パラダイムチェンジ

2004年11月04日(木) 日本プロ野球に足りないもの

11月4日は、ジュンク堂書店のトークショーに行ってきた。
今回は「イチロー革命」を上梓したロバートホワイティングス氏
かねてからの日本野球通のアメリカ人で、日本野球をアメリカに紹介
した「菊とバット」「和をもって日本となす」などの著作がある。
ちなみに、「菊とバット」は今でも来日する外国人野球選手のバイブル
なんだとか。

はじめは、通訳つきの講演だときいていたんだけど、実際には、
ホワイティング氏自らが日本語で話したトークショーだった。
ちなみに、昔はナベツネの英語の教師もつとめていたらしい。へー。
もっとも、その後彼が東京ドームの観客動員数の嘘(実際には4万席強
しか座席がないのに、毎回発表は5万5千人)を記事にして以来、交流は
途絶えているらしいけど。

で、内容は本の内容の紹介と、昨今の日本プロ野球再編についての
氏の見解がメインであった。
その中で、個人的に興味をひかれたのは、

1)楽天が新規参入をしたけれども、ドラフト制度も含めてプロ野球の
構造自体は何も変わっていない

2)メジャーリーグでは野球がビジネスとして成立して、日本のプロ野球
では成功しない一番の大きな違いは、ファンの方向を向いているかどう
かの違いが大きい

という2点だった。


これに、絡めて話をするならば、ライブドアフェニックスが落選し、
楽天ゴールデンイーグルスの新規参入が決定したとき、その参入条件が
数年間、赤字経営でも球団を支えられる体力だという話になった時、
東京新聞紙上で、スポーツ評論家の青島健太がこう言っていた。

曰く、
既存のプロ野球チームの意見は、まずは赤字ありきの議論であり、
それではプロ野球の将来について、夢が感じられない、
というものである。

そうなんだよね、でも考えてみると不思議だとは思わないだろうか。
アメリカの場合、人口2億人に対して30球団あり、その中でも全ての
球団が順調とはいえないまでも、ビジネスとしても成功をおさめて
いるのに対し、日本では12球団しかないプロ野球の、特にパリーグ
球団の経営は困難だといわれている。

でもね、アメリカでメジャーリーグは、国民的スポーツの一つでは
あるけれど、だからといって一番人気のあるスポーツではない。
むしろ、アメフト、バスケ、ホッケーに押された4位で、野球には
全く興味のない人は割合で言ったらおそらくは日本人以上だろう。

だからこれだけ国民一人一人が裕福になり、なおかつサッカー人気に
押されているとはいっても、堂々たる国民的プロスポーツの一つで
あるプロ野球が、日本でビジネスとして成立しない方がおかしいとも
いえるわけで。

その理由としては、TV放映権の問題であるとか、またはグッズの売り
上げであるとか、日本人有力選手の相次ぐメジャー移籍であるとか
言われているけど、でもそれだけが理由でもないんじゃないのかな、
とも思えるのである。

今回新規参入に名乗りを上げた、楽天、ライブドアともにプロ野球に
名乗りを上げた理由の一つには、堂々と企業名を名乗れるという事が
上げられるんだろう。
それは、それまでは全く認知度のなかったオリックスの企業知名度が
ブレーブス買収で大幅にアップした事を知っているからであり。

特に楽天は、みすみすライブドアの知名度をアップさせるんだったら、
自分たちがそのうまみを得たいという気持ちは確実にあったはずであ
る。

そのその一方でいうならば、たとえ球団自体が赤字経営を続けたとして
も、球団を持つことによっての知名度アップ、そして本業との連携を
はかる事のメリットの方が大きいと判断したんだろうとも思われる。

ただ、ホワイティングが指摘しているのは、そういうものの考えである
限り、プロ野球のファンは増えていかず、いずれまたプロ野球の経営は
行き詰まるだろう、という事である。

アメリカの場合、メジャーリーグ球団にとってのライバルは、同じ
プロ野球チームではない。
同じ地域に存在する、他のプロスポーツチームである。

彼らは親会社から多額の広告宣伝費をもらっているわけではない。
その分、観客のリピーターを増やすことに必死になって頑張っている
わけである。

そしてアメリカの場合、その入場料金の安さ、ファンと選手が気軽に
触れあい、サインを求める事ができる雰囲気、または地元の小学校を
選手たちが訪問するボランティア活動や、試合前の野球教室などの
地元ファンを大事にしたサービスを繰り広げることで、なんとか生き
残りをはかろうと必死になっている。

そして、なぜそこまで彼らがプロ野球のビジネスというものに必死に
なれるかというならば、親会社の出向ではなく、生え抜きのプロ野球
ビジネスしかしらない人間たちで構成されているからである。

今回、楽天について一つ評価できるかも、と思うのは、GMにマーティ・
キーナートを迎えた事だろう。
そして、彼が唱える東北楽天球団の地元密着型、メジャー流のファン
サービスは、もしもうまくいったときの事を考えると、ワクワクさせ
られる。
それはたとえば、外野の芝生席の料金を、無料にして解放するなどで
あるが。

それは、審査前、ほりえもんやアドバイザーであるテリー伊藤の口から
語られた内容よりも、私にとっては魅力的な球団経営に見える。
だからその意味で言うならば、フェニックスよりはイーグルスになって
よかったんじゃないかな、とも思うのである。

ただ以前、仙台がロッテオリオンズのセミフランチャイズだった頃、
その時のはあのカネやんが監督でリーグ優勝をしたにも関わらず、
驚くほど不人気で、観客動員数は伸び悩んでいたらしい。

その事をふまえてロバートホワイティングは、100敗する寄せ集めの
チームを地元の人たちが応援する事自体が難しいのではなかろうか、
と言っていたが、果たして実際にはどうなるんだろうか。

少なくとも、神戸と大阪の合併球団よりは、ファンをつかむことが
できるんじゃないのかな、とも思うのだが。


 < 過去  INDEX  未来 >


harry [MAIL] [HOMEPAGE]

My追加