台所のすみっちょ...風子

 

 

ATM - 2005年10月13日(木)

先日、銀行に行った時のことである。

その日、その時刻、ATMはとても混んでいた。長蛇の列である。

私の前に並ぶのは平均年齢72歳ぐらいとおぼしき老夫婦だった。


待つこと十数分、ATMが立て続けに二台空き、ようやく老夫婦と

私の番が回ってきた。

さっそくカードを入れ、暗証番号を入れたそのとき、

隣のATMにいた老夫婦が私に声をかけてきた。

「すみません・・あの・・やり方が・・」


彼らの声は不安に満ちていた。

もちろん、私はお手伝するべく隣に行こうとした。

だが、その瞬間、頭に妙な不安がよぎった。

「待て待て。自分は今、カードを差込んだ状態でここを離れようとしている。
 おまけに暗証番号も入力済みだ。
 最近、ATMで他人にいきなり声をかけられ、油断している隙に
 別の仲間の一人が金を盗むという、窃盗団の話を聞くではないか。
 もし、このおばあさんたちに仲間がもう一人いて、
 私が彼らに構っている隙に、そいつが私の口座からお金を引き出そうとも
 限らない。
 そういえば、昔、ミラノに行ったとき、そんな手口で同僚が財布を
 抜き取られそうになったではないか。未遂に終わったけど。」と。


私は良心とその想像の狭間で戸惑うばかりだった。

あんまり戸惑っていたので、結局、彼らは近くに立っていた係りの

人に助けを求め直し、私もバツの悪い感じで、用事を済ませたのだが、

帰り道、「なんか申し訳なかったな〜」と反省しきりだった。


ちなみに・・・

その時の私のカードの残高といったら・・・

たったの588円。



おしまい。


...




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