欲しい幸せは。とても小さいもので。 それはたぶん。誰でも同じなんだと思う。 劇的な日々の変化や。革命的な大事件。 そんな幸せよりも。もっともっと愛しいものがある。
ある日突然1億円が当たるとか。 街角でスカウトされてデビューするとか。 そんな宝くじみたいなこと。別になくていい。 だって一番身近にある日常こそが。何よりもの幸せやから。
しばらく会えなかったそうるに会って。そう思った。 あのむかつく笑顔を前にして。終わらない幸せを感じて。 あたしはまたしてもずっと涙目だったような気がする(笑)。
すべてはどうでもいいような。見逃しそうな小さなこと。 でも確かにそこに。そうるがいてくれるからこそ生まれること。 そんなひとつひとつが。めっちゃキラキラしてたまらんかった。 しばらく会えてなくて。あたしの神経は研ぎ澄まされてたせいやろうか。
切符を買うとき。まとめて2枚買ってくれた。 カフェでお茶して。紙コップを2つ重ねて捨ててくれた。 道を歩くとき。自然とあたしの右側に立ってた。
信号待ちでぼーっとしてたら。歩き始めに背中をグッと押された。 電車で横に座ったら。あたしの髪を指に絡めて遊ばれた。 飲んで酔ってふらついたら。グイッて腕をつかまれた。
全部あたしとそうるの日常。2人の空気。2人の距離感。 今までだって当たり前のようにそばにあったもの。 特に何も感じずにそばに置いてきたもの。それやのに。 急にかけがえないものに思えて。愛しくてたまらんくなった。
少しずつ。脳内に溢れ出す幸せな思考。 壊れていく自分に気づく。そして笑顔全開になる。
ねぇ。ねぇええよね。始めちゃうよ。 そうるの反応を予想して。ひとりでにんまり。 裏切られない反応を確信して。さらににんまり。
「なぁ。」 「なにーな。」 「なんか分からんけどな。言っていい?」 「なんやねん。きもいであんた。」
「あたし今けっこう幸せかもしれん(笑)。」
言ってやった。さてどう来るかな。 ちらっと右を見たら。ほらほら予想通り。 ありえへんほどの間抜け面で。あたしを見てるそうる。 呆れてる。バカにしてる。でもでも。 こらえきれない口元が緩んでるのをあたしは見逃さない。
あぁこれや。この笑顔や。 最高にむかつくこのにんまりや。 あたしをこんな気持ちにさせる笑顔なんて。 たぶんこの世にこれひとつしかない。 久しぶりやん。おかえり。待ってたよ(笑)。
わずか1秒ほどのにんまりの後。そうるは言う。
「・・・うわ。うわーきしょー。」 「なんやねん。きしょいとか言うなあほ。」 「あほはあんたや。頭おかしいんちゃうか。」 「ええやん。たまにはこーゆうことも言っとかんと。」
「あかん。あんたがそんなん言うから全身かゆくなってきた。」 「ええやん。今日寒いからかゆいぐらいでちょうどええって。」 「なんやねんそれ。意味分からん。あんたほんまあほや。」 「もーあほあほ連呼すんな。あほに惚れたあんたもあほやろ。」
勢い任せに「惚れた」って言ってやったら。 今度は2秒ぐらい空けて。目をまるくする。
「ほんまや。じゃあもしかしてうちのほうがあほ?」
一緒に笑った。ゲラゲラ笑った。 くだらない会話。20代にあるまじき幼い会話。 なんて内容ないことしゃべってるんやろね。 でも。あたしはやっぱりやめられへん。 このしょーもないやり取りこそ。あたしの原動力。
笑いながら抱き締められた。 じゃれあうみたいにキスされた。
ピッタリ重なる唇も。 収まるところに収まったような体も。 全部全部。嬉しくて泣いてた。 そうるの温度と感触に。満たされて泣いてた。
ねぇそうる。あんたと久々に会って思った。 世の中には。1人じゃできんことがいっぱいある。 ちっちゃなこと。2人でいるからこそ生まれること。 それをあたしはいっぱいいっぱい。見逃してた気がする。
しばらく会えなくて。あたしはそーゆうのを拾う力が強くなった。 あんたがそばにいただけで。こんなにもたくさん幸せに気づけた。
1人じゃない幸せ。2人でいる幸せ。あぁすごいね。 あたしが変わるだけで。こんなにすべてが変わるんや。 見逃してたいろんなものも。見えてくるんや。
こうやって気づけるようになったってことは。 離れてた時間もきっと。無駄じゃなかったんやろうと思う。 あたしもあんたも。たぶんちょっと賢くなれた。 だから今度は。もう間違ったりはせーへんよね。
ねぇそうる。あたし改めて気づいてもた。 今回の満たされ具合で。確信してもた。 あんたがいてこそ。あたしは生きていけるんや。 おおげさでものろけでもなく。たぶんもうほんまにそうなんや。
ありがとそうる。そばにいてくれてありがと。 ↑何を今さらって気持ち半分。言わせてやったぞって気持ち半分(笑)。 |