全てフィクションです 【DRESS】 - 2003年11月12日(水)自分の口をついて出てきた言葉にはっとした。 思わず自分の言葉を遮る様に口に持っていった手を見て 彼女も気まずい顔をして目を逸らした。 そうした所に丁度同僚たちがこちらの席へ戻ってきたので 僕たちはまた何事も無かった様に酒を飲んだ。 「おいおいおい!お前オカマとなんかいちゃついてんなよ!」 「まっ失礼ね!オカマに向かって!」 変わらず騒いでいる同僚たちとその相手をする彼女。 彼らはすっかり僕の事など眼中に無い様子だ。 それを幸いに、僕はあの女装の男を見やった。 数年前までは僕も同じ様にああやってスカートをはいた。 女の子の様に横に流れる髪をブローした。 薄いピンクのリップクリームを塗った。 華奢だった足に纏わりついていたスカートの裏地。 その男の姿を眺めていると、その昔の思い出がどんどん溢れて来た。 今は瑤子も由希も高校生で きっと今流行の可愛い服を着ているに違いない。 一緒に住んでいた頃なら僕も同じくその服に袖を通せた。 だけど今はどうだ。 着たい服も着られないまま、我慢しているだけだ。 僕は、あの男に羨望のまなざしを送っていた。 -
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