パラダイムチェンジ

2004年05月28日(金) 都立高君が代問題

都立高校他で、卒業式に君が代を歌わなかった先生たちが結局処分を
受けたそうな。

もう「横山ホットブラザース」並に「おーまーえーは〜あーほ〜かー」と小一時間くらい、たっぷりと担当者を問いつめたい。

私が怒っているのは、日教組的な文脈で、「君が代」は天皇制礼賛の
歌だから怒ってる訳ではない。
処分された高校の中には、おそらく自分の母校の教師も含まれている
だろうから腹を立てているのであり、国歌・国旗を本人の思想信条に
関わらず強制し、処分をするという態度に腹を立てているのである。

あらかじめ言っておくと、私は、例えばこの前のサッカーオリンピック
予選で国歌が流れた時などには、なんのためらいもなく君が代を歌う。
それは、国の代表として、ピッチに立っている人たちへの敬意と、
応援の意味を込めて、国歌を歌っているのである。

でも、例えば日本政府が間違った選択をして、その結果「進め1億火の
玉だ」なんてスローガンの下に国歌を歌うことを強制された場合、
自分に守るもの(家族とか)がなければ、どんなに強制されたとしても
歌いたくはない。なぜなら国民の1人として、そういう状況を寿ぐ気に
は、到底なれないからである。

ついでに言えば、私はサヨクではないので、「君が代」つまり天皇制が
「千代に八千代に」続くことについても何ら異存はない。
だって、日本という国が天皇という存在を中心においてうまくまわって
きた、という長い歴史を尊重したいと思うからである。

天皇にも太平洋戦争を起こした責任、そしてそれを止められなかった
責任もあるとは思うが、それよりは、明治憲法下で天皇制を利用して
きた人たちと、その人たちを止められなかったという明治憲法の構造的
な問題の方が大きいと思うからである。

ついでに言っておけば、だからと言って私はウヨクでもない。
右翼と天皇制については、またその内にでも。


と、いうのを前提として、一体私は何に腹を立てているのか。
以前内田樹氏が、 日記サイトで触れていたが、国歌・国旗を強制
することは、少しもソフトの面で教育的効果がないと思うからである。
この数十年、文部科学省は、ハードの時代からソフトの時代へとシフ
トしてきたのではなかったのか。

私の母校である都立高校は、今はどうだか知らないが、進学校と言われ
ながら、かなりの部分を生徒の自主性に任せてきた歴史がある。

自主性とは、「好き勝手していい」という事を必ずしも意味しない。
「好き勝手」する代わりにやるべきことはちゃんとやれよ、という
無言のプレッシャーを生徒に与える、という事である。

そして無言のプレッシャーを与えられた生徒側は、これはやっていい
ことか、悪いことなのか、自分で判断をしなくてはならない。
なぜならやって悪いことをした場合の責任は自分にあり、また自分の
信用度が落ちるということを意識するからである。

結果、急性アル中になる奴はいても、トイレにタバコの吸殻は落ちて
いないという校風が維持されていたのだ。
だから結果的には、そんなに逸脱することはなく、落ち着くべき所に
落ち着いていた、と思うのである。

ただし、これは自己規制によって自分をがんじがらめにするという
意味ではない。

3年生の秋、という受験勉強上大事な時期に行なわれる文化祭で、クラ
スで製作した映画を出品した時、編集作業が間に合わず、主要スタッフ
10人前後が徹夜の上、授業をサボった時も、文句は言われたが結果的に
何のお咎めもなかった。

なぜなら、生徒たちが自分で判断した事であり、その責任は自分たちで
取れる範囲のものだったからである。つまり自分のケツは自分で拭いた
のである(結果、当然のように私を含めたスタッフは浪人した)。

あの時は、授業をサボって怒られる事よりも自分達の信用に関わる
(映画を落とさない事)の方が大事である、と順位付けをしていた
と思うのだ(ま、怒られても大したことないとタカをくくっていた
んだが)。

そしてそのバランス感覚を養うことこそが、高校で学んだ一番大きい事
なんじゃないのかな、と思うのだ。

そして自分の意に染まず、唯々諾々と上の強制に従って、国歌を歌う
先生たちに、10代の多感な少年少女達が「自主性を重んじます」と
言われた所で、果たしてそれは本当に保証されているというか、信じ
られるのか?と思うのである。

いや、もちろん、世の中とはそもそもそんなものだ、という意見も
あると思う。
でも、だからこそ、高校という教育の場で大人の事情を振りかざすのは
どうなのか。そんなものは、社会に出れば否が応でも付き合わされる
のだ。

その時、その問題をどうやって折り合いをつけるかと言う意味でも、
生徒が自分の頭で判断する、というソフト面での教育が大切なんじゃ
ないのかな。


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harry [MAIL] [HOMEPAGE]

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