...ねね

 

 全てフィクションです

【DRESS】 - 2003年11月06日(木)

しばらく僕達は話をしていた。
同僚などそっちのけで真剣に頷きながら聞く僕に
彼女は自分の生い立ちをかいつまんで僕に話した。
どうしても男性しか好きになれなかった事、女として生きていく決心をした時の事
親に泣いてすがられた事、初めて女性用下着を買いに行った時の事など
冗談も交えて時には笑い、時に遠い目をしながら話してくれた。
たまに自分にリンクする内容もあり、僕はますます話にのめり込んだ。

「ほらあそこ、見てみて」
彼女の指差す先にいたのは、女物のスーツを着た人だった。
女装はしているが化粧も無く髪もそのままで普通の男性のようだ。
「あの人も・・・その、オカマの方なんですか?」
失礼な事を言いやしないかと言葉を選んで尋ねた。
いいえ、と彼女は首を振った。

そのスーツの男性は、彼女の昔からの友達だそうだ。
学生の頃、思い余って彼女は親友の彼に自分のことを打ち明けた。
すると彼も自分のことを彼女に打ち明けたという。
彼は、オカマではなく女装マニアだった。

「僕と同じだ」

思わず僕は呟いていた。


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