告白は喉の奥
L.ニトロ



カムアウト


あなたに誕生日のメッセージを送って。
時間をおいて返ってきたレスを読んで。
…私って色男だなぁ…とか阿呆なことを思う。

…そうなんだよね。
私の性自認は、少なくとも女性を前にして女性のままではいられない。
女性として女性を愛する訳ではないからレズビアンとも言い難い。というか多分マイノリティ特有の嗅覚でもって感じるのだろう。私は純然たるビアンの方々に受けが悪い。いいんだけど。

想像してみてください。
…なんて言うつもりもない。
あまりにも想像できないと思う。
自認を裏切る肉体なんて。
身体がいつも私を裏切る。
前戯の極みから行為へと移れない。
或いは、男が私を抱く。

昔々、私は私の身体を受け入れた。
混乱の時期を経て、状況に静かに自分を馴染ませ、キレたように怒る男性自己を宥めて女に「成った」。
セクシャリティを弄び、女性性を剥き出しにしたり隠したりとひとり遊びを繰り返し、楽しむ。
誰も居なければ、可変の両性はある程度成立する。


それなのに。
相手が女性であったら、「抱けない」現実を突きつけられる。
相手が男だったら、何も知らず女の私だけを引きずり出して抱く。
最悪なことに、勘のいい男だと事後に気付くらしい。なにかは解らないまま。
戸惑う顔ももう、見たくない。


誰に何が出来る?
あなたが目の前に立った瞬間、私は不整合を起こして人知れず崩壊しているのに。
認めてよ。
あなたに私は救えないんだって。
それしか安寧はないんだって。

手を握ってくれなくていい。
「救われないままの私」を認めて。

2004年06月11日(金)
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