...ねね

 

 全てフィクションです

【DRESS】 - 2003年10月09日(木)

就職してしばらくは下宿にそのまま住んでいたが
仕事に慣れ、少し貯金が出来たところで自分の部屋を借りた。
両親には実家に戻ってくるように言われたが
一人で生活する気楽さが身についてしまっていたし
(と言っても食事に関しては上手くやる自信は無かったが)
ここらでちょっと自立した暮らしをしてみたかった。

「女子高生が二人もいちゃウルサクて疲れちゃうよー」

そう言って笑うと、居間にいた妹たちに母がそう伝え
「なによーもー失礼しちゃう」
と電話の後ろから妹達のブーイングが飛んできた。

女装は・・・
家を出て妹たちと離れてしまってからは全くだった。
なにせ僕は自分で洋服を用意する勇気すらなかったから。
どんな顔をして女物の服を買いに行けばいいのか分からない。
それに今の僕が果たして女物の華奢な服を着られるかどうか
それも自信が無かった。
どう考えても中学生の頃に比べれば格段に背は伸びているし
体格だって良くなっている。
ウエストだって、はっきり測ってはいないが
通勤スーツのサイズを考えれば普通サイズの女性物が入るわけがないのだ。

なによりも、すっかり男らしくなってしまった僕が綺麗な服を着ても
誰も「可愛い、綺麗」となど言ってくれないんじゃないか、
僕はそれが一番怖かったのかもしれない。



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