パラダイムチェンジ

2004年07月10日(土) 合併頼みのオーナー達の思惑(2)

現在発売中のNumber606号から、プロ野球再編に関する提言コーナーが
できた。
その第一回は石田雄太。普段はイチローなどの密着取材の多いスポーツ
ライターである。

タイトルは8か12か。
すなわち1リーグ制8球団がベストなのか、2リーグ制12球団がベストな
のか、という問題提起をして、結局その答えを出すにはコミッショナー
以上の発言力を持ちながら、いざとなると俺は単なるオーナーだと逃げ
るナベツネに実権を持たせ、読売主導でいいからちゃんと答えを出させ
るべきだ、と結んでいる。
詳しくは、誌面をどうぞ。

今回のプロ野球再編の流れを見るときに、確かに忘れちゃいけないのは
じゃあ現状のまま、セパ2リーグ12球団制を維持しても、遠くない将来
にたちゆかなくなる可能性があるってことだろう。


7/7のオーナー会議では、ナベツネと堤オーナーの発言は一緒で、
「1リーグ10球団になれば、皆黒字になる」だった。
では、はたして本当にそうなるんだろうか?

彼らがそう言いきる根拠はズバリ、対巨人戦ができれば1試合1億とも
いわれる放送権料と、巨人相手の試合みたさの観客動員増だろう。

ついでに対巨人戦ともなれば、パリーグ球団にとっては、1面にでる
可能性や、スポーツニュースで取り上げられる率が増えて、多少の赤字
が出ても、それはパブリシティ効果の増大(イメージの向上)でチャラ
だろう、とそろばんをはじいているのかもしれない。

仮に現状と同じ程度の試合数を、1リーグ10球団でこなすとなると、
各球団が14回ずつあたる126試合か、16回ずつあたる144試合(現在は
140試合)が妥当だと思うけど、このうち半分の試合をホームとして
主催すると、その放送権料は1試合1億で計算すると、それぞれ7億、8億
円になる。(ちなみに巨人に入る放送権料は、あまり現状と変わらない
64億〜72億円になる)。

まあ、これでこれで現状20億とか30億といわれる赤字の1/2〜1/3程度は
穴埋めして、残りは新たな観客の獲得、グッズの売り上げで図ろうと
いうのだろう。

でもはたして、そんなにうまくいくのかな?

ひとつ考えられるのは、今後も巨人戦の放送権料は、1億円を維持でき
るのか?という事である。
かつては視聴率20%を割るだけでも話題になった巨人戦の視聴率は、
ここ数年は10%前半〜時には一桁でも珍しくなくなりつつある。

ゴールデンタイムに放送されている事を考えれば、そのスポンサー枠の
広告費も大暴落はしないだろうけど、逆にあまりの低視聴率にスポン
サーがつかずに、番組として放送が危ぶまれる可能性もあるんじゃない
のかな。

読売サイドとしては、それを見越しての1リーグで対戦相手を増やそう
としてると思うんだけど、長期的に見れば放送権料が下がることは
あっても、上がることは難しいような気がする。


そしてもうひとつは、じゃあ現状のまま、1リーグ化しても経営体質が
変わらないんじゃ、あまり意味はないんじゃないか、という事である。

つまり、球団代表などの幹部社員が、親会社からの数年の出向社員で
ある限り、そこにプロ野球をさらに盛り上げようという気運は盛り
上がらない可能性のほうが高いように思われる。

日本にあるもうひとつのプロスポーツ機構、Jリーグの場合はどうかと
いえば、たとえば鹿島アントラーズの場合には、その前身は住友金属
だけど、現在の社長は、たしか親会社からの出向ではなく生え抜きの
社長だったはずである。

Jリーグの場合、親会社の撤退というフリューゲルス、ベルマーレの
ショックもあってか、親会社依存の体質からは脱却する流れになって
いると思う。
では、今後のプロ野球はどうなのか。そういう流れになりうるのか。


そして最後にあげるのは、合併に対するファンの違和感である。
球団側としては、合併してもダブルフランチャイズ制をとることで、
今までどおり地元のファンには一定の配慮をみせ、なおかつ近鉄・
オリックスの場合には、同じ関西地区という事もありオリックスファン
近鉄ファンが相互に交流することで観客動員も1+1=2になることを
狙っているのかもしれない。

でも、はたしてそううまくいくのか。

たとえば、私は横浜ファンである。もしも横浜とヤクルトが合併した
場合、スタメンは半々か、ヤクルト優勢になる気がする。今まで横浜
生え抜きの選手が好きで応援していた人間が、いきなりヤクルトのス
タメン選手も同様に応援できるのか、といわれると微妙である。

もちろん、古田、宮本など、スワローズの選手たちは好きだし、いい
選手だと思うが、自分のチームの選手としてみるのはまたちょっと違う
気がするのだ。

つまり私は横浜ベイスターズのファンであるが、それは球団(会社)が
好きなのではなく、選手が行なっているプレーとか、チームカラーが
好きで応援していると思うんだよね。

だから一時期の森監督の時は、伸び伸びとプレイする横浜色が薄らいで
いる気がしてちょっと馴染めなかったのである。

また、私は私設応援団に入るほどのファンではないが、もしも自分が
ヤクルト式にビニール傘を持たされて、東京音頭を歌えといわれたら
やっぱりちょっと違う気になる。

それぞれの応援団にもファン気質や、今まで培ってきた文化といった
ものがあると思うのだ。

そして今回、新たな合併の軸として注目を集めているロッテの場合、
その応援の仕方は巨人ファンが思わずパクってしまうくらい、独特の
応援文化を持つファンがいる。

合併した後、はたしてその応援文化は守られるのか、もしくは合併先の
ファンはロッテ方式をすんなり受け入れられるのか、そう考えると
一時的ではあっても、今まで熱烈に応援し、球場に来てくれたファンの
足は遠のく可能性もあるんじゃないのか。

Jリーグのマリノス・フリューゲルスの合併のときは、同じ横浜という
こともあったけど、一方でフリューゲルスのファンが主体となって設立
した横浜FCという受け皿ができたし、その後、横浜Fマリノスも、独自
のチームカラーを打ち出したおかげで、新たなファンを獲得し、あの
ショックを乗り越えたように見える。

では、今度合併してできた新球団には、はたして足して2で割った以上
の、新たなファンを獲得できるような魅力作りはできるのだろうか。
こればっかりはフタを開けてみて、5年10年経たないとわからない問題
だと思うのだが。
でもファンの違和感が長引いた場合には、結構大変だったりするのかも
しれない。

と、現状についていちゃもんばかりつけるのもアレなので、次回個人的
な対案を出してみる。


 < 過去  INDEX  未来 >


harry [MAIL] [HOMEPAGE]

My追加