たそがれまで
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2004年06月10日(木) 進歩のない私




電話が鳴ると、慌ててデイスプレイをのぞき込む。
それが家の電話だろうが、携帯であろうが・・

ここ数日こんな日が続いている。
そして、敢えて鳴り続けるベルを無視することも。



私が勤める職場で一時期一緒に働いていた人。
私をアッシー君代わりに使い、ATMの代わりまでさせられた人。
「自分がNOと言えないんだから仕方ないでしょ」と
あの頃の夫は、わりと冷ややかな対応だった。


随分音沙汰が無かったのだけれど
この数日頻繁に連絡が入る。
なんだろうと思っていたら、とうとう自宅に突撃された。

本当は家に入れたくはなかった。
(だけどやっぱり断れなかった)

「ひさしぶりぃぃ」
から始まった話しは、一方的な近況報告が延々と続き
これはもしや恐れるに足らぬ、ただの暇潰しかと思い始めた頃
やっぱり話しは核心に及んだ。

「実はさぁ、私の仲の良い友人がいてお金を貸してたんだけど
 ・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・(これが本当に長かった・・)
 中略
 で、娘の修学旅行の費用が払えないのよ、どうしょ〜」

この最後の『どうしょ〜』で私の顔をマジマジと見る。
あぁ、あの頃と同じだ。
そしてこの後に「貸して〜」と続くのだ。


・・・・ん?

・・・・あれ?

今日は言わないだ。




多分、私の表情が思いっきり冷ややかだったに違いない。
自分自身でも顔が強張っていたのが分かるほどだったから。

気のどくだとは思った。
彼女の話が事実であれば。
だけどどこまでが事実なのか、嘘なのか私にはわからない。
全てが嘘だとも思えてしまう。


実は自宅を直撃される前日、職場で話題に上ったのだ。
彼女が職場に居た頃、ほとんどの人からお金を借りていたことが
判明したばかりだったのだ。

同世代の私やもう一人の主婦だけでなく、
20才そこそこのバイトの子にまで借りていたというのだ。
皆、人が良いものだから、誰の口からも漏れることはなく
皆が事実を知ったのは、まさしくその前日のことだった。

それは最近皆に頻繁に電話がかかってきたことで、
皆がそれぞれに心配したんだろう。
『またお金の話しだったらどうしよう』と。

話し合ったわけでなく、皆は同じ行動をしていた。
彼女からの着信は無視するという行動。
「怖くて電話に出られないわよねぇ」と口々に言う私達の表情は
ちょっと意地悪だった。

困った時はお互い様だというけれど、
本当に彼女が困っていると思ってきたからこそ
少額ではあるが何度かお金を貸したこともある。

だけど、自分自身でなんの努力もしないで
状況を改善しようともしないで
ただ調子良く皆に借りまくっていた彼女を許せないと思った。




私の表情が冷たかったからなのか
最後まで彼女の口から「貸して」という言葉は出なかった。
ただ彼女の話から、翌日にもう一度電話がかかってきそうな気がした。

彼女はいつもの元気な姿とは対照的に
がっくりと肩を落として帰って行った。
なんかとても悪い気がした。

だけど、なんで、
私が?
私の方が悪気を感じなければならないんだろう。

皆と話している時の意地悪な表情や
悪気を感じなければならないことが
とても理不尽に思えてならない。
彼女が、彼女自身が皆をそうさせているのに。


「友達」という言葉を連発する彼女だけれど、
あなたは本当に私を友達と思っているの?
少なくとも私は、
本当に大切に思っている友人にだけは、
口が裂けてもお金を貸してとは言えない。

その言葉を口にした途端に、友人という関係は
壊れ始めるのだと思う。
相手は暖かい気持ちで救いの手を差し伸べてくれたとしても
それから先の関係で、負い目はずっとつきまとうだろうから。


もしも、次ぎに電話があったら
居留守なんて使わない。
何の柵もないからこそ言えることがある。

縁が切れても構わない。
それでも金銭の介在しない知人関係が続くというのなら
それはそれで構わない。

だけど、最初の一歩を間違えた私。
こうなったのは私の責任でもあるんだよなぁ。




彼女の愚痴はもうこれで最後にしたい。
書きたいことだけ書いたら、なんかすっきりした気もする。
もう居留守なんて使わない。
私が逃げ隠れする必要なんてこれっぽっちもない。





あ〜、結局、1年前と同じことを書いてるんだよなぁ・・・
進歩のない私。








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