いぬぶし秀一の激辛活動日誌

2009年10月14日(水) 平成20年度決算認定反対討論

 改革110番犬伏秀一は、只今上程されました、第80号議案平成20年度大田区一般会計歳入歳出決算の認定に反対の立場から討論をいたします。
私が議員になって、早くも11回目の決算特別委員会を迎えることとなりました。その間、区政の諸問題については、常に是々非々で取り組んでまいりましたが、最終的な決算認定については、様々な問題提起をしつつ賛成の態度を表明してまいりました。
 しかし、今回は、あまりにも変わらない硬直した「お役人社会、大田区」に楔を打ち込む意味で、あえて反対をいたします。
本年8月に行われた総選挙の結果、国政においては政権交代が起き、各官庁は大混乱に陥っております。マニフェストに頼り過ぎたファシスト的な予算削減や政策変更には、大きな憤りを覚えますが、なんでも思い通りに進めてきた霞が関の官僚や官庁、公益法人には、まことに結構な緊張感を与えてくれたとも言えましょう。国民の「変化」を期待する結果だとマスコミは伝えていますが、無責任な報道に誤魔化された成果と、長い間政権を司っていた自民党のエラ−とフア−ボールのおかげである、と思っているのは、私だけではないはずです。
 わが大田区においても、一昨年20年間続いた西野区長から、松原区長への「政権交代」が行われました。こちらも、西野前区長の出馬断念決定のタイミングと後継指名の異常なまでの遅さ、自民党内のゴタゴタ等がもたらした結果と分析するのが適当かと思われます。しかし、国政の「政権交代」というフレ−ズと同様に、松原区長自ら選挙中に訴えておられた「民間出身」という言葉に、多くの有権者が変化を期待したことも事実でありましょう。
その結果はどうだったか。私が、再三指摘している、院政区政、さらには側近人事、強引なまでの施策決定等、到底「民間出身」に託した区民の期待に応えるものではありませんでした。
 庁舎内では、誰が主流派か、がささやかれ、反体制派と思われる言動の密告が常態化し、オリンピック開催地に手を挙げるような、先進的都市の基礎的自治体とは思えない実態となってしまいました。当然の帰結として志ある現場職員は士気を失い、職場規律は低下し、一昨年来、服務事故や、個人情報紛失などが多発したのです。
 また、最近では、エレベ−タ−からの発煙事故の際、警報器の電源が切られていた為消防への通報が相当遅れて、消防署より警告を受けるという失態も起こしてしまいました。さらには、この教訓が活かされず、先日の3連休には、煙探知器の誤作動警報を15分以上も区役所防災センタ−が放置する、という誠にお粗末な事件をも起こしてしまいました。本丸を守れない大名が領地、領民を守れるはずがありません。いずれも危機管理意識の欠落が原因です。
 私は、毎週火曜日の早朝、経営者の勉強会に参加しております。そこで、様々な立場の講師が手を変え品を変え訴えていることは「会社は経営者次第」ということであります。すなわち、経営者が変われば会社が変わる、ということでありましょう。大田区の経営者は、松原忠義区長であります。誰がどう行動しようが、院政であろうが、そうなのです。松原区長は長い間、区議会議員、都議会議員をお勤めになり、謂わば個人商店主でありました。一昨年、区民の信託を得て区長に就任されましたが、突如、大企業の経営者となられた訳であります。戸惑いもあるでしょう、初めて経験されることも多かったことでしょう。しかし、区長の言動で組織が動き、その可否により組織は良くも悪くもなってしまうものであります。その意味では、区長として、経営者として初めて骨組みから取り組まれた平成20年度決算には「民間出身」との、フレ−ズはまったく感じられないのです。であるばかりか、より一層、お役人的な決算内容になっていることは、誠に残念至極でございます。首長たる区長の「想い」が、お役人の「想い」に打ち消された感すらあるのです。
 次に本決算につき若干意見を申し述べます。
区の財政状況を推しはかるもっとも簡単な数字は、区債残高と基金残高でありましょう。平成20年度末の区債残高、つまり区の借金の額は635億8700万円余り、反面基金残高、わかりやすく言えば定期預金残高は1072億2151万円余りと、借金の2倍近い基金残高を誇っております。これは一応、健全財政として評価できるものの、ビジョンなき基金積立には異論を唱えるものであります。また、監査意見にもあるように、基金の積立、取り崩しに関する資金計画がないため、せっかくの巨額の基金の運用益がきわめて低いことも「民間」ではあり得ないことでしょう。
 大田区の取りっぱぐれである「不納欠損額」も問題です。平成20年度の特別区民税、などの諸税の不納付欠損額は4億5百万円であり、国民健康保険の15億円を加えると、実に約20億円が「取りっぱぐれて」いることになるのです。これも民間企業ではあり得ない数字でありましょう。徴収努力の結果、年々、この割合は低下する傾向にはありますが、公平感からも問題です。自らの会社の売上売掛金の回収を必死に行う、という発想が必要です。
 昨年起こった、羽田中学校改築工事の契約拒否の案件も不思議でした。官製談合、いや業者の談合破り排除だ、など様々な憶測が飛びましたが、真相は藪の中になってしまいました。昨年度に行われた「入札改革」を標ぼうする電子入札による一般競争入札の落札率99%以上の案件、つまり大田区の予定価格ドンピシャリの割合は51%にもなっています。議決が必要なより高額な案件になると、この割合はさらに高まるのです。はたして、これが公正な競争の結果でありましょうか。区執行部は、このような数字を見ても、相変わらず「適正な競争の結果」と、あきれる答弁、認識を示しているのは、区長がどう変わっても、お役所は変わらない好例かもしれません。
 社会体育費の大田総合体育館の建設にかかわる公有財産購入費も問題です。当初予定になかった隣接地を、更地としてではなく、解体するマンションの建物まで評価して購入したのは、あまりにもやりすぎでした。いったい、いかなる力学が働いたのでありましょうか。
 縷々、意見を述べましたが、今、大田区役所を含め、多くの官公庁に欠落しているのは、「自分のお財布」感覚であります。自分が自分のお財布から支出するとしたら、このような使い方をするだろうか、との認識が欠落しているのです。今ある「自分のお財布」感覚は、まるで公金を自分のお金のように、好き放題使う「お財布」でしょう。他の自治体では、組織ぐるみ、摘発すべき警察までもが公金で裏金を作っていることが暴露されました。幸い、大田区では、そのような事例は発覚しておりません。が、目的のない土地購入、意味不明な調査、ビジョンなきまちづくり、その場限りの施策など、その公金執行の理念を疑う事例が多数散見されるのは、極めて残念なことであります。
 ところで、この決算審査において、議会の空気は以前といささか変化してまいりました。それは与党会派と呼ばれる方々が、様々な問題につき反対や異論とも思える意見を表明されたことであります。私は、再三、2元代表制の地方議会に与野党は存在しない、と、制度上、理論的には当たり前のことを訴えてまいりました。そのことが、少し具現しはじめているのかな、と些か安堵しております。
 松原区長の任期も、そして我々議員の任期も、残すところ1年半を切ってしまいました。どうか、決算特別委員会で提起された様々な問題点を、区長は真摯に受け止められ、「お役人の目」ではなく、「民間の目線」で、さらには、それぞれの事業課の各級職員が「自分のお金で行うなら」という観点で、松原区政の今任期最終となってしまった来年度予算の編成にあたられるよう強く要望し、あえて今回反対を表明した私の討論といたします。




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