あんなに昨日張り切ってたのに。今日は雨。 目覚めて。カーテン開けたときのあのショック具合。 なんか明日も雨っぽいし。うーむ。困った・・・。
でも試合前日に。何もしないのは落ち着かないので。 あたしたちは大学に集まってミーティングすることになった。 試合の作戦とか。スタメンの発表とか。そーゆうことのために。
あたしはここで何度も言ってきたけど。最近ずっとスタメンから外されてる。 そういう苦しみをキャプテンのそうるにぶつけて。困らせたこともあった。 単純にスタメンになりたい気持ちと。そうるに認められたい気持ち。 どっちが強いかと聞かれたら。はっきりとは言い切れなかった。 とにかく辛い気持ちを分かってほしくて。受け止めてほしくて。 そうるの前で泣いたこともあった。・・・あたしはわがままやった。
そうるは。あたしの気持ちをちゃんと聞いてくれて。 「見守ってるから」って言ってくれた。 その言葉が何より嬉しかった。幸せやった。 あたしの気持ちはそうるに伝わっていると。信じるって決めた。 だからそれ以来。そうるとはその話はしてない。
チームには大勢の選手がいる。 もちろんスタメンになれないのはあたしだけじゃない。 そういう友達の1人が。ミーティングの場で。涙を零してた。
そうるは。彼女の涙を見て。明らかに困ってた。 みんながいる場所で。泣き出すほどにまで思いつめた彼女に対して。 どう接したらいいのか分からないみたいやった。 でも彼女の話をうなずきながら聞いていた。 そうるの目は。いたわり深くて。思いやりに満ちていた。
あたしは。泣いたその彼女に嫉妬した。
キャプテンとしてのそうるの立場は分かってるつもり。 全員の気持ちを平等に受け止めたい。そう思うのは当然で。 そういう平等なそうるを。あたしはかっちょいいと思ってるし。 あたしだけを特別扱いしないそうるを。さすがやと思ってる。
頭では分かっていても。感情はついていかないことはよくあること。 あたしは。結局はただのわがままなヤツなんかもしれん。 そうるの優しさを。あたしだけに向けてほしいんかもしれん。
自分だって。そうるに計り知れんほど優しくしてもらってるくせに。 その優しさが誰かに向けられると。それはあたしに与えられるものよりも。 ずっとずっと多くて。ずっとずっと重みのあるものに思えたりする。 優しさに量とか重さなんてないはずやのに。 ひとつひとつが比べられないものであるはずやのに。
なんでこんなに心が狭いんやろう。 なんでこんなに独占欲が強いんやろう。 愛されてるのはあたし。彼女は関係ないはず。 それやのに。どうしてこんなにも不安になるんやろう。
あたしは。そんなことをドロドロと考えてて。 ミーティングの間。ほとんど発言しなかった。
ミーティングが終わったのはお昼過ぎ。 みんなで食堂でお昼を食べて。じゃあねーって別れる。 そうるは。明日は試合なことやし。すぐに帰るかと思いきや。 「ちょっとデートせーへん?」とか言ってきた。 「へ?」予想もしてなかった言葉に。あたしは間の抜けた返事をする。 「そんなぶっちょー面で試合とか。あかんでー。」 そう言って。そうるはあたしにメットを投げてよこす。
・・・あぁ。ほんまに。敵わんなぁ。そうるには。 あたしのちっちゃなジェラシー見抜いてる。 前日やのに。あたしのために時間とってくれるんや。 ひゃー。申し訳ないなぁ。でもめちゃめちゃ嬉しい。 あたしはバイクの後ろにまたがって。そうるの背中を抱き締めた。
でも実際そうるは。あたしのためだけに時間をとってくれたわけじゃなかった。 そのことには。後から気づくことになる。
駅前のスタバ。あたしとそうるがよく行く場所で。 そうるはバイクを停めて。あたしを店へと先に入れる。 もう寒くなってきたから。お気に入りのフラペチーノはやめて。 あたしはカフェモカ。そうるはエスプレッソ。 それからチョコクッキーを1枚ずつ注文する。 いつも座る奥のソファの席が空いてるのを見つけて。 どちらから言うでもなく。自然とその席に向かう。
「おいしー。やっぱ甘いの最高☆」あたしは笑う。 「えー。甘すぎ。うちには無理。」そうるはちょっと飲んで言う。 「エスプレッソとかの方が無理やわ。苦いし。」あたしは言う。 「何を言うか。これがおいしいんやん。」そうるは笑う。
話は自然とミーティングのことになる。 「あのコに泣かれて。正直どうしようかと思った。」って。 そうるはあたしに言う。あたしはちょっと困る。 以前そうるの前で泣いたことのあるあたしとしては。 ちょっとバツが悪くなって。カフェモカをコクコク飲む。 そうるはそんなあたしをやっぱり見抜いたのか。ちょっと笑う。
「でもなぁ。やっぱり勝ってこそやと思うねん。」 「負けてもたら。心の底からは笑うことは出来んやん。」 「だからさ。全員の言い分を聞きたいけど。そうはいかんねん。」 そう言いながら。そうるはマグカップの口を指でなぞる。 あたしはその指を見ながら。うなずいて聞く。
「でもなぁ。そうやってオーダーとかを決めた手前。」 「勝てんかったらほんまに意味ないことになるやん。」 「そう思うと。なんかやっぱり責任とかも感じるやん。」 そう言いながら。そうるはチョコクッキーをパキパキ折る。 あたしはその手を見ながら。やっぱりうなずくことしかできんかった。
そうるの気持ちは痛いくらいに分かるけど。 あたしにはどうすることも出来んくて。 だってあたしはキャプテンじゃない。あたしはそうるじゃない。 歯痒いけど。どうしようもなくて。やるせなかった。
それにしても。そうるは今日はちょっとおしゃべりや。 いつもなら。そんなことを言ったりせんのに。 あたしとそうる。寄りかかるのも頼るのも。 いつだってあたしの方が多かったのに。
あたしがカフェモカを飲み干しても。 そうるのエスプレッソはほとんど減ってなかった。 あたしがチョコクッキーを食べ尽くしても。 そうるのチョコクッキーは半分以上残ってた。
あたしはようやく気づく。 そっか。やっぱりそうるは。ちょっと不安になってるんや。 おしゃべりになってるのも。不安の表れなんや。 そう思ったら。あたしはたまらんくなった。
ねぇそうる。あんたのちょっと弱った姿に。 あたしはどうしようもなく胸が熱くなってたんよ。 守られるばっかりのあたしやけど。守ってあげたい。 支えられるばっかりのあたしやけど。支えてあげたい。 なんかそう思ったら。また泣きそうになってたんよ。
あたしがこうやって話を聞いてあげることで。 あんたをちょっとは救うことが出来るやろうか。 あたしがこうやってそばにいることで。 あんたはちょっとは元気になるやろうか。 あたしね。そんなことをずっとずっと考えてた。
そうる。どうしよう。あたしあんたが愛しくてしょーがない。
スタバを出た頃は。もう夕方になってた。 そうるのエスプレッソは。結局冷め切って残された。 店を出て。そうるはバイクに先にまたがる。 そして後から店を出たあたしに向かって。笑って言った。 「ありがとうな。話聞いてくれて。」って。
「いや。聞くだけしかできんかったけど。ごめん。」って。あたしは照れて言う。 「いやいや。ちょっと救われた。ありがと。」そうるも照れて言う。 「そんなん。うちとか普段愚痴りまくりやし。」ってあたしが言ったら。 「あぁ。そっか。んじゃ気にせんでええか。」って。そうるはイジワルく笑った。 そんなそうるに。あたしはいつもみたいにキィーって言う。 でも今日のキィーは。悔しさよりも。嬉しさの方が勝ってた。
あぁ。よかった。そうるがいつもみたいに戻って。 よかった。あたしがちょっとでもそうるを救えて。
ねぇそうる。そういう弱い姿。あたしには見せてええからね。 いつもいつも威厳のあるキャプテンじゃ疲れるやろ。 かっちょよすぎるあんたじゃなくてもいい。かっこ悪いあんたでもいい。 強いあんたじゃなくても。弱音を吐くあんたでも。 そのままのあんたを。あたしは愛してるから。
大丈夫。あんたの気持ちとか。あたしちゃんと抱えてみせる。 あんたがしてくれるみたいに。うまくは抱えられんかもしれんけど。 ちょっとずつこの腕から。指の隙間から。零してまうかもしれんけど。 それでも。守られるだけじゃなくて。あんたを守りたいねん。 この腕をいっぱい広げて。あんたのことを包みたいねん。
そうるはあたしをバイクで送ってくれて。お決まりのキスをくれた。 甘くて柔らかいそうるの唇から。あたしは元気をもらう。 「明日がんばろな。」「うん。早く寝なあかんで。」 そんな言葉を交わして。去っていくそうるを見つめる。
ねぇそうる。明日は。最高の1日になるように。 最高の涙を流せるように。一緒にがんばろうね。 あんたがいてくれるなら。あたし何だって出来るような気がする。 あんたが笑ってくれるなら。あたしすごい力が沸いてきそうな気がする。 大丈夫。きっと試合の後。あたしもあんたもいい顔をしてるはず。
そうる。がんばろうね。
*追加1* 写真探しの旅に出かけてます(笑)。しばらくはこんな感じかな。 でもやっぱりこれじゃ寂しい。キレイな背景つけたいよー。 なーんか。秋っぽくて。暖かいのを見つけたい気分。
*追加2* 明日は試合があったらたぶん飲み会なんで。 更新できない可能性大です。楽しみにしてくださってる方、ごめんなさい@ でも次の日にちゃんと書きますんで。うん。勝利報告したいです。 いい試合できるように。祈っててくださいね☆ |