今日は。ようやく望んだものが与えられた。 そうるのバイクの後ろに。やっと乗せてもらえた。
欲しがってたおもちゃを与えられた子どもみたいに。 あたしは。もうありえへんほどの浮かれようで。 そうるにも。呆れたように笑われてもた。 「なんでうちより嬉しそうやねん。」って言われてもた。
客観的に見れば。たかがバイクに乗るだけのことかもしれん。 バイク自体にはこれまでも乗ってるわけやし。何が変わるねんって感じかもしれん。 極端に言うなら。黒が赤に変わっただけやんってことかもしれん(苦笑)。 (いやもちろん形もかなり変わってるんやけどさ。)
でも。楽しみやった気持ちはどうしようもない。 嘘偽りない。あたしの素直な感情なんやもん。 新しいエンジン音とか。振動とか。乗り心地とか。 そーゆうのを想像するだけで。あたしはウキウキしてたんやもん。 新しい相棒を手に入れて。浮かれてるあんたの幸せな鼓動を。 背中を抱き締めることで。早く感じたいなぁって思ってたんやもん。
それを笑いたいってのなら。思う存分笑えばええやん。 あぁ笑え。笑え笑え。あほみたいにそうやって笑ってなさい。 あたしに愛されてる幸せを。笑うことで噛み締めてなさい(苦笑)。
バイクに乗せてもらえたのは。ナイターの前やった。 いつもより早く研究課題を切り上げたそうるからメールが入った。 「ナイター前やけど大学来れる?バイク乗せたるよ。」って。
あたしは。家で実習課題を片付けてるところで。 そうるからのメールを受け取って。にやっと笑ってもた。 ようやくかいな。もう。遅いっちゅーねん。待ちくたびれたっちゅーねん。 そう思ったけど。とりあえずそんな感情は隠して。 「おーけー。ほなナイターの用意して行くわ。」って送り返した。
そんなわけで。大学に着いたのが4時半ぐらいやったかな。 そうるは。あたしの原チャと荷物を自分の研究室に置かせてくれて。 ようやく。あたしを新しいバイクに乗せてくれた。
「どうぞ。」って。ちょっとだけ改まってメットを貸してくれた。 そうるのバイクにいつも括り付けてある。2つのオフホワイトのメット。 そこには。あたしが貼り付けた大きな☆のシールが3つずつ。 黄、赤、黄の順番がそうるのメット。赤、黄、赤の順番があたしのメット。 赤い☆シールが。新しいバイクの色といい感じに合ってて。あたしはさらににんまり。
新しいバイクは。前のよりけっこう大きくて。乗るのにちょっと手こずった。 思いっきり足を上げても。すんなりは跨ぐことができんくて。 「座るとこ高いー。・・・あたしの足が短いんかな。」ってへこんでたら。 「いや。うちも余裕でつま先立ちやから大丈夫。」って。そうるは笑ってた。
新しいバイクは。やっぱり今までのとは違った。 なんてゆーか。体に伝わってくる感覚が違ってた。 エンジンの振動は。これまでより重たい感じで痺れたし。 エンジン音も。高速回転になって切り替わる瞬間が。最高にいい音やった。
でもあたしが1番嬉しかったのは。そうるとの密着度が高まったことやった。
今までの黒バイクは。そうるの姿勢がかなり前傾ぎみで。 (あたしはこれを「飛ばし屋体勢」って言って笑ってたけど。) あたしもけっこう前に体を傾けんと。そうるとくっつけんかったんやけど。 新しい赤バイクに乗るそうるは。そこまで飛ばし屋体勢じゃなかったから。 普通にしてても体をくっつけられて。なんかいい感じやった。
「なんか前のバイクより前傾じゃないな。」 「そうやで。ハンドルの高さが全然違うねん。ほら見てみ。」 「あーほんまや。どうなん?乗りやすい?」 「まぁな。腰にかかる負担が全然違うからな(笑)。」 「でもバイクでかくなったからけっこう重いんちゃうん?」 「それはある。かなり重い。だからあんた痩せて(笑)。」 「・・・まじでか。よっしゃ任せとき。夏バテしてやる(笑)。」 「・・・やめとけって。ちゃんと乗せたるから(苦笑)。」
そんなやり取りひとつで。あたしはやっぱり満たされる。 「ちゃんと乗せたるから。」って言われたのが嬉しくて。 ほら。やっぱりあたしは大事にしてもらってるんやんって。 構ってもらえんときがあっても。ちゃんと愛されてるやんって。 あの日イライラしたあたしに言い聞かせる。
幸せな全身に感じるのは。新しいバイクの振動。そうるの体温。そして初夏の風。
ねぇそうる。夏が始まるね。今年もまた。あんたと過ごす夏が始まるね。 今年はどんな夏になるやろう。思い出いっぱい出来るやろうか。 満たされたり。むかついたり。幸せやったり。悲しかったり。 浮き沈みしつつ。あたしはあんたとやっていくんやろうなぁ。
そして今年の夏には。このバイクがあんたとあたしの相棒。 ガンガンに太陽を浴びながら。このバイクとも仲良くせんとね。 日焼けが怖いなんて。愛しいバイクを前にして言えるやろうか。 いっぱい日焼け止め塗って。美白化粧水をたっぷり使って。ビタミンいっぱいとって。 がんばれるとこでがんばればいい。あたしにはあんたとバイクに乗る方が大事やもん。
・・・あぁもう。全身がこそばゆい。痒くて痒くてたまらんくなる。 自分では手の届かん胸の奥に。どうしようもない痛みが生まれる。 あんなにむかついてたあんたに。こんなに満たされてる。 あたしの心は。いつだってあんたに振り回されてる。 あぁ。なんでなんやろう。いつだってあたしはこうやもんなぁ。
何度も何度も自分に問いかける。 答えが見つからんことは分かってるのに。それでも問いかけてる。 そうる。あんたなら意外と答えを知ってるんかもしれんよね。 もしもそうなら。どうかあたしに教えてちょーだい。
ねぇそうる。なんであたしは。こんなにもあんたが好きなんやろう。 ↑あたしも行きたいなぁ。まぁしょーがないけどさ。 |