今日はサークルのみんなと一緒に試合を見てきました。 いわゆるスカウティングというやつ。 まずは敵を知らねば勝てないってことで。 今後の対戦相手の試合を見てきました。
今日のそうるは。全身黒い服で。 やっぱり真剣な表情で試合を見てて。 なんであんなにかっちょいいかなぁと思いながら、 あたしもそうるの近くにおりました。
そうるに1番似合う色は黒だとあたしは思ってる。 白とかパステルとか、そんな柔らかい色は、 そうるの存在感をぼかしてしまうから。 どこかミステリアスで謎めいた雰囲気がそうるの魅力。 だから黒が1番そうるに似合うんだ。
そういやそうるは前に話してくれた。 小さい頃、そうるがバレエを習っていた時。 発表会で白鳥の湖をやることになったんだって。 たいていの女の子が主役の白鳥をやりたがったのに、 そうるだけが黒鳥をやりたがったんだって。 その話を聞いてあたしはにんまりしてしまった。 なんてこと。そんな小さな頃からそうるは、 あたしが好きな今のそうるとそっくりだったんだ。
・・・でも。そんな黒鳥は今日。 あたしのことをちょっと傷つけた。 凍りつきそうな冷たい視線をあたしに投げた。 あたしがいけないんだけど。 ちゃんと分かってるんだけど。 あたしは突き刺すようなそうるの視線で、 泣き出したいくらいの衝動に駆られてしまった。
あたしはけっこう興奮しやすいタチで。 そしてさらに興奮するとまわりが見えなくなる。 自分の悪いクセだって分かってるけど。 また今日もやってしまった。 あんまり強くないスカウティング相手の、 シュートがまさかまさかで成功して。 あたしは思わず叫んでしまったんだ。 「うわー。なんなんあの人?」って。 深い意味があったわけじゃない。 ただびっくりしてそう言ってしまったんだ。
そしてなんだか視線を感じて。 その方向を見たらそうると目が合った。 無言でそうるはあたしのことを見てた。 たぶん数秒間だったと思うけど、 あたしには長い長い時間に思えた。
そうるの視線は明らかにあたしを責めていた。 軽蔑したような、見下したような、 そんな冷たい視線に思えた。 (何やってんねん。あほちゃうか。) そうるの目は無言で語っていた。
そしてあたしは気づかされた。 あたしたちのまわりには、 そのチームのOBさんとかがいっぱいいて、 一生懸命チームのことを応援してたんだ。 その人たちの後ろであたしはヤジを飛ばしてしまった。 知らなかったわけじゃない。最初から知っていた。 でも試合に夢中になって忘れてしまってたんだ。 (しまった・・・!!)って思った。でももう遅い。
そうるの視線はあたしの心を突き刺した。 怖かった。そうるの無言の視線が怖かった。 あたしは思ってしまった。 何も言わずにそんな視線を向けられるくらいなら、 怒られた方がずっとずっとマシだったって。 それぐらいそうるの目は怖かった。 でもあたしはその後で気づく。
ねぇそうる。あんたはよくあたしに言ってたやん。 「伝えたいことを全部言っていいとは限らない。」って。 「思ってること言って。」って求めるあたしに、 「うちが言うことは簡単なことやけど。」 「自分で気づいてほしいから何も言わんねん。」って、 あたしを諭すように言ってくれたやん。 あたしそのことを思い出した。
ねぇそうる。もしかして今日のもそうなんかな。 「あかんやん。いい加減ちゃんとしーや。」って。 ほんまはあたしに伝えたかったんかな。 でもあたしが自分で気づくように、 直接言わずに視線でヒントをくれたんかな。 言葉だけじゃなくて、あえてちょっと冷たい態度で。 あんたの気持ちを伝えてくれたんかな。 都合のいい解釈かもしれんけどあたしにはそう思えた。
だってあんたはいつだってそうなんやもん。 どんなに冷たく見えたって(実際冷たくたって)、 あたしのことをちゃんと導いてくれる。 あんたなりのやり方であたしに教えてくれる。 あたしにちゃんとしてほしいから。 間違ったらちゃんと気づかせてくれる。 あたしちゃんと受け取ったから。 あんたの優しさ。ちゃんと伝わったから。
そうる。ありがとう。ありがとうね。 |