告白は喉の奥
L.ニトロ



とりあえず今、


あなたのことが好きなのかどうかすら、私には判らない。

メールを送ってみたり、携帯を鳴らしてみたり。
寂しいだけなのかもしれない。
羨ましいだけなのかもしれない。

なにか。
それでもなにか、話したいことがある時に、あなたを選ぶ理由は。
恋人のいるあなたでなければいけない理由は。
話がすごく合うとか、そういう感じでもなくて。
安心感の隅っこに、いつも違和感を残した会話なのに。

本当は私、あなたから離れたいんじゃないだろうか。


躊躇しながら誘うみたいに、触れた指先の理由も考えたくない。
期待したくなるような言葉の裏も、見たくないから。
気付かないでいたい。


ねえ私、拗ねてるだけ?

2004年04月30日(金)



同じ台詞。


ひとりでいたいと強く願う。
「なに拗ねてんの」と、別の口からもらう同じ言葉。
否定できずに「…そうなのかなぁ…」と返してしまうのは
私、素直なんだろうか。と思う。
答えは見つからないのだけど。

あなたの番号をメモリーから消した。
掛けようと思えば掛けられる保険付き。
そうするだけで、あなたからの着信は、名無しになるんだよ。
面白く、ない?

なに拗ねてんの。って、今度の声は私自身。


いいの。
不器用なの。
全がダメなら零の方が楽なの。

2004年05月01日(土)



飽和のまま、惰性で。


寂しい時、誰かといたいと思わないのは。
それでは寂しさを忘れることが出来ないから。
お前のは慣れるんじゃなくて、飽和なんじゃないのか。と言った人がいた。

そうだったのかもしれないし、そう言われてから、そういう手段もあると気付いてそうするようにしたのかもしれない。
寂しいとか苦しいとか、限界があって。
ただ、私が甘いだけなのかもしれないけど。
あるラインを超えると、無感覚になる。
正確には、無感覚に似た、ある一定の苦痛を惰性のように持ち続ける。
それ以上ひどくならないから、放っておく。

今、きっとその状態で。
こういう楽さを知ってしまったら、怖いじゃない。

ひとりでなくなるのは怖い。
浮き上がれば落ちる余地が出来るから。


私は余程寂しがりで、怖がりなんだろう。

2004年05月02日(日)



昔々…


例えば、

あなたが霧に包まれて一歩も動けなければ
雲に蔽われて陽光が見えなければ
風になって霧も雲も晴らそう

あなたが道に迷うのなら
道標となり行く先を示そう

あなたが自身を見失う時には
鏡となってあなたを映そう


それだけが私にできること
それが私の愛し方
あなたに触れることはなくとも

「だけど現在」

あなたが私を見失ってしまったら、
声すら届かない。


2004年05月04日(火)



解け合える、という、哀しさ


元気を、分けてもらおうと思ったんだった。
ひとりは弱いから。
ひとりじゃない人から、元気のお裾分けをとか、甘えたことを思って。


疲れていた二人で、心の深いところに触れてしまい。
触れて「しまった」などとは、あなたはきっと思わない。
何もかもが、私には哀しい。

あなたの言ってることを理解できることも、
それをあなたの恋人が理解できないことも、
そんなことは意味がなくて。
暗いところを一緒に歩ける人を探してなんかいない。
ずっと。
だけどあなたがそこにいたいなら、もしかしたら、
…あなたの恋人よりも私の方が、上手に手を引けるね。
一緒に歩いて、そうして、

…ゆるせるよ、あなたを丸ごと。存在ごと。価値観ごと。
意味がないね。
その方が楽だとしても、あなたは許してくれる人を探すわけじゃない。
その道が苦しくないとしても、私は暗いところを歩きたいわけじゃない。

なんの意味もないね。
あなたの優しさも、私の寛容さも。


出逢うのが遅すぎたの、かもね。
好きな人を幸せにしたいと思う。安らいでふたり、暮らしていきたいと思う。
誰も幸せにできないと思う。安らぎなど私を苦しめるだけだと知っている。
自分を信じていた頃なら、自分の方が理解できるという理由で、あなたを抱き締められた。


告白は喉の奥。
飲み込めず、吐き出せず。
幸福になりたいとすら、思えないんだ。

2004年05月05日(水)



消去法の幸福。


諦めているのが悲しいとか、
消極的がよくないとか、
なんとだって言えるだろう。

だけどどうして、ただ、
私では幸福にできないと知っているから。
「当たり前」とか「普通」とか「ありふれた」とか。
そういうものが本当はどんなに貴重で、手にしている人には当たり前でも、手に入れられない者にとっては、どんなにか憧れの対象で、絶対に手に入らなくて、努力とかそういうことでは補いきれないものなのか、知っているから。
私の彼女が私の子供を欲しいと思った時、私が彼女に私の子供を産んで欲しいと思った時。或いは逆の立場でもいい。
「その代わり」の何か、どんな素晴らしいものを二人で築けたとしても、代わりは代わりでしかなく、私達が本当に欲しいと思う、私達の子供を誰も授けてはくれない。

無責任な励ましを口にする人達は、何も与えてはくれないのだから。

せめて、あなたが幸福になれる可能性に賭けてはいけないだろうか。
せめて、私に会う時ぐらい悩みから遠く離れ、安心していて欲しいと願ってはいけないのだろうか。
笑っていて欲しいと、それだけでいいと、
あなた自身を望まないことが悲しいだろうか。

欲望のままに、苦難も悩みも共に、ふたりになることを選ぶことが、
選ぶことだけが、素晴らしいだろうか。


幸福でいて欲しい。
片思いを続けるという選択が、エゴイズムでも。


その場凌ぎでも何かの代わりでも慰めでも暇潰しでもいい。
落ち込んでいても泣いていても、笑っていても幸福でも不幸でもいい。
その声を聞かせてくれさえすれば。

あなたが私を思い出したと知るだけで、
ささやかな幸福の花がここに咲く。

2004年05月06日(木)



一方通行の扉


要らないから。

好意以上とか。
甘え以外とか。
理解とか。

でも媚びてみせて。
都合よく悲しい時だけ甘えに来て。


混じり合う気はないんだ。もう。
…懲りてるのかもしれない。
混じり合いたいと思うほどに、別の人間だって気付くことに。

だからもう、両想いは望めない。


今のまま、薄々私の気持ちに気付きながら、「自意識過剰だろうか」と疑いながら、
気紛れに声を聞かせて。

誰かを好きでいないと生きられないのに。
ひとりじゃなきゃ生きられない。

2004年05月07日(金)
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