今日は試合だった。結果・・・これまた快勝☆ 実は前後半通して微妙にヒヤヒヤした展開になったものの。 もともと負ける気はしてない試合相手校だったために、 最終的にみんな落ち着きを取り戻して勝利につながった。
試合になるといつも書いてるけど。 そうるは。今日もため息が出るほどキレイだった。 勝負を挑むその目は。秘められた強い闘志を表し。 機敏なその動きは。風をまとっているようにしなやかで。 そうるの姿は。あたしの心を完全に奪っていた。 もちろん自分のプレーにも集中するけど。 余裕があるときは。試合を忘れてそうるに見とれていた。 何度見ても。胸が熱くなる。心が沸騰しそうになる。 あたしの胸をこんなにも熱くするのは。きっとそうるしかいない。
あたしは。昨日ケンカをしてから。そうると話していなかった。 ケンカというか。あたしが一方的にそうるを怒らせただけで。 そうるにその原因はあまりなかったと思うけど。 とりあえず。あたしは。そうるの態度が悪かったことにキレて。 そうるは。試合前日にあたしがいろいろ愚痴ったことにキレて。 お互い言葉も足りなくて。すれ違ったままで。 後味の悪いバイバイをして。そのままになってた。
謝りたい気持ちはいっぱいあっても。 どうしても素直になれない自分もいて。 そんなに意地を張る必要がどこにあるのかとも思うけど。 それでも。相手に対して求めてしまう心は消えなくて。 そんな自分に対して。情けなく感じる心も消えなくて。 あたしは。どうしたらいいのか分からなかった。 結局何も言えないまま今日になった。
サークルと私情は関係ない。 だから。ケンカしてても普通に話はする。 作戦を練ったり。情報交換をしたり。そういうのに言葉は必要。 でも。そうるはあたしの目をちゃんと見てはくれなかった。
あたしは。少し落ち込みながら。試合を向かえた。 試合前にみんなで円陣を組む。偶然あたしのとなりにそうるが並ぶ。 肩を組むのをちょっとためらった。そうるがどう思うかが怖かった。 でもあたしは。結局そうるの肩に腕を回した。 そうるは別に何も言わずに。普通に受け入れてくれた。 そうるに触れる。何度となく触れてきたその体の一部に触れる。 でも今のあたしには。たったそれだけのことでも。心が震えた。
今日の試合。あたしは結局オーダーで決められてた時間より多く出てた。 試合ってのは流れがあるから。なかなかメンバー交代出来ないこともあって。 あたしは交代要員になってたはずが。スタメンやった友達より多く出てた。 試合終了後。あたしはそのコに声をかけた。 「ごめんな。後半交代できんくて。」て。 何て言われるかと少し思ったけど。そのコはあっさりと言った。 「ううん。ええねん。代われんかったもんな。」って。 「お疲れさん。最後めちゃめちゃがんばってたやん。」って。
あたしは。また自分が情けなくなった。 試合に出たい出たいって思ってたあたしは。なんて醜かったんやろう。 その気持ちは大事やけど。そればっかりに執着してて。 その友達みたいな心の余裕なんて。あたしには全然なかった。 自分だけがしんどいと思ってた。周りのことなんて見えてなかった。 そして。そうるのことだって。怒らせた。
いろんな考えがぐちゃぐちゃになったけど。 あたしはやっぱりちゃんとそうると話をしたいと思った。 キャプテンのそうるは。試合後にもいろいろとやることがあって。 みんなと一緒には帰れない。あたしはそれを分かってたから。 「先帰っててー。」とか言って。駅に向かうみんなからさりげなく離れて。 そうるのことを待つことにした。
そうるのバイクの隣に。あたしは荷物を置いて座りこむ。 膝をかかえたら。涙がじんわり溢れてきた。 何を言おう。何を伝えよう。いろいろ言葉を探してみても。 気持ちのすべてを伝えられる言葉はみつからなくて。 どうしよう。どうしよう。そんなことを考えながら。 膝に頭を埋めて。あたしは静かに泣いた。
どれぐらいそうしていたか。近づいてくる足音が聞こえた。 そうるは。靴のかかとを引きずって歩くクセがあって。 あたしはいつの間にか。その足音も聞き分けられるようになってた。 足音はバイクの横で止まる。そして。あたしの頭に手が置かれる。 「・・・何やってんねん。」って声がして。 顔を上げたら。そこに。あたしの最愛の人がいた。
「・・・待っててん。」立ち上がって。あたしはそう言うのがやっとだった。 「うん。見れば分かる。」そうるはそう言って。そばのブロック塀に座った。 なんて切り出せばいいか分からなくて。あたしが黙ってたら。 「言いたいことがあるから待ってたんやろ。」ってそうるは言った。 「聞くから話し。今日はちゃんと聞くから。」って。あたしを見て言った。
あたしは。思ってることを話した。 昨日。そうるの都合を考えずに。言いたい放題言って後悔したこと。 今日。思ったより試合に出られて。あのコは気にしないって言ってくれて。 試合に出ることだけに執着してた自分が恥ずかしくなったこと。 自分のことしか見えてなかったことに。ようやく気づいたこと。 うまく伝わるか怖かったけど。あたしは一生懸命話した。
そうるはあたしの話を聞きながら。 「うちも昨日はキツかったと思ってる。ごめん。」って言った。 そして。最後に。あたしに向かって。笑って言った。 「ちゃんと自分で考えられたやん。」って。 「答えもちゃんと見つけられたやん。」って。
あたしは。我慢できなくなって。そうるに抱き着いた。 「ごめん。ごめん。」あたしの口からはもうその言葉しか出てこなかった。 そうるはあたしを抱き締めて。言ってくれた。 「最近泣きすぎやろ。脱水症状で死ぬで(苦笑)。」って。 「・・・死なんし(苦笑)。」あたしはそうるの腕の中で吹き出して。 ようやく。また笑顔に戻ることが出来た。
ねぇそうる。あんたと一緒にいて。あたしはいろんなことを学ぶみたい。 まだまだ弱いとこも間違ってるとこもいっぱいあるあたしは。 あんたと一緒にいて。いっぱい勉強していく必要があるみたい。 ただ優しいばっかりじゃないあんたと一緒にいると。 楽しいことだけじゃなくて。キツイこともいっぱいあるけど。 それでもあたしには。やっぱりあんたが必要みたい。
ダメなあたしを叱ってくれるその声と。 それに気づけたあたしを抱き締めてくれるその腕は。 あたしには絶対に失くせないもの。 そして。その声も。その腕も。 あんたのものじゃなきゃ意味がないんよ。
あたしをバイクで送ってくれたそうるは。 いつもみたいに自然に。あたしにキスをくれた。 ひそかにそのキスがないかもって思ってたあたしは。 幸せで。そうるにしがみついて離れなかった。 「ん?どした?」って言うそうるに。 「いや・・・久しぶりやったから。」って素直に言ったら。 「満足した?(笑)」ってイジワルな笑顔で聞いてきたもんだから。 ちょっと迷ったけど。ここは思ったことを言うべしと思って。 「・・・いや。足りん。」って言ってやったら。・・・爆笑された(笑)。 「足りんのかいっ!(笑)」って。 でもそんな笑顔だって。あたしは愛しかった。
だって。足りんもんは足りんかってんもん。 キス大好き人間のあたしとしては。ケンカして。気まずくて。 そういう状態が続いてることは実はかなり辛かったから。 そうるはやっぱりそんなあたしを見抜いてたと思われ。 はぁ。もうええけどね。そうるになら。全部見抜かれても。
そうるは結局。甘い甘いキスをくれた。 あたしの唇に吸い付くそうるの唇。 あたしの舌に絡まるそうるの舌。 こんなにも愛しいものは。あたしには他には考えられない。
あぁよかった。あんたを失わずにすんで。 あたしにとって絶対に必要な存在を。失わずにすんで。 |