あまおと、あまあし
あまおと、あまあし
 魚 2002年01月13日(日)


         ああ
        おねがい
       てをはなさないで
      おねがい
    このままずっと押さえていて
   逃げてしまう
 
    魚
       が

     白い胸郭をはずませて
      女があえぐ
       赤い舌の上で
         ひらりと揺れたのは

        魚
       の
        ひれ
         泳ぎだそうと
          懸命に
           動く

           誰もが魚を飼っているのだ
            湾曲した一対の骨の間
             僅かにくぼんだ
              薄い皮膚の下に
               それは絶え間なく
                泳ぎつづけている

                 海を目指して
                 人を歩かせる

                   力

                   だけどわたしの魚は
                 きを抜くとすぐににげようとするの
               女は私の手首をつかみ
             胸元へと押し付ける
           薄い皮膚のしたで
         暴れている

      魚の律動

    死ぬまで人の胸を動かしつづける
      魚が
       どうして逃げようとするのか
         問い詰めれば女は
          また赤い口を開いてあえぐ
     
           だってこれはわたしの魚だから
            およぎたくてしょうがないのよ
             こんなちっぽけな身体じゃ
               まんぞくできないんでしょう

                 だから押さえていて

                   さかな
      
                    を
                   わたしの

                    うみ

                     を

                あふれないように






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 著者 : 和禾  Home : 雨渡宮  図案 : maybe