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■ 妊娠検査薬『チェックワン』
それは、成田空港から単身で都内に戻る途中のことでした。
私は日暮里でJRに乗り換えようか、京成でこのまま上野まで行こうか迷っていました。
迷っていたのは、
彼がこれから私を呼び出してくれる、そんな気がしたからです。
妊娠したかもしれない・・・・・・・
不安な心が、逢いたい気持ちを募らせます。
逢えるとすれば、
クライアントとの仕事の絡みの関係で、
それは上野のはずです。
でもオーナー会食がありそうで、
彼と逢える希望はかなり低いことも私には解かっていました。
上野に行って、がっかりするのもイヤです。
やはり逢えない・・・・と、諦めの気持ちで
山手線に乗り換えるためにスカイライナーを降りた時
上野で降りるようにと、彼からメールが入りました。
そのままスカイライナーにのっていればよかったと
当然思います。
間の悪い時は、すべてがこの調子です。
まるで今の状況そのものです。
彼と逢うのは二週間ぶりのことですが、
純粋に嬉しいというばかりではありません。
重苦しい心が私を支配していました。
仮に今の私の心痛を彼に伝えたとしても、
彼が苦悩を背負うだけだということは、誰が考えても明白です。
乗り換えたために、予定より何十分か遅れて
私は彼の待つ上野公園に着きました。
設計上の急な変更が発生したので、
これから事務所に帰って一仕事しなければならないと彼は言います。
二時間ぐらいしか時間がないけれど
とりあえず食事をしようと、彼は言いました。
二人の食事をオーダーする彼は、
私の身体を熟知しているように、私の好みもよく知っています。
私のために、
カルパッチョやフルーツの盛り合わせをオーダーする事を忘れません。
この人と人生を共にしたいという、
分不相応な願いがこみ上げてくるのは
こういう、さりげない愛情が
彼から不意に提示される瞬間です。
おろすことだけを前提とした話しをずっと一方的に続ける私に、
ぽつりと彼が言いました。
「るり子、それだけが取るべき道という訳でもないでしょう。」
暗に、産むという道もあるのだということを彼は提案したのです。
私は驚きました。
「言わないで、それ以上聞いたら、気持ちがそちらになびいてしまう。」
私はとっさに、彼の言葉を遮ってしまいました。
彼には妻との間に子どもが既にいて、彼の長男は今春、中学生になりました。
彼の人生の責任は、軽くはありません。
既に生きていて、感情の萌芽あるほうの子を生かして、
痛みの感じない新たな子に泣いてもらう。
機械的に考えればそう言うことです。
無責任のツケは、いずれにしろつきまとうのです。
罪深い所以です。
でも、その彼のひと言が、私に大きな勇気を与えました。
どんな事になったとしても、
自分で自分の身を処するのだという覚悟を、
私はその彼のひと言で固めたのです。
続けて彼は言いました。
「るり子とは、末永くできれば付き合っていきたい。」
それは、彼が初めて告げた私たちの未来でした。
それまで彼は、
自分達の未来はどうなっているのか皆目見当がつかない、そう言っていたのです。
その四日後、
私は医師をしている男友達に相談し、
妊娠判定は五週過ぎたときからできるという彼のアドバイスによって、
自ら妊娠判定をしました。
携 帯 電 話 | I | そうなんだ。明日はゆっくりお休みね。 | He | あぁ、そうするつもりだよ。今帰りの途中。ビデオでも借りて見るかな。 | I | サッカーも見なきゃね。今ね、1対3でトルコが押してるのよ。 | He | 今駅降りて、家に電話したら娘がそう言ってたよ。(笑) | I | 『私より前に、お家に電話してたのね・・・・』 |
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こういうのは、意外に胸に深くささります。 私は彼のセカンドチョイスだという事を、思い知らされる瞬間だからです。 悪意のない小さな本音の積み重ねが、ある日諍いの種になって発芽したりします。 BBSつけました
2002年06月30日(日)
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