パラダイムチェンジ

2006年07月16日(日) 明日の神話



日曜日、汐留にある日テレまで、岡本太郎の「明日の神話」を見に
行ってきた。
「明日の神話」は、広島・長崎の原爆をモチーフにした、横30mもある
壁画で、メキシコのホテルの為に描かれたのがそのホテルが倒産して
しまい、その後行方のわからなかったらしい、「幻の作品」であり、
なおかつ大阪万博の太陽の塔と並び、岡本太郎の最高傑作である
らしい(以上、日本テレビのWebサイトより)

それが期間限定で、日テレの地下1階に展示されているらしいので、
夏休み前に行ってみよう、と思ったのである。
ちなみにこれが初めての汐留(シオサイト)だったんだけど、新橋駅
から徒歩数分で着くくらい近所でした。

日本テレビは、今年の夏は「Be TARO」をキャッチフレーズに、岡本
太郎をフィーチャーしていて、その裏には糸井重里の影がちらほら
と見えるんだけど、岡本太郎と言えば、私たちの世代にとっては、
「TVで見かける変なおっさん」であり。

だけど、この壁画にしてもそうなんだけど、この色の使い方とか、
構図とかは、岡本太郎にしか描けないものだよなあ、と思うので
ある。
ピカソとはまた別の意味で、迫力を感じるというか。
個人的にはピカソが平面的であるのに対して、岡本太郎の絵は立体的で、浮かび上がってくるように感じるのだ。



かと思うと、絵の端っこの方には、こんな感じの今でいう萌え〜な
絵が描いてあったりするのも微笑ましいというか。


個人的に、岡本太郎のエピソードで一番印象に残っているのは、
岡本太郎のパートナーであった岡本敏子とよしもとばななの対談本、
「恋愛について話しました」の中にあった、こんなエピソードである。

 アナウンサーが男の子に「お母さんとどんな話するの?」と聞いた
のね。そうしたら「話なんかしないよ。言うことはわかっているんだ
から」と言ったの。

 そうしたら岡本太郎さんは猛然と怒り出して、「わかっとるとは
何だ。おまえさんたちがそんな生意気な口をきくようになるまでに、
その一人の女が、どれほど自分の命、やりたいこと、いろんなことを
抑えて、犠牲にして、おまえさんたちのためにやってきたかわかって
いるのかッ。

まあおまえさんたちが、そんな生意気な口をきくようになったのは、
お母さんも悪い。本当に人間として、人と向き合わないで、子供は
子供で、相手はお母さんなんだから、やってくれるのが当たり前だ、
というふうになれ合って、母親は母親で、子供なんだから何しても
いい、自分のものだみたいにしてなれ合って、そういう不潔な関係を
やっているから、そういう子に育ったんだ。

それはお母さんも悪いけれども、もう十いくつになったら、ちゃんと
した一人前の人間なんだ。自分のそばに、一番身近にいる女の人が、
どんな思いを持って、どんな一日、一日を生きているかというのが
見えないはずはない。それを見ていないというのは、おまえさんたち
が鈍いんだ、ダメなんだ。それは母親も悪いけれども、それだけの
男になったら、そばにいる女が、どんな思いで生きているかという
ことをちゃんとわかるべきだ」
というふうにすごく怒っているのね。

 そうしたら、彼らは初めはきょとんとしちゃって、「このおじさん
は何を言ってるんだろう」と思っていたのが、そのうちにだんだん
真剣になってきて、身を乗り出して聞いて、よかったですよ。
 そういうふうに、ちゃんと向き合わなきゃね。


この岡本太郎が怒った相手というのが、小学生くらいの男の子たち
らしいんだけど、その中に一人だけ何故か交じっている岡本太郎の
いるTV番組、しかも至極まともなことをいう岡本太郎の姿というのも
見てみたかったなあ、と思うのだ。

ついでに最近のリセット症状群にかかっている若者たちにも、
真剣に向き合ってくれたらよかったのにね。


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harry [MAIL] [HOMEPAGE]

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