今日もガサゴソ
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中学生の女の子が 人生の意味って何ですか、などと 青臭い疑問を放ったところで 納得のゆく答えなどあるはずもないよね。
12歳のとき 耳の手術のため二度目の入院をしたとき 家や家族から離れました。 三週間ごとに髪を剃って手術を繰り返しました。 当時は、全身麻酔をすると血管が開いて 出血が手術の妨げになるからといわれ 局部麻酔で処置をうけました。 頭蓋骨をハンマーとノミを使って削るようなことも してくれるので 生やさしい体験ではなかった気がします。 毎日の治療も、耳の後ろに穴を開けたままにしてあって ギュウギュウガーゼを詰め込まれるので めまいはする吐き気はする、痛いのなんの。 そんなことを半年も続けたので 気が変になりそうでした。
入院中、ベットの上でできることといえば 手紙を書くことと本を読むことくらいでした。 入院するとき持っていた本は デュマの「三銃士」(旺文社文庫!)と新約聖書だけでした。
借りられる本は借りたけれど 細菌の感染などの事情で他の病棟や患者を訪問することを 禁じられていたので、ひたすら本に飢えることになりました。
退院してから しばらくすると、猛烈な空虚で冷たい感覚に襲われてしまいました。 胃のあたりに大きな穴が開いて スウスウ風が抜けていくようでした。
何か美しいものを見たいと思いました。 純粋で、美しいもの。
それが何なのかわからないのだったのだけれど 誰かが本に書いていてくれるかも知れないと 思いついて、とにかく読むことを始めました。
ソルジェニーツインの「ガン病棟」を読んだとき 自分の居た場所のことがわかりました。 自分だけが辛かったんだと あまり思わなくなっていました。 中学二年生のときでした。
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