し訳ないですが、
良くない翻訳の見本かもしれません。

翻訳家泣かせの文章と言えば、洒落(言葉合わせ)の部分だと
かの戸田奈津子先生もおっしゃっております。
AKIRAに於いてもそういう部分があって、
その苦労ぶりが伺い知れます。

金田の族仲間が[春木屋]で会話するシーン。

オリジナルでは、
山形「今迄 こんなに いきだおれを感じた事はねぇぜ」
甲斐「お前なァ もうちょっと勉強しろよ」
山形「うるせェ」
甲斐「俺ァ 横に居て 赤面したぜェ
   いきどおりだよ 憤り! お前のは行き倒れ」
山形「いちいち そうやってお前はいつも
   揚げ足を取ンだよな やな性格だぜ」
甲斐「アゲヤシじゃねェのか よく考えてみろよ」
山形「ケンカ売ってんのか てめェ」

国際版を再翻訳した故・黒丸氏の文章は
山形「俺ァ こんなに胃痛を感じたことはねえぜ」
甲斐「じゃあ 胃腸薬を飲めば?」
山形「傷ついてるのは胃じゃないの 俺の誇りなの」
甲斐「ばっかだなあ ものの言い方知らないんだから
   お前が言いたいのは“悲痛”だろ」
山形「自分でわかってるからいいの
   意見を粗チンして悪いことないだろ」
甲斐「言うんなら 意見を“開陳”だろ」
山形「ほっといてくれ」

非常に苦労してます。(笑)
故・黒丸氏が洒落にこだわっている所を見ると、
きっと英語でも言葉合わせになっていたんでしょうね。
どんな英文だったか、ちょっと知りたい気もします。
(この部分は英文にあまりこだわらず、
 洒落が成立するように自分で文章を考えたからか
 それ程おかしな文章でもないですね。)

…とまあ、なんだかんだと色々言ってますが、
しっかり2巻を楽しみにしている私です。
(もう出てるけど、まだ見てないの。)





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