たそがれまで
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2003年08月14日(木) 涙を流せる娘




先週が夫の夏休みだったので、帰省は早々と済ませて
お盆は自宅で過ごしている。
昨日には祖父母の家に泊まっていた子供たちも帰宅し、
久し振りに家族が揃った。


空港に子供たちを出迎えに行った時、
娘の様子がちょっと変だった。
帽子を深々と被り、なかなか私に顔を見せない。
無理に帽子のつばをあげると、大きな目にはうっすらと涙。

息子はいつものようにベラベラと喋り、
まだ車に着く前からどこそこで何をしたとか、何を食べたとか。
その間、娘は一言も発言せず。


理由は解っていた。
だから敢えて尋ねもしない。
だけど家に着いてからも娘は黙りを決め、時々目を拭き続けた。

今回はちょっと・・・
そう思った私は娘を2階に連れだして、寝室のベットに二人で横になり
しばらく黙っていた。


「どうした?」

そう聞くと、予想通りの答えが返ってきた。


「お祖父ちゃんとお祖母ちゃんに逢えないのが寂しい。」


娘の言うお祖父ちゃんお祖母ちゃんとは
私の別れた元夫の父と母、つまり元の舅姑のことだ。
離婚後もつき合いを続けていたし、私が再婚してからも
春休み、夏休み、正月などは逢わせてきた。
それは再婚と同時に転居したからであって、もしも転居しないままなら
もっと頻繁に逢っていたのだと思う。

「あと7ヶ月すればおとうの転勤も終わるから、
 たくさん逢えるようになるよ」

そう言ってみても娘は泣きやまない。
よほどこの6日間が楽しかったのだろう。
めったに逢えない現在という状況で、6日間のほとんどを
子供たちの喜ぶ事でスケジュールを埋めて下さった。

元舅姑は本気で子供たちに向き合って下さる。
遊びの時も本気、叱るのも本気。
娘が逢えないと悲しむ気持ちはよく分かる。
分かりすぎるほどに分かる。

ただ遠いというだけでなく、複雑な大人の関係も
きっと理由の一つだと思う。


元舅姑と現在の夫は面識が無い。
再婚する時に顔合わせだけでもと双方に打診したのだけど
元舅姑の方から辞退された。

それは、妻を、我が子を、捨ててしまった自分の息子への不甲斐なさを
他人の前で身に染みるのが嫌だったんだろうと想像する。
大好きな人達なのだけれど、高すぎる自尊心と
世間体を気にかけすぎるところが二人の欠点だと思う。


娘がポツリと言った。
「6月にね、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんが近くまで旅行に来たんだって。
 だけど私の家には来られなかったって。」

姑は今のお父さんが居るから、お家には寄られなかったと言ったらしい。
その言葉が娘を傷つけた。何気ない一言だったと思うけれど
今までも複雑な大人の関係に振り回されてきた子供には辛い一言だったと思う。

祖父母の家に送り届けた時も、夫だけ車中で待っていた。
いつもはお客さんを外まで見送りに来る姑も、
その時だけは外へ出ない。

そんな不自然さが子供たちを混乱させる。
いや、そもそもこんな関係を続けていることが、
子供たちを混乱させているのかもしれない。と思う。

だけど、あれだけ大好きな祖父母を子供たちから取り上げることは出来ないし、
あれだけ孫を可愛く思っている祖父母から、孫を取り上げることもできない。

例え他人から見れば変な関係であろうと
子供たちにとっては掛け替えのない人間関係だ。
だからもっと改善しなければと思う。
もっと自然にできないものだろうか。

後7ヶ月で故郷へ帰る。
祖父母の家と車で10分かからぬ距離になる。
いつでも逢える環境にはなるが、それはそれで心配な事もある。




娘に言った。

「人ってね、大人になるまでに悲しいことや寂しいことを練習しておくの。
 大人になって初めて悲しいことに出合うと、どうしていいか分からなく
 なるからね。 人によって練習の方法は違うんだろうけど、きっとあなたの
 練習は、大好きな人達となかなか逢えないってことだよね。
 でもだからこそ、逢えた時の喜びは大きいし、逢えるために頑張れるよね。
 ほら、こんなことも出来るようになったよって言うためには、いろんな事を
 頑張れるよね。」


納得したように娘は「うん」と頷いた。
どれだけ理解できたかは分からない。
でも多分、おぼろげながら自分が置かれている状況については理解している。
だけど気持ちがついていかないのだ。
大人の私にだってよくあること。

娘と話せて良かった。
素直に気持ちを出してくれて良かった。
難しいことは沢山あるけど、皆あなた達の事を考えているから。




一晩寝て、おはようと起きてきた娘は
いつもと同じでハイテンション。
ちょっとうるさいけれど、静か過ぎて心配するよりはうんといい。












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