昨日あたしは夜中遅くまで泣いてて。 今朝起きたら目が腫れてた。 鏡を見て。ぶっさいくになってる自分に気づいて。 またどうしようもなくやりきれない気持ちになって。泣いた。
大学でも。講義なんか耳に入らなかった。 オーダーのこと。試合のこと。いろんなことを考えて。 頭の中がぐちゃぐちゃになってたけど。 最終的に思うのはそうるのことだった。 最愛の人に認めてもらえなかったことが。あたしには1番辛かった。
昼練に行こうか迷った。 泣き腫らした目をみんなに見せるのは反則な気がした。 それに。そうるに見られたくないと思った。 そうるはあたしの心の奥には気づかないやろうけど。 泣き腫らした目には気づくと思った。 気づいてほしいのか。気づかれたくないのか。 自分でもよく分からなかったけど。今日は会いたくなかった。 でも。今日はサークルの友達に渡すものがあって。 あたしはどうしても昼練に顔を出さなきゃいけなかった。 仕方ない。あたしはグランドへと足を向けた。
もういいや。何とでもごまかせるはず。そう思い直した。 大丈夫。あたしきっとそうるの前でもうまく笑える。
グランドに着いて。そうるの姿はまだなかった。 いつもみたいにみんなとワイワイ話す。 思いのほかあたしの目の腫れは治まってたみたいで。 みんなは特に何も気づいてなかった。
しばらくして。聞き慣れたバイクの音がした。 バイクを停めて。そうるがあたしたちの方に向かって歩いてくる。 カーキの半袖ニットに。黒いパンツ。そして短い髪をちょっと立てて。 いつもと何も変わらない。かっちょいいそうるだった。
何気なくそうるの方を見てたら。目が合った。 「おっすー。」って。あたしは笑って言う。 「おぉ。」ってそうるも言う。 大丈夫。いつもと変わらない。あたしはそう思ってた。 ・・・実際はそうじゃなかったんやけど。
昼休みが終わって。みんなしゃべりながら後片付け。 「今日昼終わりの人ー?」って友達の一人が言った。 あたし。そうる。そして友達2人が手を挙げる。 午後から授業のあるみんなはそれぞれ学部に戻って行って。 あたしたち4人は学食でお昼食べようってことになった。 その友達2人は同じ学部で仲良し。2人乗りで原チャにまたがって。 「先言って席取っとくわー☆」って言い残してグランドを出て行った。
あたしは。まだ後片付けをしてたそうると2人きりになる。 「早く行こうやー。おなかすいたー。」って言うと。 そうるは片付けの手を止めずに。あたしの方も見ずに。 「なにがあったん?」って言った。 さらっと。自然に。あたしに聞いてきた。
「なんかあったん?」じゃなくて。「なにがあったん?」か・・・。 あたしに何か起こったことを。そうるは確実に読み取ってた。 ・・・そうるは。ほんまに。あたしをどこまでも見抜く。
無駄な抵抗と思いつつ。あたしはとりあえず言ってみる。 「え。なんもないよ?」って。 そうるは今度はあたしの方を見て。ちょっと怖い顔をして言った。 「嘘つけ。目腫れてるやん。」って。
あたしはそれでも話せないと思った。 あたしの中にある最低限のプライドがあたしを止めた。 大好きなそうるにでも。同情なんか絶対にされたくなかった。 でも。大好きなそうるだから。嘘はつけなかった。
「んー。ちょっとね。最近いろいろね。」あたしはごまかそうとした。 そうるは黙ってあたしの方をじっと見てる。 視線が痛い。突き刺されるようで。あたしは耐えられなかった。 「まぁええやん。早くごはん食べようや。」って言って。 あたしは歩き出した。その腕を。そうるに掴まれた。 そうるは。怖いくらいに優しい顔で。あたしをいたわる瞳で。 「大丈夫なん?」って言った。
・・・やばい。泣きそう。てゆーか無理。泣く・・・。
「大丈夫やって。早く行こうや。」あたしは無理やり笑って。 そうるを背にして急ぎ足で歩いた。 歩きながら。情けないけど。涙が溢れそうになって。 やばい。やばい。そう思いながらあたしはどんどん歩調を速めた。
そんなあたしの姿を見て。そうるは。走ってきた。 見んといて。そうる。お願いやから見んといて。 あたしは願ったけど。そうるは。 あたしの前に回りこんで。あたしの顔を覗き込む。 そして。潤んだあたしの目に気づく。
そうるはまたため息をつく。そして言った。 「なんでそんな泣き出すまで溜めたりするん?」 「なんでそんな限界になるまで抱え込むん?」
そうるは。人に干渉するのもされるのもキライだと言いながら。 こういうときになると。絶対にあたしのことをほっておかない。 ごまかすことなんて出来ない。だってそうるは。あたしを見抜くから。
あたしは覚悟を決めて。少しずつ話し始めた。 でもそれは。あたしのプライドを傷つけるのには十分すぎた。 オーダーのことを口にするのだけでも辛かったから。 そうるがその判断を下したから余計に辛いんやってこととか。 そういうことは伏せておいた。
必要とされたいとか。認められたいとか。 所詮は全部あたしの勝手な要求にすぎない。 必要とするか。認めるか。それはそうるが決めることで。 あたしがどうこう求められることじゃないはずなのに。 泣いたり。わがまま言ったり。あたし情けなさすぎる。 だから。スタメンを取れなかったことが純粋に辛いとだけ言った。
そうるは。やっぱり黙ってあたしの話を聞いてた。 そして。あたしが話に詰まると。ゆっくり話し始めた。
今回のオーダーがあんたにとって辛いもんやって分かってた。 でもそんなに泣き出すほど辛いとは思わんかった。 あんたの腫れた目に気づいたけど。その原因がオーダーとは思わんかった。 気づけんくてごめん。鈍くてごめん。
そしてその後で。思いもしなかった言葉をくれた。
今回のオーダー。あんたが交代要員になって。 いろいろ考えたり悩んだりするかもって思った。でもあえてそうした。 チームのために犠牲になってもらった。でもそれだけじゃないで。 最近あんた不調やん。自分でも分かってるやろ。 うちはあんたにはそんなもんで終わってほしくないねん。 現状で納まってほしくないねん。もっともっと伸びてほしいねん。 あんたはもっとがんばれる。もっとがんばらなあかん。 そういうことに自分で気づいてほしかってん。 だから今回みたいなオーダーにしてん。そんで何も言わんかってん。 まだまだやれるやろ。なに諦めてるん。なに弱気になってるん。 しっかりしいや。がんばりいや。うちはちゃんと見てるから。
・・・あたし。涙腺故障。
「うちはちゃんと見てるから。」 最後のそうるのセリフ。あたしが1番言ってほしかった言葉。 それだけで十分嬉しかった。でもそうるはそれだけじゃなくて。 あたしのことをそんなふうに思ってくれてたんや。 そして今でも。そんなふうに期待してくれてるんや。 見捨てられてるわけじゃなかったんや。見守ってくれてたんや。
そしてあたしは思い出す。あたしに何も言ってこないそうるは。 いつもあたしに何かを気づかせようとしてたってこと。 例えばあたしが間違ったとき。弱ってるとき。 あたしを導いてくれるそうるのやり方は。黙ってあたしを見守ること。 そうるはいつでも。あたしに自分で気づいてほしいって言う。 「うちが言うのは簡単やけど。ちゃんと自分で気づいてほしいから。」 それが。そうるのあたしへの愛のカタチ。 あぁ。あたし。また忘れてた。また見えなくなってた。
ねぇそうる。ありがとう。またあたしを導いてくれた。 あんたらしいやり方で。あんたらしい言葉で。あたしを救ってくれた。 優しい甘い言葉じゃなくて。同情とかするんじゃなくて。 たったひと言。「見てる」って言ってくれたことが。 あたしには何より嬉しかった。ありがとうね。 うん。見守ってて。あたし。本気でがんばるから。
それから。ねぇそうる。ごめん。 あたしまた自分のことしか見えてなかったね。 自分のしんどい気持ちばっかり考えて。あんたの気持ちを忘れてた。 キャプテンとして。あんたはいろんなことを考えたんやろう。 ひとりひとりの実力とか。最近の調子とか。いろんなことを考えて。 悩んで。悩んで。そして決めたオーダーやったんやろう。
全員の希望を聞いてたらオーダーなんて組めない。 だから。冷静な目と判断力で。そうるは決めた。 ときに感情を切り捨てて。ときに冷たいとすら思われそうな判断で。 そんなあんたに。あたしはわがままに自分のことばっかり考えて求めたくなったけど。
でも今は。あたしの存在とか。あたしとの関係とか。 そういうことを特別視せずに。ちゃんとチームのことを考えたあんたを。 さすがやと思った。さすがあたしの愛した人やと思った。
そうる。やっぱりあんたはかっこいい。
*追加* 長い!長いです!長すぎです!あたしの日記!(苦笑) 書きたいことをつらつら書くと。こんな長さになります(涙)。 毎回だーっと書いてから反省するんですけどねぇ・・・。(←遠い目。) そんな長ったらしい読みにくい日記やのに。 読んでくださるみなさんにはほんまに感謝です☆ これからは読んでくださる方のことも考えて書けるように。 ちょっとずつでも精進したいと思います・・・(涙)。
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