パラダイムチェンジ

2005年02月20日(日) ほりえもん

ライブドア社長のほりえもんが、相変わらずTVで何かを必死に訴えて
いる。
それがいまいちよくわからない。
というより、別にライブドアが勝とうが、フジテレビが勝とうが、
多少の影響はあるだろうけど、そんなに興味はないんだけど、どうやら
世の中はそうでもないようで。
というより、誰にとってもどっちでもいい問題だからこそ、これだけ
盛り上がっているのかもしれないが。

で、個人的にわからないのは、果たしてほりえもんは本気で、ニッポン
放送の株の35%を取得してフジテレビの公開買い付けを阻止して筆頭
株主になりさえすれば、フジテレビが白旗を揚げて恭順して従うんだと
思っていたんだろうか、という事である。

この一件が彼にとって念願だったことは、今までの彼の言動を振り返っ
てみるとよくわかる。江川紹子とのインタビューでも経済紙を持ちたい
と語っているし、プロ野球参入に失敗した後でも、親会社ごと買って
しまえば自然と球団を持つことになる、なんて語っていたのである。

彼のフジサンケイグループ再編に関するビジョンは、この数日間で
様々な形で目にすることができるようになった。
2月19日付の東京新聞にも載っていて、例えば、音楽配信事業をにらみ
業界再編のため、ポニーキャニオンは他社と合併、また産経新聞は、
今のままでも業界5位なんだから経済紙に特化して日経新聞のライバル
にする、などなど。

その意見は、おそらく今後を考えれば妥当なものなのかもしれないし、
しかも彼は業界再編を自分の手で成し遂げたい(結果としてライブドア
のブランド力を増したい)というのが、彼の野望なのかもしれない。

でも、それはフジサンケイグループが全面的にその条件を呑まない限り
単なる画に描いた餠、である。
それがどんなにすぐれたビジョンであったとしても、それを実行に移す
側が彼の思惑通りに動かない限り、実現性は乏しくなってしまう。

という事で最初の疑問に戻るのである。
彼は本気で、ニッポン放送の経営権を握れば自動的に彼のビジョンが
実行される、と本気で信じているんだろうか?
その末端にしてみれば、今までの自分たちの業績を否定されたり、
更なる合併などで職場環境が変わることであるのに。

これが例えば球団消滅の危機にあった近鉄や、今はもう落ち目になりつ
つある地方競馬であるならば、彼の知名度、資金力、そしてIT導入に
よる効率化と市場の拡大に期待をして、諸手をあげて歓迎するのかも
しれないが、フジサンケイグループの場合、経営は多少苦しいのかも
しれないが、決定的に何かがダメなわけではない。

そして人間は、自分が順調に推移している時に、他人からアレコレ言わ
れるのを好まない。そういう場合、大抵の場合は余計なお世話といって
煙たがられてしまう。

つまり、彼がどんなにすぐれたビジョンを持っていても、それが相手と
共有されない限り、思ったとおりに実行されることはないと思うので
ある。
そしてついでに言えば、本当にすぐれたビジョンというのは、そういう
個人の持っているビジョンが全体で共有されることで、誰が生み出した
わけでもなく、もっとすぐれたビジョンへと変化していくんだと思うの
である。

それは果たして今後彼が50%超の株式を取得して、ニッポン放送を
完全子会社化すれば実現できることなんだろうか。
個人的には、金さえ握ればすべてが実現するとはあまり思えない
のである。

もしも、彼のビジョンが受け入れられるとすれば、それは(たとえ誤解
であっても)彼の言うとおりにしていればおお、なんかいいことが起こ
りそうだ、という説得力を持った時なんじゃないのかな。

そして現在の彼にはあまりその説得力があるようには見えない。
どちらかと言うと、大金だけを持った若造が大言壮語を吐いているだけ
に(マスメディアのイメージでは)なってしまっているように思うので
ある。

であるならば、本来彼が行うことはマスメディアで大言壮語をぶち上げ
ることよりも、自分の本来の野望に近づくようにたとえ何年かかっても
フジサンケイグループに彼が素晴らしいと思っているビジョンを浸透
させていくことなんじゃないのかな。
それが彼の本当の望みであるのなら。

人生で何かを成功させるためにビジョンは必要だと思うし、また、
リーダーシップも大切だろう。
でも、それがただ単に押し付けであるのなら、人は動いてはくれない、
と思うのである。

そもそも、彼は自分の会社を世界一にしたくって今回の大博打を張った
らしいけれど、それは誰にとっての世界一の企業なんだろう。
少なくとも顧客や、そこで働く人たちにとっての世界一の企業になれる
とはあまり思わないんだけれど。

つまり、いくら彼が世界一の金持ちになったとしても、それよりは人が
人をよぶ企業の方が、私にとっては魅力的に見える。

でももしも、彼が今回のことで失敗したとしても、それが本当に彼に
とっての願いであるのなら、また復活してくるような気もする。
というより、そこで終わってしまうのであれば彼の野望もそれだけの
ものだったといえるのかもしれない。

そして仮に彼が再び復活したときには、今よりはもっと魅力的な人間
になっているんじゃないのかな、なんて思うのである。


 < 過去  INDEX  未来 >


harry [MAIL] [HOMEPAGE]

My追加