2004年06月26日(土) |
なぜ、民主党は政権が取れないのか |
参議院選挙が近づいてきた。熱い夏or梅雨空と相まって、拡声器の うっとうしい季節がまたやってきた。 さて、今回の参院選、果たして自民党が議席を伸ばすのか、民主党が 躍進するのかはわからないが、一つだけわかっていることがある。
それは、たとえ今回民主党が勝ったとしても、政権交代は起こらない、 という事である。 その理由は簡単で、たとえ参議院で過半数を占めたとしても、衆議院で 過半数に達しなければ、政権交代のための首班指名で負ける、という 事である。
じゃあ、民主党が今回の参院選で勝つ意味が全くないか、というと そんな事もない。 21世紀、小泉政権になって、イケイケドンドンな法案が強硬採決で すんなり通ってしまう世の中では、参院で野党が過半数を握っている 世の中のほうがまだ望ましい気がする。
と、いう事をふまえた上で表題にもどる。 なぜ、私は「民主党は政権がとれない」と思うのか。
それは、「民主党が本気になって政権を取りにいっている」とは、 どうしても思えないからである。 では、なぜそう思うのか。
その理由の一つは、年金国会終盤の牛歩やら閉会騒ぎやらの一連の 政治的パフォーマンスにある。 そういうパフォーマンスにしかアイデアの思いつかない政党が、将来 政権運営をこなせるとは、到底思えないのである。
あれは、一体何のため、誰のために行なわれたパフォーマンスなのか。 あれを見てよくやったと喜ぶ人たちとは、一体どんな人たちなのか。 その答えは、おそらく自分たちの支持者に向けたパフォーマンスだった んだろう、と思うのである。
すなわち、あなたたちの代表は、与党の横暴に屈することなく、こんな にも頑張っていますよ、という意味なんじゃないのかな。 そのココロは、だから次回の参院選では、少なくともあなたたちは私 たちに投票して、当選させてくださいね、という事だろう。
ただし、ここで民主党のパフォーマンス担当者(いればだが)は、大事 な事を忘れていると思う。
自分たちの支持者以外の大多数は、ああいう無駄に思える抵抗にひいて いるんじゃないか、という事である。 そしてその事は今度の参院選でもしかして民主党に投票したら何かが 変わるかも、と思っていた浮動票の心を冷ましている、と思うのだ。
大体、民主党の支持者(団体)や組織票は、全国民でいったら数%だ ろう。その人たちの票を固めた所で、よくて現状維持か、もしくは 6年前の浮動票(消費税5%に怒った人たちの批判票)が離れた場合は 議席を減らすだけのような気がする。
大事なのは、自分たちの支持者に向けてパフォーマンスを行なって喜ぶ ことではなくて、自民党ですら取りこぼしている人たちの票を、いかに 自分たちの味方につけるか、という事なんじゃないのかな。
そして、そのためにこの参院選に向けて民主党が何かをしているとは、 どうしても思えないのである。
でも、今回民主党が真っ先にやらなきゃいけないのは、「上司は思い つきでものを言う」の橋本治風に言えば、「現場の声を聞く」事だと 思うのだ。
つまり、国民年金の4割が未納で、新生児出生率が1.29と落ち込んで いるのは、何故なのか。 サンデープロジェクトで、財部誠一が言っていた事だけど、これは一種 の取り付け騒ぎ、日本政府に対する信用収縮だと思うのである。
つまり、国に年金という形で預けてもリターンはないと思う人たちや、 将来の日本はこのままいってもいい方向には行かないと思う人たちが、 多いから出生率も下がっているのかもしれない。
これがもしも、産めよ殖やせよという風潮だったら、誰も年金問題に 頭なんか悩ませないだろう。 そして、何故そうはならないか、と言えばこれまでの官−自民党政権の やり方が「現場」を見ずに現場をやせさせてしまったのかもしれない わけで。
その対抗勢力たるべき民主党も同じく、現場を見ずに思いつきでマニュ フェストやパフォーマンスを繰り広げている限り、民主党に政権が 転がり込んでくる可能性は低いだろう。
だから民主党が本気で政権を取りにいっているとは(誰も)思わない のである。
でもね、今現在無党派と呼ばれている人たちの多くは、もしかすると 政治そのものにも無関心だとは思うけど、少なくとも現在の自民党政権 の政策に満足していないこらこそ、無党派なわけで、そこには巨大な 「現場」が眠っていると思うのである。
そして、本来民主党が行なうべきなのは、そういう無党派に対して、 どうすれば現状がよくなるか、というグランドデザインを本気で考える 事だろう。
10年前から小泉政権にいたる一連の流れで、この国の政策決定システ ム、行政の弊害が簡単には変わらない、という事を私たち有権者は、 もうわかりすぎるほどわかっているわけで。
だからこそ、用意周到に虎視眈々と、どうすればいいのか、民主党が 提示できれば、実は政権交代は難しくないように思う。 それくらい、閉塞した政治状況に対する圧力は強くなっているんじゃ ないかな、と思うのだ。
ただし、今の民主党に本気でそういう事に取り組む能力と人材がいる のかは、わからないが。
では、我々有権者は、自民党も、そして民主党も頼りにならないと思う のなら、選挙を棄権すればいいのだろうか。 私は必ずしもそうは思わないのである。
「投票しないことも有権者の権利の一つである」なんて意見も、有識者 から聞かれるが、それでは今まで、人々が投票を棄権したことで、何か 政治が変わったんだろうか?と思うのだ。
変わったとすれば、与党も野党も、自分に確実に投票してくれそうな 人たちのいう事だけを聞くようになったのかもしれない。 すなわち、自分の権利を放棄した人たちの意見や権利なんて、放棄した んでしょ、という理由で無視されていると思うんだよね。
そして各政党の訴える国民、市民、そして国益の中に果たして自分は 勘定に入っているのか、自分を含めた若い世代は、考えた方がいいと 思うのだ。 今回の年金をめぐるドタバタは、そのツケというか結果だろうと思う のである。
橋本治は、「上司は思いつきでものを言う」の中でこう書いていると 思う。
官僚に現場(国民の声)はない。あるのは、上からの命令だけである。 そして国民は主権者だが、直接官僚に命令を下してコントロールを することはできない。
官僚をコントロールできる(最近はそうでもないが)のは、行政府に 入った政治家だけであり、その政治家を国民がコントロールするには、 唯一、投票行動によるしかない(圧力団体に属して、投票する代わりに 圧力をかける方法もあるが)。
そして、これが(間接)民主制ということだろう。
政治家が「清き一票を」と拡声器でがなりたてるならば、アリの大群 象をも倒す、ではないがその一票を集めて反対票に投じれば、与党の 今までのやり方を脅かし、圧力を加えることだって本当はできるんだ と思うのだ。
そしてもしも、その結果民主党が政権をとったとしても、その結果が 不満だったら、今度はあっさり鞍替えすればいいのだ。
彼らほど、世論やら世間の風やら、外圧に敏感な人たちはいないと思う し、有権者の動向一つで自分たちの当落が本当に決まると思えば、 彼らも本気で現場(国民)の声に耳を傾けると思うのである。
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