パラダイムチェンジ

2004年08月22日(日) 人生はキャバレー

紳士淑女の皆様、レディース・アンド・ジェントルマン。
キットカットクラブへようこそ。

当店には悩み事なんて何もございません。
悩み事は外に置いといて、
当店では人生はビュ〜ティフ〜ル。
音楽もビュ〜ティフ〜ル、女の子もビュ〜ティフ〜ル。
それでは当店自慢の女の子たちをご紹介いたしましょう。



ミュージカル 「キャバレー」を観にいってきた。
行ったのは東京国際フォーラム。

私がキャバレーを見たいと思ったのは、2年前の夏に見た「フォッシ
ー」の中にあったキャバレーのダンスシーンが格好よかったからで、
実際にどんな話なんだろうと興味がひかれたからである。

ちなみにフォッシーとは、演出家ボブ・フォッシーの事であり、
フォッシーはライザミネリの主演の映画「キャバレー」のメガホンも
とっている。

今回の舞台は、そのリバイバル版であり、演出したのは、共に映画の
世界でアカデミー賞を勝ち取った「アメリカンビューティー」のサム
メンデスと、「シカゴ」のロブ・マーシャル。
98年にトニー賞をとり、日本にも2001年に一度来ていたらしい。


で、実際に見た感想はというと、切ないなあ、の一言である。


舞台は1930年代のドイツ、ベルリン。
そこで働くイギリス人の女の子サリーは、ある日ベルリンにやって
きたばかりという一人のアメリカ人と店で出会う。


まあ、英語ね、その響きをどれだけ待ち焦がれたことか。あなた
英国人?

ああ、そうだ。

アメリカ人ね。でもきれいな発音だわ。お願い、もっと話して。



ひょんなことから新年のお祝いのキスを交わしたアメリカ人、
作家のクリフの下宿に転がり込む。
サリーは店を首になり、他に行く所がなかったのだ。

クリフは、実はバイセクシャル?なんだけど、ここはベルリン。
何でもありの街。
そして二人は生活をはじめる。


ある日、サリーは自分が妊娠していることを知る。
だけど、誰が親なのかはサリー自身にもわからない。
子供をおろす、というサリーにクリフはこう持ちかける。
「子供を生んで育てようよ。僕たちはいまだに小説も書けず
パーティに明け暮れるだけの根無し草。だけど、子供が
生まれたら僕たちは変われる気がするんだ」

サリーは最初、「子供をかすがいにする気?そんなの重くて
かわいそうだわ」というんだけど、いつしか彼の熱意にほだされて
今までとは違って彼の事を自分が本気で好きになっている事に
気がつく。

クリフは、彼らの友人で、この下宿も紹介してくれたドイツ人、
エルンストの非合法の取引を手伝うことで、収入を得ることに
決める。


だけど、ここはベルリン。
徐々に軍靴の音が近づいてくる。
エルンストはナチスの党員だった。
そのことを下宿先の大家さんの老婦人の婚約パーティで知って
しまったクリフは、エルンストの仕事を手伝うことにためらいをみせる。

そんな時、身重になったサリーに、元のお店から復帰の誘いがやって
来る。
もうベルリンを去って、アメリカに行こうと誘うクリフ。
まだ動けなくなるまで後数ヶ月あるわ、それまで私が働くからここに
居続けましょう、というサリー。
果たして二人の行く末は、そしてキャバレーや、ベルリンの運命は。

という物語。
この二人の物語に加えて、もう一つ、下宿先のオールドミスと、
男やもめの老紳士のラブストーリーも同時進行で進んでいく
んだけど、こっちも切ない物語になっている。

ボブ・フォッシーの映画版を後で見てみると、このカップルは熟年と
いう設定はないんだけど、逆にこのサムメンデス版の設定の方が、
より切ない設定になっていると思う。

オールドミスの大家さんは、こう言う。
「私は、戦争も(第一次大戦のこと)、革命も、経験してきた。
インフレで、パン一斤が何千マルクになることも経験してきた。
でも、それでも私は生きている。この先、たとえ何が来ようとも
私はここで、下宿を営んでみせる」

今回の表題にした「人生はキャバレー」は、お店に復帰した
サリーが歌う歌である。


一人で部屋に閉じこもっていないで
おいでよ、ミュージックプレイス
人生はキャバレー Come to the Cabaret

仕事なんかは忘れて、陽気にはじけよう
人生はキャバレー Come to the Cabaret
 
ワインを味わいに来て、音楽を楽しんで
あなたのテーブルはお祝いしようと待っている

悩み事は忘れて 笑顔で楽しく遊ぼう
人生はキャバレー Come to the Cabaret

私の友達の名前はエルシー
彼女と出会ったのはチェルシー

彼女はお嬢様なんかじゃなくて
実は娼婦だったの

お酒と薬が大好きで
あばずれ女と呼ばれて死んでいった。

でも死んだ顔は安らかでまるで女王様のよう
今まで見た中で一番幸せそうな死体だった。

昔、エルシーがこう言ってた事を思い出したわ。

「一人で部屋に閉じこもっていないで
おいでよ、ミュージックプレイス
人生はキャバレー Come to the Cabaret」

だから私も心に決めたの
チェルシーの時を思い出して、エルシーのように
生きていこうって

ゆりかごから墓場まで人生なんてあっという間
人生はキャバレー まるでキャバレーみたいなもの
そう、私はキャバレーを愛しているわ


ちなみにもう一曲、映画版にはない曲で、
「僕の瞳に映るあの娘は」って曲があって、この曲で
サムメンデス版では、ゴリラとMCという狂言回しが
踊るシーンがあるんだけど、この曲もよかった、という
よりは、愛の歌も含めて曲は皆よかったんだよね。

ナチスの青年を取り囲んで歌う曲、「明日は我が物」
なんて、ナチス讃歌の歌なんだけど、その調べは美しく、
思わずうっとりするくらいだったし。

ミュージカルって、いきなりキャストが歌いだすことに抵抗を
覚える人もいると思うんだけど、逆に言えば、歌だからこそ、
特に恋愛の歌なんかは、こっちの心に突き刺さるんだと
思うし。

お話自体は、とても深く、思わず考えさせられる内容でも
あるんだけど、それを冒頭にも書いた、MCのシーンによって
笑いを含んだものにするあたりは、すごいなあと思うのである。

男とも女ともつかないMC(という役名)には、1幕と2幕の間の
幕間でもしっかり笑わせていただきました。
おそらくはお約束なんだろうけど、2階席に向かって放ったセリフ
なんて大爆笑でした。

あ、ちなみにダンス自体は、ボブ・フォッシーの方がカッコよかった
とは思うけど、映画版と比べても、作品全体としては、こっちの
方が俺は好きかも。

自分が見に行った回でも結構空席はあったので、もしも興味を
ひかれたのなら、結構オススメである。
ついでに映画版のDVDも面白いと思います。


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harry [MAIL] [HOMEPAGE]

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