ぱたぱたぱた…と走った後にドンドンと扉を叩く。 「おーきーてー!」 うーんとかはーいとか聞こえるけど、一向に起きてこない部屋の主に業を煮やして勢い良く扉を開けた。 「起きてー!起きてー!お仕事お仕事っ!」 深夜25時。 突然繋がったホットライン。 私だけではちょっと勤まらないから。
乱暴に毛布を引っぺがして、パンパンパンパンっと頬を叩く。 「しーーごーーとーー!!!」
8月19日深夜。 24時を過ぎたころから呪竜が増え始めた。 ウチみたいな小国に支援要請なんて来るはずないと思ってたのに。 夜勤組を待たせておいて同盟を結ぶ。 支援指示の準備をしながら眠そうな領主を動かす。 要請のメモを何度も見直して、上からの呪竜討伐指示を待つ。
その、間。 「幹部になるってこういうことなんですねえ」 「ですねえ。昔」 昔。 何もできなくて見ているだけだった昔。 とにかくただ走り続けた昔。 「あの頃よりは落ち着いてますよ、これでも」 「ですか」 「だって指示待ちですもの」 各国から入ってくる情報をただ眺めている。 指示された仕事を終えてしまえば、後は次の支持を待つだけだ。 28時を過ぎ、呪いの丘ではまだ竜が増え続けている。 でも島民のほとんどは眠ってしまっているだろう。 「もう今夜は指示が来ないかもしれませんね」 「うーん」 「あ、あなたはもういいですよ。私はもう少し待って、指示がなければ寝ます」 「ちゃんと寝ましょうよ」 「ちゃんと寝ますよ」
彼を扉の向こうに見送って、もう一度確認する。 ああ、指示が来てる。 上層部も大変ですねえ、こんな時間まで。
国内に指示を出してから、国際への報告を代理でしてしまおうかと迷った。 報告だけは…というか国際の場だけは領主にしてもらうことに決めている。 逡巡していたら、見知った顔を見かけた。 ああ、彼もまだ起きているのか。 そうだね。彼の国は今、囲まれている。 互いに僅かな言葉で労いあって、でもこんな時間に話をするのもきっと最後だねって笑い合って。
私は窓の向こうの朝日の中で、煙をあげている世界を見ている。
と、いうわけで、なんとなくこんな感じでした。 寝てないのは知ってましたが、領主にはちょっと気の毒でしたねえ(笑)
|