夢を見てた。そこにはそうるとあたしがいて。 2人で。手をつないで空を飛んでた。 どこに行くんやろう。どこを目指してるんやろう。 分からないけど。この手について行けば。何も怖くない。 この手を離さなければ。あたしはずっと幸せ。 なんか。そんなことを思いながら。 ずっとそうるの手を握り締めてる夢だった。
目覚めたら。あたしの隣にはそうるがいた。 あたしが起きたのに気づいて。こっちを見る。 「おはよーさん。」って。その唇が動いた。 「んー・・・おはよ。」ただでさえ寝起きの悪いあたし。 夢のせいでまだ頭はうつろになってた。
今日はそうるもあたしも大学はお休み。 2人でのんびりできる朝は。最高に幸せ。 「おなかすいたー。」って言うそうるに。 「んー。なんか作るわ。」って。あたしは起き上がる。
あたしとそうる。一緒にいても。自然と役割分担ができてる。 夕方も。朝も。だいたいごはんを作るのはあたし。 これは下宿っ子の方が慣れてるんやし。あたしは全然平気。 今朝は。昨日の残りのハンバーグとサラダ。ちょっと手抜き(笑)。 そうるは。もちろん残さずに全部ペロリ。うん。気持ちいい。
もともとスポーツをやってるだけあって。 あたしもそうるも。けっこうな量を食べる。 ちょっと多すぎたかなーって量でも。2人なら。 必ずキレイに食べ尽くしてる。それが気持ちいい。 「もー。太ってまうやん。」とかブーブー言いながらも。 「まぁえっかー。運動してるしな。」って。楽観的になってる(苦笑)。 もりもり食べて。元気になって。ずっと笑ってたい。 だからいっぱい食べる。おなかすいてイライラしてたら笑えないしね。 それにそうると食べると何でもおいしいし(照)。
あたしが食事係なら。そうるの役割は。 うん。もちろんもっぱら移動係(苦笑)。 どこか遠出するときは。あたしが提案したとしても。 地図を読むのが苦手なあたしに代わって。だいたいそうるが連れて行ってくれる。 免停になったはずのバイクで(苦笑)。(まだ乗っててもいい期間らしい。) 今日は。今度の試合会場の下見に行くことにした。 前回迷ってギリギリ到着やったのが。そうる的には堪えてたみたい(苦笑)。
いつもみたいに。オフホワイトのメットのひとつをとる。 おや。いつもとちょっと違う。目を覆うとこが新しくなってる・・・? 「あぁ。それUVカットのシールドにしたで。」そうるが言う。 「そーなんや。ありがと。あんたのも?」あたしは聞く。 「うん。そもそもこれを黒いのにするのが目的。」そうるは言って。 自分用のメットをあたしに見せる。それは。 透明なはずの目を覆うとこが。黒いのになってた。
「えー。悪そう!かなりガラ悪そう!」あたしは言う。 だって。そんなとこ黒にしたら。そうるの目が見えへんやん(爆)。 一緒にバイクに乗ってて。信号待ちとかで。ちょっとあたしを振り返って。 その時に。メットの隙間から見えるそうるの目が。あたしは好きやのに。 「ええやん別に。何色でもさー。」そうるはそう言ってメットをかぶる。 「えー。なんで黒にしたんよー。」あたしはしつこく聞く。 「んー。道路走って車と勝負するため。」って。そうるは笑う。 「はぁ?何?勝負?」意味が分からなくてあたしは聞き返す。 「そう。四輪でむかつく運転する人とかおるやん。」そうるは言う。 「うちついついキレてめちゃめちゃにらんでまうんやん。」って。 「でも追いかけられたら怖いし。だから見えんように。黒。」って。
あほやー。そうる。それって勝負とゆーか。びびってるだけやん(笑)。 でもそれをそうるも自分で分かってたみたいで。 「そう。うちびびり。こんなんに1万も使ってもた。はい無駄遣い(笑)。」やとさ。 そう言ってそうるがかわいくて。あたしは笑顔になった。
久しぶりにそうるの後ろに乗る。天気はいいのに風は冷たい。 でもその分。抱き締めるそうるの背中は暖かくて。 きっとそうるの背中もあたしの熱で暖かいんやろうと思って。 そうやってぬくもりを与えあえることに。またあたしは幸せになる。
試合会場に着いた。所要時間は30分。意外と近くてひと安心。 誰もいないグランドに立って。あたりを見回す。 ここで。今週末に。あたしたちの試合があるんやね。 どんな試合になるんやろう。あたしたちのペースでやれるかな。 勝てるかな。・・・そんなことを考えてたら。あたしはドキドキしてきた。
隣にいるそうるをちらっと見る。そうるは黙ってる。 その目は。静かやけど。強い闘志を秘めてるようで。 心の中は。熱く熱く燃え盛っているようで。 青い炎。・・・なんかそんな感じがした。
鼓動が早くなる。気持ちが高ぶる。 試合のことを考えてドキドキしてるのか。 そうるのことを考えてドキドキしてるのか。 あたしはだんだん分からなくなってきた。
そうるはひとつ息をついて。一言だけ言う。 そこに。思いのすべてを込める。 「勝とうな。」って。静かに言い切る。
思いが込み上げて。泣きそうになって。あたしは笑った。
ねぇそうる。あんたの思いが痛いほどに伝わってきた。 勝ちたい。いい試合をしたい。完全燃焼したい。 そんな強い思いが。バシバシ伝わってきた。 あんたを思って。あたしが泣きそうになるのはよくあることで。 もういい加減慣れてもいい頃やのに。 胸が熱い。締め付けられて。どうしようもない。 あたしも関わってることやのに。あたしの試合でもあるのに。 あんたのことばっかり考えてしまう。あぁ。ほんまにどうかしてる。
ねぇそうる。きっと日曜の試合は。 どんな結果になっても。あたしは泣いてると思うな。 感動屋さんって笑ってええよ。呆れてもええよ。 でも。その涙が。最高の笑顔と一緒に流せるものであるように。 明日の練習も。ただがんばるだけ。 気持ちは高ぶって。抑えきれなくなるけど。冷静にならんとね。 うん。やるべきことはシンプル。大丈夫。分かってる。
そうる。あんたの思い。あたしの思い。みんなの思い。 ひとつにして。絶対勝とうね。
|