いぬぶし秀一の激辛活動日誌

2009年08月27日(木) 陸上自衛隊生徒12期生13名殉職by内閣委員会

 昨日の日記でも書いた「少年自衛官殉職事故」について詳細な国会議事録を発見した。殉職された先輩の追悼と、17歳で国防の任務で命を失った少年達がいたことを忘れないためにここに全文を公開する。


第059回国会 内閣委員会 第4号
昭和四十三年八月二十三日(金曜日)
   午前十一時二十六分開議
 出席委員
  委員長 三池  信君
   理事 井原 岸高君 理事 浦野 幸男君
   理事 藤尾 正行君 理事 大出  俊君
   理事 木原  実君 理事 受田 新吉君
      荒舩清十郎君    淡谷 悠藏君
      稻村 隆一君    武部  文君
      浜田 光人君    安井 吉典君
      永末 英一君    伊藤惣助丸君
      鈴切 康雄君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣
        (防衛庁長官) 増田甲子七君
 委員外の出席者
        警察庁刑事局保
        安部長     海江田鶴造君
        防衛政務次官  三原 朝雄君
        防衛庁参事官  江藤 淳雄君
        防衛庁長官官房
        長       島田  豊君
        防衛庁防衛局長 宍戸 基男君
        防衛庁人事教育
        局長      麻生  茂君
        防衛庁経理局長 佐々木達夫君
        防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君
        防衛施設庁長官 山上 信重君
        運輸省自動車局
        業務部長    渋谷 正敏君
        専  門  員 茨木 純一君
    ─────────────
本日の会議に付した案件
 国の防衛に関する件
     ────◇─────
○三池委員長 これより会議を開きます。
 国の防衛に関する件について調査を進めます。
 この際、増田防衛庁長官より発言を求められております。これを許します。増田防衛庁長官。
○増田国務大臣 去る七月二日発生いたしました陸上自衛隊少年工科学校生徒の訓練事故において、前途ある純真なる少年生徒十三名のとうとい犠牲者を出しましたことは、まことに遺憾にたえませんことをここに表明いたします。この事故について、その概要を御説明申し上げます。
 少年工科学校三年在学の生徒の一部七十八名は、七月二日午後一時から、同校内において、当日の先任教官田村一尉の指揮のもとに教官高林二尉及び助教四名の指導により、雨中、野外の戦闘各個訓練を実施していたのでありますが、田村一尉は午後二時ころ、臨時に、同校内のため池、通称やすらぎの池を川と見立てて、夜間の渡河動作訓練を行なうことを決心し、午後二時三十分ころ渡河を開始したのであります。
 そのときの生徒の服装は、作業衣に弾帯をつけ半長靴をはきM1ライフル銃を背負った姿でいわゆる乙武装であり、隊形は池の西側寄りに南北に展張したロープを境に東側に三区隊の主力、西側に四区隊の主力がおり、北側の岸辺に婿集しておりました。生徒は田村一尉を先頭に、やや蛸集した隊形のまま池の北側から一斉に水に入りました。そして先頭グループが池の中ほどに達したころからおぼれる者が出始め、生徒の相当数が中ほどに差しかかったとき、おぼれる者がふえ、泳ぎに困難を感じて北岸に引き返そうとする者、近くの西岸に泳ぎ着こうとする者、ロープ伝いに岸へたどり着こうとする者等が続出したのでございます。
 教官、助教は事態の重大さに驚き、直ちに岸にいた者に溺水者の救助の指示するとともに、みずからも池の中に入り救助活動に全力をあげました。訓練実施部隊を主とするこの初動救助活動により、事故発生後五、六分でおぼれかかった八名をはじめ、水没直前にあった生徒二名が救助され、水没直後の一名が発見されました。その後急を聞いてかけつけた副校長をはじめ学校幹部、教官、生徒等が逐次事故現場に到着し、海上自衛隊横須賀地方隊の水中処分隊員の応援も加え、総勢約五百名をもって救助活動を続行し、午後四時二十五分ころまでにさらに濁水者十二名を逐次発見、これらの者について直ちに医官、職員、生徒による人工呼吸、注射等の応急措置を行なった後、病院に後送してさらに手当を加えたのでありますが、そのかいなくついに生徒十三名が殉職いたしたのでございます。
 当時、私は福岡県において第一報を事務次官から聞き、急遽帰京し、詳細を知ったのでありますが、事の重大性から自衛隊の最高指揮監督者たる総理大臣に御報告とおわびを申し上げ、同時に報道機関を通じて御遺族と国民の皆さまにおわび申し上げる一方、直ちに庁内に事務次官を長とする訓練事故臨時調査委員会を設置して事故の原因の究明と将来の事故防止対策の検討を命じ、さらに御遺族への善後措置に遺漏のないよう指示いたしたのであります。
 事故の原因につきましては、私もみずからしばしば現場におもむき検討いたしたのでありますが、指導に当たった教官が学校の訓練基準にない不適当な訓練を実施したことが根本原因でありますが、なおかつ、訓練指導等に適切を欠いた諸点が認められたのであります。すなわち、当日訓練途中において訓練計画にない渡河訓練を決心し、これを実施したため、当然必要な事前の準備に周到さが欠けておりました。しかも現場における安全管理措置も不徹底であり、着装して泳いだ経験て全くない生徒に半長靴をはいたまま銃を持たせて泳がせるという訓練にもかかわらず救命胴衣、浮き輪、ボート等救命資器材及び救助要員の配置がほとんどなく、また、教官の現場指導も発進の統制、隊形の規正等において不適切かつ不徹底でありました。また学校当局の安全管理に関する認識が不十分であり、当該池についての危険等度の認識が甘かったため、この池における危険防止等の安全措置がとられていなかったのであります。
 なお、今回の訓練に類似した訓練が過去にこの池で実施されていたにもかかわらず、上級幹部がその実情を把握しておらず適切な措置がとられていなかったのであります。
 私は、常日ごろ人命尊重を旨とし、健康及び衛生に留意しつつ教育訓練に励むよう指示しておりましたが、今回の事故を機に、さらに安全保持の見地から科学的合理的にしてかつ具体的な方策の検討を命じたのであります。すなわち、将来の訓練事故を防止する対策としましては、人命尊重に徹し、計画外で、かつ危険を伴うような訓練は禁止することといたしました。なお、安全管理の徹底を期するため今月から私の特命による安全監察を実施するとともに部隊等にも安全監察を行なわせることにしております。部隊及び学校においては、安全管理に関する指示通達の徹底をはかるとともに、安全管理教育を強化してまいる所存でございます。水上訓練については、危険予防措置の徹底をはかり、救命資器材の総点検及び整備を行ない、駐とん地内の用水池、ため池等での遊泳を禁止し、人口呼吸法を含む水難救助教育を推進していきたいと考えております。
 関係責任者の処分につきましては、不本意ながら七月三十日、十四名に対してこれを行なったのでありますが、校長高木陸将補は減給二月五分の一、教官田村一尉は停職四十日、教官高林二尉は停職十日、その他減給三名、戒告一名、訓戒一名、注意六名となっております。
 善後措置につきましては、去る七月五日殉職生徒隊員の葬儀を少年工科学校において学校葬としてとり行ないましたが、私もこれに参列し、殉職生徒隊員の霊前にぬかずいて最善を尽くすことを誓い、その後全御遺族を弔問いたしました。殉職生徒隊員の純粋なる行動に対しては勲八等瑞宝章が授与せられ、さらに、二階級特別昇任が行なわれました。
 殉職者御遺族に対しては遺族補償一時金、葬祭補償、退職手当のほか賞じゆつ金が支給され、そのほか防衛弘済会弔慰金、隊友会見舞い金、団体生命保険金が給付されております。なお、各地の地方連絡部長をして今後における御遺族の御相談相手たらしめております。
 以上御説明申し上げた次第でありますが、私自身、親が子を愛する心情をもって全自衛隊員を指導監督し、今後かかる事故の絶滅を期し、もって国民の皆さまの御期待に沿いたいと存じます。


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