DiaryINDEX|past|will
趣味で出かけたある場所で、突然後ろから声をかけられた。 一瞬、私じゃないよねぇ〜と思いつつもチラリと後ろを振り向いた。
相手は確かに私の旧姓を呼んだのだけど、 あれ?だれだろう・・
「あ・・の・・・ こちさんですよね・・・」
「はい・・ でも・・ どちら様・・・・」
とっても失礼な話しだけれど、まったく心当たりがなくて困った。 30年暮らした土地で旧姓を呼びかけられることはあっても、 現在の土地で私の旧姓を知っている人など皆無な筈で。
「あの、昔、◇□△▽☆○でご一緒させて頂いたんです。 私、こちさんに憧れて入社したんです。」
・・・・・自分で書くのもなんだけれど、確かに彼女はそう言ったのだ。 よく話しを聞いてみると、何度かこの日記にも書いたことがある 某ファーストフード店で社員をしていた頃の後輩にあたる人だった。
なんでもバイト時代に私のアルバイト研修会を受講してくれて、 憧れてくれたらしい。 あれから18年が経ったというのに、私を見てすぐわかったとのこと。
時折、各店に散らばっている女子社員が集まって研修があったり 新店のオープンの時には泊まりがけで応援に行ったりするので たいがいの人は覚えているのだけれど、どうしても彼女の記憶は蘇らない。
どこの新店オープンを手伝ったのかを聞いて、ようやくその訳がわかった。 彼女と私は一度だけ、私が最後に手がけた新店オープンで仕事をしただけだった。 それまでコンビを組んでいた先輩社員が辞め、一人で最初から最後まで 女性アルバイトの教育を取り仕切った新店だった。
あの時の私は自分が所属する店舗内のいざこざで、体力的にも精神的にも 疲れていたけれど、ほんの少しの期間だけでも他店に出られるというので 喜び勇んで仕事をした記憶がある。 スケジュールを組み、各店の女子社員を振り分け、進行状況を把握し 修正し、髪を振り乱して走り回っていたと思う。
後輩女子社員達の協力のおかげで予想以上の出来でオープンにこぎつけ、 上司にも随分と評価して頂いたのだけれど・・・・。 必死すぎて前しか見えてなくて、余裕が無かったんだ私。
「ごめん、やっぱり思い出せない。」
「いえいえいいんです。私、恥ずかしくてほとんど話せなかったんです。 それに、私は人に教えることが初めてで、ほとんどバイトの人と同じ レベルだったから。 落ち込んでいたら缶コーヒーをご馳走になったんです。 そのお礼も言えなかったから。」
良かったよ〜。缶コーヒーの1本でもおごっておいて。
記憶に残っていないのがとても失礼なのだけれど、 彼女の話を聞いて嬉しくなった。 と同時に「憧れだった」を連発する彼女に、 すごくすごく申し訳なかった。 もしも私に憧れなければ、違う人生が待っていたのかもしれない。 おまけに「憧れの人」が今はこんなじゃ、 がっかりさせてしまったかもしれない。
18年振りの奇跡と云える偶然は、彼女と私に何を伝えたかったのだろう。 まさか応援している野球チームが一緒ということを、 認識させる為じゃないだろう。 (声をかけられたのは、とあるプロ野球チームの秋季キャンプ場だった)
夫婦で旅行中だというので、お奨めの場所を2・3教えた。 又の再会を約束してメールアドレスの交換をした時、 ふと自動販売機が目に留まり・・ 急いで缶コーヒーを2本買って渡した。
あの時のコーヒーとは意味が違う。 慰めではなく、たくさんの感謝。
|