そうるとあたしは普段あんまり電話をしない。 相手の姿を見ないで話すのが苦手なそうるとの連絡手段は。 いつもは圧倒的にメールが多くなってる。
今日はそんなそうるから電話があった。 あれ。珍しいな。そう思いながら電話に出たら。 電話口のそうるは。思いっきり愚痴ってきた(苦笑)。
「ちょー。免停になってもーた。」というその声に。 「はぁ?!め・・・免停?!」あたしは思わず声が裏返る。
確かにそうるはこの前から言ってた。 「うちあと1回捕まったら点数オーバーやねん。」って。 「これで一時停止してへんとかで捕まったらアホやからなぁ。」って。 最近はいつになく丁寧な運転をしてたそうるやった。 それが。免停だぁ?まじっすか?
「昨日の帰りに捕まった。ありえへん。」そうるの声は沈んでる。 「えー。まじでー。なに。スピード違反?」あたしは聞く。 「そう。でも意味分からん。85キロとかやで?」そうるは言う。 「いやいや・・・85キロって。姉さん十分違反ですがな(苦笑)。」あたしは言う。 「てゆーか。普段110キロとかで走ってんのに。なんで85キロとかで捕まんの?」 そうるは完全に逆ギレモード。言ってることはちょっとおかしい(笑)。 「いやいや。そーゆう問題じゃないやろ(苦笑)。」あたしは笑う。
でも分かる気もするけどね。あたしの原チャだってそうやし。 普段はメーター振り切って壊れるかってくらいに全開で走ってんのに、 捕まるときに限って47キロとかいう中途半端なスピードやったりして。 「なんでやねん。」とか思ったりしてたし(笑)。
自他ともに認めるバイク大好き人間のそうる。 どこへ行くにもバイクで移動。雨の日も風の日もバイクに乗ってる。 休みの日には大事にバイクを磨く。バイトに勤しむのも新しいバイク資金のため。 そんなそうるが免停・・・。もちろん愚痴はとどまるところを知らない(苦笑)。
「だいたいな。もっと捕まえなあかん四輪はいっぱいおるねん。」 「平気で横走ってるバイクに幅寄せしてくるヤツとかさ。」 「あとトラック。逃げ場なくなって本気で泣きそうになるもん。」 「それから携帯でしゃべりながらフラフラ運転してる四輪とかも。」 「速度違反見つけるのに二輪ばっかり追ってるのも問題やろ。」 「ほんまに。何が秋の交通安全週間やねん。」 「速度違反より駐車違反しっかり取り締まれっちゅーねん。」 「だいたい罰金高すぎやねん。講習代もいるし。ふざけんなっちゅーねん。」
そうる。警察に対して相当言いたいことが溜まってたらしい(苦笑)。 苦手なはずの電話で。弾丸のようにしゃべりまくってた。 あたしは。物申すヒマも与えられず(苦笑)。 「ふんふん。」ってうなづきながら聞くのだけで精一杯。
ひとしきりそうるの愚痴を聞いた後で。あたしはようやく寂しくなってくる。 免停ってことは。そうるがしばらくバイクに乗れないってことは。 あたしもしばらくはその後ろに乗れないってことで・・・。 おいおい。それってうちにとってはめちゃめちゃ寂しいことやし。
あたしがそんなことをちょっと言ったら。 「うん。そらうちが運転できんのやからあんたは乗れないね。」って。 そうるは呆れるほどに。しれっと言ってくれる。 「え。いや。そうやけど。寂しいんですけど。」って言うと。 「そんなんうちだって寂しいがな。」なんて。珍しく言ってくれた。 あれれ。どうしたそうる。ちょっと素直やし・・・なんて思ってたら。 「寂しいってゆーか。普通に困るし。」って言い直してたけど(苦笑)。
ねぇそうる。あたしにとって。あんたのバイクは愛すべき居場所。 あんたのバイクの後ろはあたしの特等席やから。 大好きなバイクで走ってるご機嫌なあんたの鼓動を。 誰にも邪魔されずに独占できる場所やしね。 あんたをぎゅって抱き締めて。あんたの背中にあたしの胸を押し当てると。 あんたの幸せな鼓動が。あたしに伝わる。 あたしの幸せな鼓動も。あんたに伝わる。 そういうのがどうしようもなく幸せで。あたしはたまらない。
それはベッドの上で体を重ねあうのと。同じくらいの幸せをあたしに与える。 同じ気持ちで。同じところを見つめて。走ること。 そして。そばにいる人を。誰よりも愛しく感じる気持ち。 そういう意味で。あんたと一緒にいられるなら。 ベッドの上もバイクの上も。あたしには同じくらい幸せな居場所。 あぁ。そんなあたしにとって大切な居場所の片方を。 しばらくとはいえど。失うのが寂しくてたまらん。 そのぶんもう片方の居場所で。いっぱい抱き締めてもらわな(爆)。
ねぇそうる。早く免停講習受けに行って来てちょーだい。 愛すべき居場所を失ったあたしは。しばらくきっとわがままで。 あんたにどうしようもなく甘えまくると思うから。 「別にそれでもええし。」「サービスするし。」なーんて。 それはそれで嬉しいけど・・・言わないように(苦笑)。 きっとあたしの甘えっぷりはハンパじゃないような予感がするから。 そんなあたしに呆れる前に。早くバイク生活を取り戻してちょーだい。
あたしの愛すべき居場所を。ちゃんとあたしに与えてちょーだい。
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