どうして。あたしは。 こんなにも気持ちが不安定なんやろう。 幸せで幸せで満たされてる気持ちが持続しないんやろう。 そうるを思うと。あたしはいつでも揺れてて。 幸せで泣いたり。怖くて泣いたり。ちっとも穏やかじゃない。
どうして。あたしは。 この手に有り余るほどの幸せを抱えているのに。 それだけじゃ全然満足できなくて。 もっともっとと求めてしまうんやろう。 手にしているはずの幸せはかけがえないもので。 何があっても失いたくないくらい大切なもので。 そんなことはもう分かりすぎるほどに分かってるはずなのに。 あたしはすぐにその重みを忘れてしまう。
昨日そうると1日一緒にいて。 あたしは確かに幸せやった。
いつもみたいにバイクの後ろに乗った。 大好きなそうるの背中を抱き締めた。 もうすぐ大型の免許をとるんだとか。 78万のバイクが欲しいんだとか。 子どもみたいに目を輝かせて話すそうるを。 これ以上ないくらいに愛しいと感じてた。
あたしのために回り道をしてくれた。 ちょっとこそばゆくなるような演出で。 あたしのためにめちゃキレイな夜景を見せてくれた。 抱き締めてくれた。キスしてくれた。 そんなそうるにあたしは確かに幸せをもらってた。
なのに。それなのに。
今日のあたしはもういろんなことに不満で。 またそうるの心が見えなくなって。 どうしてどうしてって唇を噛んでた。
練習はいつも通りに楽しかった。 今日はあたしとそうるはおそろいのTシャツを着てた。 チームみんなで作ったTシャツは今までに3枚。 そのうちの1枚を示し合わせたでもなく。 たまたまあたしとそうるだけが着てた。 そういう小さいことに、あたしは幸せを感じるようなヤツで。 やったー。今日はおそろいやーって。単純に喜んでた。
昨日のデートの別れ際で。いつもみたいにキスした後で。 明日の練習後もあたしと一緒にいたいって言ってくれてたそうる。 でも今日は。結局サークルのみんなと一緒にごはん食べに行った。 一緒にはいられたけど。2人きりにはなれなかった。
でもでも。あたしはそんなことで不機嫌になってるわけじゃない。 みんなと一緒にいる時間だってあたしにはかけがえないもの。 だからあたしはそんなことで怒ってるわけじゃない。
あたしが不機嫌なのは。見たくないそうるを見たから。
聞かれたから答えただけかもしれんけど。 そうるはまた嬉しそうに話してた。・・・彼のことを。
あたしは。そんなことは聞きたくない。 そうるの口から彼の話を聞くだけで。 あたしは胸が痛い。締めつけられるように痛い。
話は。恋人に束縛されたいかそうじゃないか、みたいな内容で。 そうるは彼があんまりそうるに干渉しない人だって言ってた。 「それがラクでええねん。」って笑ってた。 たぶんある程度は放置されときたいってのがそうる。 そんなそうると彼は。いい感じのバランスなのかもしれない。
明日はそうるはバイトで。彼もバイトで。 でもそうるがあがる時間に彼が入ってくるらしい。 「そんなもんやねんよな。」ってそうるはまた笑ってた。
幸せそうに笑わんといてよ。人の気も知らないで。 あたしは最愛の人に対して。そんなことを思ってしまった。 そしてまた。自己嫌悪に陥ってた。
ねぇそうる。あんたにとってのあたしって何なんやろ。 そんなことを聞いたらあんたはきっと渋い顔をする。 束縛とか干渉とか。あんたの1番キライなこと。 それを知ってるから。あたしは聞かない。絶対に聞かない。 あんたの渋い顔なんて見たくないから。 あんたにそんな顔をさせたくないから。
でも。あたしは思わずにはいられないんよ。 ほんまにあたしのことを大事に思ってくれてるんかなって。 昨日のあんたを信じてるけど。今までの優しさも忘れてないけど。 今日みたいなあんたを見るとあたしはいつも思う。
だって。あたしがそんな話聞きたいと思う? あたしはあんたのことがどうしようもないくらい好きなんよ。 愛してるかと聞かれたら、愛してるって言い切れるんよ。 そんなのあんただって分かってることやん。 そんなあたしの前であんたの彼の話とか。 なんで言えるん?なんで笑って話せるん? あたしはあんたに気を使って、その場の空気とかも一応読んで、 とりあえずは笑って話を聞いてるけど。 なんであたしばっかりそんなふうに我慢せなあかんの?
・・・でもだいたいあたしにしたって。 聞きたくもない話を無理して笑って聞いて。 心を殺して。我慢して。なんとか耐えて。 そんなことをして苦しむくらいなら。 ちゃんと感情を示せばええって話かもしれんけど。 イヤならイヤって言うとかすればええんかもしれんけど。 それすらも出来なくてあんたに文句ばっかり言って。 そんなあたしだって間違ってるんかもしれんけど。
わがままでごめん。自分のことばっかりでごめん。 何ひとつアクションを起こせないくせに。 あんたばっかり責めてごめん。 でもねそうる。あたしの気持ちを分かってほしいんよ。 そしてあたしはあんたの気持ちが知りたいんよ。 怖いけど。めちゃめちゃ怖いけど。 やっぱりちゃんと知りたいんよ。
聞きたくないけど。絶対に聞きたくないけど。 ちょっとだけ言葉にしてみてもええかな。 そうる。あたしと彼と。どっちがいっぱい好き?
・・・あぁ。結局そこに行き着くんや。 いつだってあたしは見えない彼と戦ってるような気分。 忘れようとしても。考えないようにしても。 いつだってあたしを苦しめる根源はそこにある。 ナンバーワンじゃなくていい。オンリーワンでいい。 そう思おうとしても。実際そう思ってても。 明らかに無理して苦しんでるあたしがそこにいる。
ねぇそうる。あたしはあんたを独占したいんよ。 あたしだけのあんたでいてほしいんよ。 あんたを1番理解してるのはあたしでありたいし、 あんたを1番支えられるのもあたしでありたいんよ。
でもきっとこんなあたし。あんたは好きじゃないやんね。 好きというか・・・きっと愛してはくれへんやんね。
苦しいよ。そうる。気持ちがどんどん膨れ上がってく。 あたしばっかりあんたを思って苦しいよ。 助けて。この想いをなんとかして。 それはあんたにしか出来ないことなんよ。 |