全てフィクションです 【DRESS】 - 2003年12月16日(火)歩道でカラオケ屋のビラを受け取るその男の顔。 間違いないと思った。 この前とは雰囲気の違う長いタイトスカートをはいていた。 ビラ配りの男の子は彼には何の興味も無いように 次の歩行者にビラを差し出していたが 道行く人々の視線は、彼に釘付けだ。 化粧も無しにただ女性服を着る彼の姿が異様なのだろう。 通り過ぎざまに振り返ってまで彼の顔を見ようとするものまでいた。 まるで、昔の自分を見ているような気分だ。 中学生の頃に女装で外を出歩いたときに木戸に見られたあの夜。 それから奇異の目でクラスメートに馬鹿にされた日々を。 通り過ぎた若いカップルが、その男を見て「キモイ」と罵声を浴びせた時 僕は思わず彼の肩を叩いてしまった。 「はい?」 と振り向いた彼の顔にはあからさまに動揺の色が窺えた。 無理も無い。この前は僕の方からは彼を見ていたが 彼に話しかけたわけでもなく、当然彼は僕の存在など知らないからだ。 やっぱりいきなり話しかけたのはまずかっただろうか。 あの店にに通って再会を待ったほうが良かっただろうか。 しかし、彼の口から出た言葉に、今度は僕の方が驚いたのだ。 「藤沢・・・」 -
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