斜めうえ行く「オクノ総研 WEBLOG」
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2005年04月11日(月) |
未だにエロを超えられないメジャーコンテンツ |
2005年中にメジャーコンテンツのネット配信がアダルトコンテンツの市場を上回るらしい。
へ? あれれ? 2005年4月の段階では、未だにネット上ではアダルトコンテンツのほうが市場規模が大きいって・・・。
僕は、とっくの昔にメジャーコンテンツがアダルトコンテンツを超えているものだとばかり思っていた。 何年か前、ネット配信におけるアダルト比率は69%、と聞いたことがある。 数字がいかにもアダルトっぽいので、数字だけを覚えている。
VHSが普及したときの事を例にとって、新しいメディアはアダルト(エロ)によって切り開かれる、と言及されることが多い。 メジャーコンテンツがアダルトコンテンツを超えられない理由を「やっぱりエロ強いなあ」の一言で済ませてしまう事が多い。
違う。
僕は、著作権処理の構造に帰因する問題だ、と思う。 ネット配信の場合、エロ市場は性欲によって喚起されたのではない。 著作権処理の構造の問題だ。
アダルトビデオレーベルの方とお話をしたことがあるのだけれど、ネット配信におけるアダルトコンテンツの優位性は著作権だ、と聞いた。
テレビドラマをネットで配信しようとすると、通常の著作権に加えて、俳優さん等の著作隣接権、音楽著作権などが複雑にからむ。 著作権処理がかなり面倒である。 加えて、ネットでコンテンツを配信した時点で、特にストリーミングではなく、ダウンロード配信した場合、そのコンテンツはどのように扱われるかわかったものじゃない。 暗号化してもいずれは破られる。 権利保護のためには、いかにクラッキングをややこしくするか、しかないので、結果的にクラッカーではない一般ユーザーにとっても、ネット配信コンテンツの使い勝手は悪くなっている。 使い勝手が悪いので、ユーザーは逃げる。 ユーザーが逃げるので、ネット配信は儲からない。 コンテンツホルダーは、ネット配信は儲からないうえに、権利が保護されなくなる懸念から、腰が引ける。 ただでさえ著作権処理が難しいうえに、儲からないので、コンテンツは増えない。 コンテンツが増えないので、ユーザーも増えない。
で、そうやって、メジャーコンテンツがネット配信に及び腰になっている間にアダルトコンテンツは、せっせとネット配信マーケットを開拓してきた。 では、なぜアダルトコンテンツはネット配信が可能なのか? それが、著作権である。
メジャーコンテンツの著作権は複雑に絡み合い、権利処理が大変であるのに対し、アダルトコンテンツは、権利処理が容易なのである。 アダルトビデオ会社は、コンテンツの全ての著作権を保有している。 AV女優に対する著作隣接権は認められていない。 AV女優は出演料としてのギャラをもらって、アダルトビデオに出演したら、そこまで。 AV女優には、アダルトビデオの売り上げや配信等によって生じる二次的な収益を受け取る権利は、生じない。 著作隣接権を含めてアダルトビデオ会社が一括で保有している。 アダルトビデオに関しては、アダルトビデオ会社が一切の権利を保有するのである。
アダルトコンテンツをネットで配信する際、権利関係の処理がほとんどない。 アダルトビデオのレーベルが一切の権利を保有しているので、権利関係の利害調整が必要ない。 アダルトビデオ会社にとってのネット配信は、既存のパッケージに対する追加チャネルなので、どんどんとアダルトコンテンツは、ネットで配信される。
一方で、アダルトコンテンツは、違法コピーも蔓延している。 違法コピーのパッケージは堂々と販売されているし、違法配信サイトも多い。 もちろんアダルトビデオ会社にとってはアタマの痛い問題だ。 でも、違法コピーによる損害を被るのは、アダルトビデオ会社だけである。 出演者等の著作隣接権の保有者には被害が及ばない。 権利侵害の範囲が収拾不可能なまでに広がらない。 アダルトビデオ会社だけの被害にとどまる。 違法コピーの責任はコンテンツホルダーである自分たち自身でとどまる。
だが、その違法コピーの蔓延する状況を見て、またまたメジャーコンテンツのコンテンツホルダーは、ネットでのコンテンツ配信を躊躇する。 ネガティブループは拡大する一方。 メジャーコンテンツのネット配信への道は遠い。
■IPネットワークによるビデオ配信サービス http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0408/idf03_12.jpg
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