ディリー?闇鍋アラカルト
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芥川の後期の作品だけ全集の三分の一を読んだという事は、物語的要素の少ない作品を読んだという事だ。それだけ芥川が語りたい事が前面に押し出されているような気がする。 事実、芥川は谷崎潤一郎との文学論争で、文学にとって最も大切なのは、筋ではなく詩の心であるというような事を語っている。 そして、野獣を一匹飼って居なくてはならないとも書いている。 芥川にとってエンターテインメントというのは重要な事ではなかった。 僕が後期の作品を読み始めてからこの部分を読んだ。最初から意図して後期の作品を読んだわけではない。 そして、谷崎との文学論争によって自分の文学に対する姿勢が芥川と同調している事を知った。
もし芥川が芥川賞というものを知る事があるとするなら、彼は決して認めるような事はするまい。芥川賞は筋のある小説に与えられているからである。 芥川の作品を最初から年代順に並べていくなら、筋のある物語から始まって、次第に物語的要素が少なくなっていく事に気付けるはずである。つまり、芥川賞は芥川が捨てようとしたものに与えられているとみなす事が出来る。
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