Kozの日記
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毎年のこと。
夏の終わりと同時に年明けまで、ロングランの忙しい 日々が続く。
今年もそうなるのかどうかわからないけど、そうなっ て欲しい。いやそうなりながらも、どこかで少し開放 されたいというのが、正解かも。
今までいろんな事で突っ走ってきたつもりだ。でも止 まろうとは思わない。戻ろうとも思わない。ただもう 少し速度を落としたい。
同じ距離またはそれ以上の距離を確保しながら、もう 少し速度を落としたい。
こんな弱音すら、人に言う事が出来ない自分の立場。 いつも独り言のように飲み込んでしまう。
でも全ては知らず知らずのうちに、自分でそんな環境 を作っているんだろうね。
思いとは裏腹な現実。それがなくなればイヤなくせに、 「今」を逃避したい気持ちが生まれてくる。
これは休息の時間。これは仕事の時間。と明確なインタ ーバルができればいいのに…。貧乏性なのかな。
目指す所や目的を変えてみる。
それで価値観が変るかも。
英名ロバートが言った。
「レストハウスまで一日で往復する人も珍しいよ。何で こんな無謀なことをするんだ?」
「日本で大掛かりなパーティをプロデュースするんだ。 そのテーマがジャングルなんだ。この目でどうしてもウ ツボカヅラやできればラフレシアを見たい。観光でこん なことしてるんじゃない。」
「ウツボカズラのあるところへ案内して欲しい」
僕が答えた。
「とりあえずレストハウスまで行ってその帰りに教える よ。とりあえず僕についてくればいい。」
入山手続きをする前にガイド役の彼が言った。
マレーシアのボルネオ島にあるコタキナバルのキナバル 山に行った時のこと。
標高3272.7mまでの登山が始まった。
このパーティの依頼主は、まさか本当に僕がジャングル まで行くなんて思っていなかったらしく、予定を話すと 顔が硬直してた。それは「その費用はでないよ…」とい う焦りの面持ち。
「空想のジャングルで誰が納得しますか?少なくとも僕 は納得しません。実費でも行ってきます。あなた方のた めではなく、僕自身の納得とその納得についてお客様の 反応がみたいから。出発は来週です。」
2000年の6月のこと。5日間をジャングル行きに費やした。
クアラルンプールからコタキナバルへ。 ジャングルにはまる3日間篭りっぱなし。
携帯やファックスなどの通信手段はなにもないから、気 になる仕事の事もあきらめがつく。
登山終了後の翌日。朝4時30分から夜12時まで。
空気の流れ、動物や鳥たちの声、木々のざわめき、湿度、 雨、匂い、星のきらめき、高山植物、体で感じる太陽の 温度、鳥の羽ばたき、生まれて初めて見る昆虫、苔から 落ちる水滴。
空想では得る事のできない空気を、存分に感じた。
実際のパーティは個人的には納得の行くものだったが、 反面僕のこだわりに批判もあった。
それはそれでいい。
客入れのBGMはキナバル山で録音してきたジャングルの音 を使った。CDで販売されている電子音のジャングルSEでは ない。お客様には分からなかっただろうけど、経験や体験 は臨場感に繋がることを改めて知る。
それから2年。
「今」を逃避したいと思う時、時々彼の言葉が蘇る。
「何でこんな無謀な事をするんだ?」
彼はそう言いながらも、最後まで僕のペースを把握して時 間の管理を完璧なまでにしてくれた。
往路4時間。
復路2時間。
往復6時間。
握手の時に彼の言った「Good Luck」。
無謀な僕に付き合ってくれた彼の輝きのある目は、人間と しての余裕にさえ思えた。
黒川紀章氏が関係するクアラルンプールの国際空港は、マ レーシアの表玄関で、立派な素晴らしい建物だ。
全てにおいてプリミティヴな世界が実はその奥に存在する。
理想と現実。それが共有して初めて「自分」になるのかも しれない。
またジャングルの空気に包まれたい…。
今の僕の思いははきっと【理想 僕 現実】の図式の 様に狭間を行ったり来たりしているんだろう。
とりあえずこれからは現実に向かい、理想のための現実で あることを理解しよう。
もうこんな時間だ!
これが現実?
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