あたし。今日ちょっと機嫌が悪かった。 なぜなら。会えると思ってたそうるに会えんかったから。 現れると疑ってなかった昼練に。来なかったから。
だって来るって言ってたし。昼練がんばるって言ってたし。 普通に会えると思ってたのに。いつまで待っても現れへんし。 なんでやねーん。来るって言ってたやんかー。きぃー。あほぅー(涙)。
まぁでも。きっとなんか事情があったんやろうな。 そうるが昼練に来ないとき。よくある理由は。 学部の女友達が1人になってまうからっていうもの。 そうるの学部はただでさえ女が少ないから。まぁ仕方ない。 1人残されるその友達をちゃんと思いやれるそうるも。かっちょいいし。
まぁそんな感じで。とりあえず納得して。 夕方連絡をとろうと思ってメールしたら。・・・返事なし。 どうやらまたバイトしてるみたい。うぬー。 あたしはまた。ため息ひとつ。
バイトするのが悪いなんて言ってへん。 そのことで前にもめたし。理解しようとしてるつもり。 でもさー。放置プレイじゃないにしても(苦笑)。 あんまりほったらかされると寂しいもんで。 ちょっとくらいかまってくれーってことになるやんねぇ。
しょーがないので。あたしはふてくされて。部屋の掃除。 あたしのクセかもしれんけど。へこんでるときはよく部屋の掃除をしてまう。 他に。洗濯したり。お風呂を洗ってみたり。なべを磨いてみたり。 なんやかんやと家のことをやって時間を過ごす。 そういうことをやってる間は。少なくとも集中して。 余計なこととかを考えずにすむから。
そういや最近寒くなってきたなぁと思って。 クローゼットの中を整理してみる。 そしたら。お気に入りの白いコートが出てきた。 あぁ。またこのコートを着られる季節が来たんやなぁ。 あたしは嬉しくなって。コートにそっと触れる。
このコートは。去年買ったもの。 それまでずっと着てたグレーのロングコートに飽きてきて。 新しいのがひとつ欲しいなぁと思ってて。思い切って買ったコート。 そう。思い切るきっかけになったのは。そうるの言葉やった。
一緒に買い物に行って。いくつか候補のコートを見つけた。 確かそれは。黒いコート。白いコート。ベージュのコート。 3つまで絞って。そこからベージュを捨てて。 白か黒かで最後まで迷ってたあたしに。そうるは言った。 「白にしーや。1番似合ってるで。」って。
そうるに。そんなことを言われたのは初めてやった。 「日焼けした肌に白はキツイよなー(笑)。」なんて。 いつも言い合ってたのに。いきなり似合うとか言うなんて。 なんかめちゃめちゃ意外で。あたしは言い返した。 「日焼け肌には白はあかんのやろー。」って。 そしたら。そうるは笑って。決め手になった言葉を言った。
「でもうちは黒で。あんたは白って感じやん。なんとなく。」
そうるが普段着てるコートは黒で。あたしの大のお気に入りやった。 その日も。そうるは確か黒いコートを着てた。(ちなみにあたしは上記のグレー。) あたしは。無意識のうちに。そうるの着てる黒に憧れたんかもしれん。 そうるに似合う色が。あたしに似合うとは限らんのに。 あんまりそうるに似合うもんやから。近づきたいって憧れたんかもしれん。
でもそうるは。そんなあたしに言ってくれた。 白でええやんって。白が似合うんやでって。 それは。なんとなくやけど。うちら2人は同じじゃなくてええんやでって。 違っててええんやでって。そういう言葉みたいに思えた。
ねぇそうる。今にして思えば。これこそ自意識過剰って感じもするけど。 あたしにはどうしてもそう思えたんやからしょーがない。 あたしがあんたを愛しすぎて。あんたに憧れまくって。 あんたに近づこうとしてることを。あんたは察してたような気がするんよね。 そうやって。自分ってものをあんまり持とうとせんかったあたしに。 あんたはあんたでええしーって。うちと同じじゃなくてええしーって。 そう伝えようとしてくれてたんやと思うねん。
コートの色ひとつ決めるにしても。あたしはあんたの優しさを感じた。 うん。今でも忘れてへん。ちゃんと覚えてる。
ねぇそうる。そうやってあんたの優しさを感じながら手に入れたコート。 今年もいっぱい着て。あんたと一緒にいたい。 あんたの黒いコートの隣で。白いコートのすそを揺らしていたい。
あんたの黒いコートはきっと。あたしの白を引き立ててくれる。 あたしの白いコートも。あんたの黒を引き立てるんやろうね。 お互いの存在が。お互いを高める。 なーんか。いいね。そういうの。
そうる。あんたとあたしも。ずっとそんなふうでありたいね。
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