ミドルエイジのビジネスマン
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| 2006年05月28日(日) |
ミコちゃんとの再会(2) |
座敷の灯かりは広く開け放たれた玄関の外まで明るく照らしていた。入り口では座卓を前にしたおじさんが、一生懸命香典の計算をしている。そうこうするうちに、喪主の従兄弟がやってきて、先ほど納棺したばかりだと説明してくれた。挨拶をしていると、あらーっと明るい声がした。見覚えのある、なつかしい従姉妹のミコちゃんの顔がそこにあった。再会するのは何十年ぶりだろう。
小さいときに遊んでくれたお姉さんの顔そのままに笑顔で迎えてくれたのだが、お通夜のことでもあり、こちらはどんな顔をしたものか、ちょっと戸惑った。男兄弟ばかりだったので、優しく覗き込むようにして話しかけてくれた彼女の顔を甘い思い出として持っている。その当時、なぜか分らないがミコちゃんには無条件に受け入れてもらっているという安心感があった。ただ、その笑顔は何故かいつも淋しそうにも見えたものだった。
大学生か社会人になって間もない頃、母から、海辺の町で夫婦で割烹を営んでいるミコちゃんを訪ねて、ご馳走になってきたという話を聞いて羨ましかった。演歌の世界のようだとも思った。いつか、その割烹を訪ねてカウンターに座って昔話をしている自分の姿を夢想したりしたものだ。そうして、彼女はどんな大人になったのだろうかと想いをめぐらせていた。だが、わざわざ海辺の町まで行く理由も見つからないし、こちらはこちらで頭の上のハエを追うのに忙しくて、その機会もないまま歳月が過ぎてしまったのだった。
従兄弟に勧められてそっと棺の窓を開けると、安らかな顔の叔母がいた。もう九十歳近くになっていたので、点滴を受けながら、最後は心臓が動いたり止まったりしながら眠ったまま息を引き取ったという。
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