2004年06月25日(金) |
プロ野球は誰のためのものか |
と、いう事でプロ野球問題について(余計なお世話だが)考えてみる。 今回考えるのは「プロ野球は誰のためのものか」という問題である。 それはもちろん「ファンのため」だろう、というのは正しいが、正し すぎてつまらないので、今回はとらない。
もしも、日本のプロ野球が「ファンのためのもの」であるとするなら ば、今回の在阪パリーグ球団、バファローズとブルーウェーブが立ち ゆかなくなった責任の一端は、ファンにもある。すなわち「お前ら、 もうちょっと球場に来て応援せい」という事である。
つまり、観客動員の伸び悩みだけが、経営状態の悪化の原因であるなら ば、観客動員人数が伸び悩み続けた、2球団の内1球団が消滅するのは、 当然の結果であるという事になる。
でも、本当にそれだけだろうか?
今まで、この手の議論がなされてきた時、いつも話題に上るのは、 「企業の自助努力が足りない」である。つまり、親会社がもっと球団 経営に本腰を入れていれば、そんな事にはならず、ファンも離れては いかないだろう、という事である。
この意見も正しいと思う。 でも、主にこの意見を言っているのが、某超人気球団のオーナーで あったりする辺りに、個人的には複雑な思いもするわけだが。
では「プロ野球は親会社のためのもの」なのだろうか?この意見も 正しいと思う。つまり、多くのプロ野球チームは、実質経営的には、 一部のチームを除いてはどこも赤字で、その赤字の補填を親会社の 宣伝広告費という形で賄っている、なんて話もよく聞く。
その代わりに多くのチームでは球団名に親会社の名前をつけている訳 だ。つまり、赤字を補填している分、例えばスポーツニュースの度に NHKであっても、親会社名を連呼させる事で元を取ろうとしていたり、 また、西武やダイエーの場合には、優勝する度にそれにあやかって、 セールを行なって元を取ろうとしているし(この前のダイエーは、王 監督1000勝記念セールを行なっていた)、また読売新聞や、もしかする と中日新聞は、自分のチームの観戦券をつける事で、部数拡大を図って いるのかもしれない。
だから、今回の近鉄・オリックスの合併劇は、一方では社会人リーグと 同じく企業がスポーツ事業から撤退した、という見方もできるかもしれ ない。
それが自前の社員か、プロ契約をしていた選手かの違いだけで(プロ 契約選手が社員として再雇用はされないだろうが)、本質的には、親 会社のリストラの一環なのかもしれない。 もしも、これが実業団チームだったり、アイスホッケーリーグだったら ここまで大騒ぎにはならなかったはずである。
さて、それではプロ野球チームの経営が、基本的に赤字になってしまう のは何故だろう?もしも、この2チームが常に黒字を生み出していれば 親会社だって手放さなかったと思うし。
その原因の一つは、選手の年棒が高騰し続けていることもあるかもしれ ない。この10年間で選手年棒の総額は、おそらくは何倍かにはなって いるんだろうし。
そう考えると「プロ野球は選手たちのためのもの」という見方もできる かもしれない。つまり、このデフレで不景気の世の中、選手たちの年棒 だけが上昇し、人件費が収益を圧迫し続けた事が問題ならば、その人件 費を圧縮することができれば、各球団の経営状態の改善には一役買う 事ができる、というより、今回の件を契機にして某オーナーが、プロ 野球選手会に圧力をかけて選手会をへきえきさせる事はあるかもしれ ない。
でも、ちょっと待ってほしい。全てのプロ野球選手たちが、高い年棒を もらっているわけでもないだろう。 1球団70人位の支配下選手がいるとして、2軍の選手を含めて大半は、 1千万円以下〜数千万円の間に落ち着き、億単位の金額をもらえる選手 は、球団の中でも一握りかもしれない。
そしてその一方で、FAやドラフト逆指名などで高額な年棒で選手を釣り 上げ、プロ野球選手の年棒水準を年々上げ続け、他球団の経営を圧迫 させつづけるのは、一体どこの球団なのか。
広島カープにいたっては、選手がFA宣言をして、年棒を上げようとして も、交渉はしないと広言するほど涙ぐましい努力をして、江藤、金本ら スター選手を放出し続けているのである。
また、そもそもプロ野球球団の経営を悪化させているのは、一体誰の 思惑なのか。
近鉄がヘルメットにつけるスポンサーに消費者金融系のロゴを入れたら 品がないと言って横槍を入れ、球団買収をして新規参入する会社は30億 円加入費として払わなくてはいけないといい、また外国資本の会社の 持ち株比率を制限し、そして今年の初めには、近鉄球団のネーミング ライツ売却を頓挫させるなど、今までパリーグ球団が行なおうとして きた経営努力に、水を差し続けてきたのは、一体どこの誰なのか。
常にオーナー会議でも飛びぬけた発言力を持つ、「あのお方」では なかったのか。
と、まるで「ナベツネ陰謀史観」が成り立つほど、この10年間、日本 プロ野球界は「あのお方」に振り回され続けたと思うのである。 つまり、「思いつきでものをいう上司」 はここにもいたのである。
そしてそこに、ファンは不在である。「巨人ファン」は視野に入れて いても、「各球団ファン」は常に蚊帳の外に置かれ続けた10年では なかったのか。
つまり、少なくともこの10年は「プロ野球はナベツネのものである」と もいえるんじゃないのかな。
話をMLBに移す。例えば、シアトルマリナーズの親会社は、日本の任天 堂、外国資本である。でも、その事で怒り出す地元マリナーズファンは そんなにいないと思う。
また、サッカープレミアリーグのチェルシーのオーナーは、ロシア人 大富豪である。でも、だからといって、ロンドンのチェルシーファンは そっぽを向くわけでもない。むしろ某銀河系軍団に匹敵するような有力 選手の加入に、拍手喝采を送っているように見える。
例えばこれが「任天堂マリナーズ」に名前を変えたり、ロシア人カラー の異様に強いチーム編成になったら、ファンはそっぽを向くだろう。 なぜなら「自分たちのチーム」ではなくなるからである。
つまり、ファンにとってはそのチームが地元のチームで自分たちが応援 のしがいのあるチームだったら、その親会社がどこであろうと、誰が チームを持っていようと構わないんじゃないかな、と思うのだ。 「チームはファンのためにある」とはそういう事だろう。
話を日本プロ野球に戻す。 もしも、近鉄バファローズが、「大阪バファローズ」という名前で、 その株の所有者が在阪の中小企業のおっちゃんから、果ては外国人大 富豪まで、多岐にわたって広く資本を集めた場合、大阪バファローズ は株主に利益を出すために、地元ファンの獲得に必死になり、また 面白いプロ野球をファンに見せるために有力選手を獲得しようとする だろう。
なぜならそうすることが、自分たちの経営を安定させ、更に資本を 集める可能性も出てくるからだ。「地元密着の球団経営努力」とは、 そういう事を指すと思うのだ。
そしてそれは特別なことではなく、新潟をはじめとしてJリーグでは 様々なチームが取り組んでいる事だと思うのである。 そしてプロ野球でも福岡ダイエーホークスや、北海道日本ハムは そうやって地元と密着することで生き残りを図ろうとしてきたのでは なかったのか。
もしも、今後もそういう機会を縛り続け、親会社が赤字の補填を行なう という企業スポーツ(宣伝活動)と位置づける限り、プロ野球の将来性 は、たとえ1リーグ制になっても暗いんじゃないかな。
だってどう考えても対巨人戦が減って放送権料収入が減る広島あたり は、経営的に厳しくなると思うし。
「あの人の目の黒いうち」は、このままでもなんとかなるのかもしれ ないが、「あの人」が球界を去った後、たとえ球界が立ち枯れたとして も、それはファン不在のツケというか、自業自得であるといえるのかも しれない。
ま、あのお方にとっては、自分が生きている間「巨人が永久に不滅」 だったら、それでいいのかもしれないが。
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