この休みで。あたしは久しぶりにそうると過ごせた。 特別に何かをしたわけじゃないけど。ほんまに幸せやった。
名前を呼ぶと。「ん?」って答えてくれる。 肩を叩くと。「何?」って感じで振り返ってくる。 当たり前のこと。そんなのは当たり前のことなんやけど。 でも。そうやって名前を呼べたり。肩を叩けたりする存在が。 すぐそばにおることが。言いようのない安心感を与えてくれた。
ただそうるの顔を見られることが。そうるの声を聞けることが。 そしてそうるに触れられることが。あたしをどこまでも満たすってこと。 もう分かりきってることやけど。あたしはまた実感した。
金曜の昼過ぎに。そうるはあたしの家にバイクでやってきた。 免停をくらったそうるやけど。実際乗ったらあかん期間は来年からで。 ほんまに久しぶりに。あたしを乗せて高速を飛ばしてくれた。
事故以来。ちょこちょこあたしを乗せてくれることはあったけど。 ちゃんと長い距離を走ってくれたのは。たぶん初めてやった。 なんとなくやけど。そうるはドキドキしてたんやと思う。 でも。そーゆうのをあたしに伝染させんように。ほんまに気遣ってくれた。 「怖くない?」とか。「もうちょっと飛ばしても大丈夫?」とか。 ありえへんぐらいに優しくて。こっちが照れてまうぐらいやった。
なんか。あたしってほんまにわがままやなって思う。 冷たくされると。もうちょっと優しくされたいなぁと思うし。 優しくされると。慣れてないせいで困ってまうし。 そうるにすれば。じゃあどうしろっちゅーねんって話(苦笑)。
でも。どんなふうにされたとしても。あたしは幸せ。 そのときそのときで。むかついたり悲しかったりしても。 たぶんそうると関わっていられるだけで。あたしの根底は幸せ。
走ったのはいつものコースで。休憩も入れて1時間ぐらいやった。 あたしに馴染んだ感覚は。ひとつひとつ起こされていった。 体に伝わるエンジンの振動。抱き締める背中の体温。 両サイドを過ぎていく冷たい風。見覚えのある夕暮れの景色。 全部あたしには。愛しくてたまらんものばっかりやった。 忘れかけてた大切なものを。取り戻せたような気がした。
家に戻ったのは7時過ぎやったかな。 走れただけで胸いっぱいなあたしやったけど。 おなかはしっかりすいてて。ちょっと鳴ってた(笑)。
「えーっと。何が食べたい?」 「何でもええで。むしろ食うより飲みたい(笑)。」 「ほんじゃー昨日の残り物も食べてもらうで。」 「おー残り物大歓迎。」
そんなわけで。メニューはシチューとポテトサラダ。 あとはチキンを適当に味つけして焼いたもの。(←なんやそれ。) レンジでチンするのと。フライパンで焼くだけで。ほんまに簡単やった。
そうるは。あたしの作るものは何でも食べてくれるけど。 あっためただけの残り物でも。ほんまにいい食べっぷりやった。 空っぽになったお皿と。満足そうなそうるの顔。 両方を見比べて。あたしはやっぱり幸せな気持ちになった。
お酒を一緒に飲むのは。ほんまに久しぶりで。 もうその雰囲気だけで。あたしは酔いそうやった。 やばいなぁと思った。これは絶対におかしくなるとも思った。 でも。おかしくなってそうるに甘えたいとも思った。
そうるが飲むのは。いつも通りで焼酎のお湯割り。 あたしは。最近気に入ってるライチのお酒。 けっこうハイペースで飲んで。いい気持ちになった。 ほどよく回ってくる酔いが。あたしをふわふわさせた。
そうるに絡みついてみた。キスをねだってみた。 頬やら首筋やらに唇を這わせて。そうるの匂いを嗅いだ。 たまにはあたしから。誘うのもありかなと思った。 そしたらそうるは。最高にいやらしく笑って。 「・・・挑発してんの?」って言って。ちょっと目を細めた。
ゾクゾクした。鳥肌が立った。 色気を発したそうるの瞳は。あたしを一発で狂わせる。 首の横に手をやって。親指であたしの顎を上げる。 いつものそうるのやり方やのに。唇が重なった瞬間。 クラクラした。気絶しそうやった。
久しぶりに触れて。触れられて。泣きそうになった。 肌と肌が重なって。互いのぬくもりを伝え合う。 その行為が。世界で1番尊いものに思えた。
そうるの表情。そうるの吐息。そうるの体温。 目から。耳から。肌から。感じ取れるそうるの存在。 そのすべてで。あたしはやばいくらい満たされた。
あたしに与えられる快楽は。もちろんあたしを満たす。 唇。舌。指。あたしをなぞるものは全部。あたしを潤す。 でも。なんかうまく言えんけど。それだけじゃなくて。 そうるを見て。そうるを聞いて。そうるに触れて。感じた。 あたしとそうなってるのがそうるやから。感じた。
ちょっと夢中で。浸ってるような瞳。 しっとり濡れて。艶っぽい息遣い。 熱く火照る体と。冷たく意地悪な指先。 与えられる刺激より。そうるが発する刺激の方が。 あたしをずっとずっと幸せにするような気がした。 同じ幸せを感じてる事実に。泣きたくなった。
ちょっとだけ涙が零れて。そうるを驚かせた。 「・・・なんで泣くねん。」って言われて。 「・・・好きやから。」って答えたら。 そうるは。すごい切ない笑みを浮かべた。 嬉しそうにも悲しそうにも見えた。
あんまりキレイで。胸が苦しくなって。しがみついた。 自分の中から溢れ出す「好き」で。溺れそうやった。
ねぇそうる。久しぶりにいろんなことができて。 あたしはね。ほんまにほんまに幸せやった。 これでまたしばらく。生きていけるとさえ思えた。
あんたの後ろに乗って走ることも。 あんたの隣で飲んで酔うことも。 あんたの腕の中で眠ることも。 全部全部。あたしの専売特許。 独占欲全開のあたしは。そう思ってた。
覚えてた。でもしばらく忘れてた。 愛しすぎた。だから恋しかった。 欲しくて欲しくてたまらんかった。 そして。久しぶりに手に入れることができた。
失ってなかった。まだそばにあった。 嬉しすぎた。だから泣けてきた。 大切すぎて。絶対に手放せんと思って。 痛くて痛くて。苦しくて苦しくて。泣けてきた。
ねぇそうる。愛しいって思う感情は。なんでこんなに痛いんやろうね。 あんたを愛して。あたしは痛いことばっかりみたい。 大好きやと思うときも。大キライやと思うときも。 あたしの胸は。カタチは違えど。いつだって痛む。
締め付けられた胸は。どうしようもなくなって。 その中にある無限の愛を。溢れ出させる。 そしてその愛に溺れて。あたしは死にそうになる。 いつだってそう。好きでも嫌いでも。苦しくてたまらん。
ねぇそうる。あんたにも。こんな思いを抱える夜があるんやろうか。
↑その真逆やっちゅーの。だって秋なんやもん(涙)。 |