今日は新入生のサークルへの勧誘をやった。 主に後輩がやってて。あたしたちの学年は軽く手伝うだけやったんやけど。 大学に入りたての新入生は。ほんまに初々しくてかわいかった。 これから先の大学生活にいっぱい期待してて。キラキラしてて。 あたしにもあんな頃があったんよなーとか思って。ちょっと笑えた。
そうるは勧誘をやりながら。まひろと一緒にバイク関係のサークルを見に行って。 しっかりビラをもらってきてたから。なんかおかしかった。 「話聞いてきたけどマニアックすぎて怖かった。でも入るかも。」 そう言って笑う顔は。悔しいけどやっぱりあたしの心を締め付けた。
前からそうるはツーリングに行きたい行きたいって言ってて。 まひろと行けばーって言うと。それは無理ってことみたいやった。 「うちら2人とも初心者やから、途中でバイクに何かあっても対応できんし。」って。 だから慣れてる人たちと一緒に何回か行って練習(?)したいんやって。 そしていずれは。まひろと一緒にいろんなとこに行きたいーって言ってた。 「手始めには琵琶湖一周とかやろっかなー。」なんて笑ってるそうるは。 今さらやけど。とことんバイクバカやなーって感じやった。
最近どうにもそうるに対していろいろ考えすぎで。 うまく笑えんくなってたあたしなんやけど。 そんなあたしの内面のドロドロなんか。そうるはちぃっとも分かってへんかった。 展示してあるバイクを見つけては。嬉しそうに指差して。 「うちのバイクの色違いやで。分かる?」って聞いてきたり。 まひろと2人で勧誘に出かけて戻ってきたときに。 「うちらみたいな男っぽいのが組んでたらあかんのちゃうか?」って笑ってたり。 (いかつくて強そうすぎて新入生に敬遠されるって意味でね(苦笑)) なんやかんやで。機嫌よさそうにケラケラ笑ってた。
疲れてたのがちょっとマシになってきたんかな。 そう思って安心するのと同時に。もう呆れて苦笑いって感じやった。 あんたはええね。何も分かってへんくせに。こんなにも気にかけられてて幸せやね。 軽くイヤミも込めてそう思えたけど。不思議とイヤな気分じゃなかった。 あたしはやっぱり。そうるの楽しそうな顔にはとことん弱いみたい。
昼休みに。そうるとまひろが先に休憩をとってごはんを食べてた。 そこに少し遅れてあたしとはつねが行ったんやけど。2人はおもしろい話をしてた。 サークルで初めてあたしに会ったときのことを覚えてるかーって話。
まひろとあたしが初めて会ったのはナイターやった。 そして。そうるとあたしが初めて会ったのは昼練やった。 あたしはもちろんどっちも覚えてるんやけど。2人はどうかなーと思って。 はつねと別の話をしながら。こっそり2人の話に聞き耳立ててた。 ぶっちゃけると。まひろには悪いけどそうるの反応が気になってた。
そしたらそうるは。笑いながら話してた。あたしと初めて出会った昼練のこと。
あたしより先にサークルに入ってたそうるは。昼練に普通に行ってて。 そこへ初めて顔を出したあたしが。知り合った新入生と一緒に好きな歌手の話とかをしてて。 「TMRが好きなんよー。」って言ったら。「あー○○○(←そうる)も好きやんなー。」って言われて。 「え?誰?どのコ?」って興味深々で聞いたら。そのコが近くにおったそうるを指差して。 「あのコやでー。」って教えてくれて。それであたしが声をかけたんやけどね。
そうるは。あたしにいきなり話しかけられたのをすごい覚えてた。 「TMR好きなん?ファンなん?」って。瞳をキラキラさせて聞いてきたコがおって(笑)。 「別にファンじゃないで。そこまで好きじゃないし。」って言ったら。 「なーんやー・・・。」ってかなりがっかりしてて。見てておもろかったって。 懐かしいよなーとか言いながらまひろに話してた。
あぁ・・・そうる・・・まだ覚えてくれてたんや・・・(感涙)。 はつねとの話はそっちのけで。あたしは胸いっぱいやった。
なんかそーゆう思い出を大事にしてるのはあたしだけやと思ってた。 そうるはそんなのには興味なくて。とゆーか別にどうでもよくて。 ひとつひとつを簡単に忘れてしまいそうな。そんな気もしてた。
でもそうじゃなかった。そうるも覚えてくれてた。 初めて会ったあたしのこと。そのときに交わした言葉のこと。 細かいところまでちゃんと覚えてくれてた。 それがあたしには。どうしようもないくらいに嬉しいことやった。
そしてあたしはまた思い出した。そうると前に話したこと。 そうるの方が。実はいろんなことを覚えてるって気づいたときのこと。
出会った頃の話。実は前にそうるとしたことがあったんよね。 そう、前述の出会いの直後に。そうるはあたしのとこに来て。 「うちはTMRに関してはモノマネ専門やねん。」って言ったんよね。 「えー何できるん?やってやってー☆」ってあたしが頼んだら。 ある曲を踊りつきで歌ってくれたんよね。(←当時そうるも若かった(苦笑)) そしてあたしは狂喜乱舞(笑)。あっという間にそうるを好きになった。 ・・・無限の愛の始まりは。こんな笑えることやったんよね(笑)。
そうるはあたしを試すみたいに。ちょっといたずらっぽく聞いてきた。 「あのときうちがどんな格好してたか覚えてる?うちが何歌ったか覚えてる?」って。 あたしは絶対に忘れてへん自信があったのに。悲しいことに忘れてた。 格好はぼんやり覚えてたんやけど。歌ってもらって感動した曲のことはさっぱり忘れてた。
なんてこったい。なんで忘れてるねん。あんなに喜んだのに。ありえへん。 そう思っていっぱいいっぱい考えたんやけど。さっぱり思い出せんくて。 「えーっとねぇ・・・格好は白い半袖ブラウスに黒スカート。歌は・・・忘れた。」って言ったら。 そうるは。ざまーみろと言いたそうな顔で。にやにや笑って言った。
「黒スカートじゃなくてデニスカ。んで歌は△△△。(←マニアック(笑))」 「なーんや。あんたの記憶もけっこう適当やねんな。」
あたしは。覚えてなかった自分へのきぃーって気持ちと。 そんなにも細かく覚えてくれてたそうるへのうぉーって気持ちとで。 いっぱいいっぱいになってもて。ギャーギャー騒いでた。 そんなあたしをからかうように。そうるはまた頭をポンポンって叩いたりしたから。 もうそれこそどうしたらええか分からんくなって。さらに大騒ぎした。
ねぇそうる。思い出した。あたし思い出したよ。 やっぱりあんたに大事にされてるんやってこと。 今日のことにしても。前に話したときのことにしても。 あんたが人との出会いを。そんなにも細かく覚えてるとかありえへん。 どうでもいい誰かのことを。そんなにも大事にとっておいたりとかありえへん。 もう今さらやけど。ちゃんと思われてるんやなってことに気づけた感じ。
「なんやねん。まだ分かってへんのかい。」あんたは言うかもしれんね。 でもね。いろいろ考えてるとそーゆうのも見えんくなったりするねん。 あんたとあたしは違うから。受け止め方とか全然違うから。 あんたの真意と違うところで。あたしは傷ついたり苦しんだりしてまうねん。 求めたり望んだりして。それが与えられんことで。がっかりもしてまうねん。
どうにもあたしばっかりあんたに溺れてるね。 どこまでも好きになりすぎて。苦しいほどに思いが溢れて。 自分でコントロールできる範囲を越えて。いつだって勝手に暴走してる。
でもあたしのそんな自分ひとりのあがきの向こうで。 そうる。あんたはずっと。あたしへの気持ちを穏やかに保ってくれてる。 あたしがあっぷあっぷしてるのはあんたのせいやけど。 そんなあたしをまるごと癒してくれるのは結局あんたなんよね。
変なの。なんでこんなに全てが矛盾するんやろうね。 あんたのせいで苦しんで。あんたのおかげで救われる。 人を愛するのって。やっぱりとことん複雑なことなんやね。
ねぇそうる。もうちょっとだけ。もうちょっとだけでええから。 この手を握って。そして引っ張ってくれへんかな。 そしたらこのドロドロからも抜け出せる気がするから。 |