パラダイムチェンジ

2006年07月28日(金) コンテンツ(その2)

ということで「コンテンツ」について引き続き考えてみる。
これは私の勝手な思い込みかもしれないが、最近、「コンテンツ」と
いう言葉が飛び交う時って、ビジネスに結びついていわれる事が多い
ような気がする。

すなわち、魅力的な「コンテンツ」とは、商品価値が高い(人目を引く
事ができる)作品について言われることが多いような気がするのだ。
加えて、ビジネス的には、メディアミックスというか、その魅力的な
コンテンツを核にして、多種多様の商品展開や広告展開ができれば
いうことがない、みたいな感じで。

でも、その一方で言うならば、そうやって商用利用の部分ばかりに
目が行き過ぎて、「コンテンツ」の寿命自体は短くなっている様な気も
するのである。
すなわち、「コンテンツ」として注目された分、消費され忘れ去られる
のも早くなっている気がするのだ。

最近、たとえば消費しつくされた感のある魅力的だったコンテンツと
しては、「踊る大捜査線」シリーズだったりとかね。
まあ、10年近くも引っ張れたことを考えれば、制作した側も御の字
なのかもしれないけれど。


ちょっと前、「水曜どうでしょう」ファンの知り合いの人と、何で
「水曜どうでしょう」は全国放送しないんでしょうかね、という話で
盛り上がった。

「水曜どうでしょう」というのは、北海道の地方TV局で制作された旅
バラエティ?番組なんだけど、全国の地方局を中心に放送されること
で全国に熱狂的なファンを生み出した番組。

この番組のMC?だった大泉洋はこの番組をきっかけにしてスタジオ
ジブリの宮崎駿の目に留まり、声優としてのデビューを果たし、
今ではドラマでもよくみかける様になっている。

で、その「水曜どうでしょう」、それだけ人気のある番組であるにも
関わらず、東京ではほとんど放送されていないのだ。(過去に何回か
放送されたことはあるのだが、レギュラーで放送はされていない)

で、なぜなんでしょうね?という話をしながら、ふと、そこには大手
広告代理店が絡んでないからなんじゃないかな、と思ったのである。

水曜どうでしょうという番組自体には、それ単独のイベントが開かれ
るほど、熱狂的なファンも多いし、おそらくは東京で放送されれば、
今以上に人気を博す力があるほど、魅力的なコンテンツだと思う。

そしてそんなに魅力的なコンテンツをおそらくは大手広告代理店が
見逃すはずはないので、おそらくは魅力的なオファーは、日々制作
サイドにも舞い込んでいるのかもしれない。
だけど、おそらくは制作サイドが、そのオファーには乗らなかった、
というのが、全国放送されない理由の一つなのかもしれない。

私の知り合いの人は「ファンは今のままの水曜どうでしょうを応援し
ているから、制作サイドも裏切れないと思っているんじゃないかな」
と言っていたし。

つまりは、単に人目を引くけれど、寿命の短い「コンテンツ」ではなく
て、見る側も制作される側も愛情を込めた「作品」になっているんじゃ
ないのかな、と思ったのだ。


で、そういう目で見ると、阪神電鉄買収で、村上ファンドのムラカミ
さんが、上手くいかなかった理由も考えられるんじゃないのかな、と
思うのである。

つまり、ムラカミさんにとって「阪神タイガース」っていうのは、
商売上魅力のある、だけど消費してしまう「コンテンツ」に過ぎなかっ
たのに対して、熱狂的なタイガースファンにとっては、それは消費
されないもの、商売抜きにして大切なものだったんじゃないのかな、
と思うのである。

そこをムラカミさんが見誤ったのが一番の失敗だったのかもしれない
なあ、と思うのだ。

後は、昨年起きたエイベックスの「のまねこ騒動」も、コンテンツ(=
消費しちゃうもの)と、モナー(消費されないもの)の争いだった様な
気がするし、また最近だと、亀田三兄弟のメディアでの取り上げられ
方っていうのも、どこか商品価値としてのコンテンツの匂いが感じ
られる気がするのである。


でね、そう考えたときに今、連敗街道まっしぐらの巨人って、親会社の読売新聞や、日本テレビにとっては、果たして単なるコンテンツか
そうでないのか、って結構微妙なラインじゃないのかなあ、という
気もするのである。

今までは、部数拡大や視聴率獲得の原動力という魅力的な商品で
あったことは間違いないと思うんだけど、今のように人気に陰りが
見えてきて、だんだんと少なくとも視聴率で足を引っ張るお荷物に
なってきた時に、彼らの本心があらわになってくるような気もして。

阪神タイガースと巨人を比べたときに、今人気に差があるように見え
るのは、コンテンツとして消費してしまったかしてないかの差にある
ような気もするのだ。
もしくは、単なるコンテンツ、消費されるものを超えられるかどうか
が一つの境になるのかもしれない。

ということで、もう少しだけ続きます。


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