パラダイムチェンジ

2004年05月01日(土) 「ヒトたらしめるもの」

さて、GWである。GWはGWらしく、そろそろお気楽な日記に戻ろうか、
とも思ったのだが、とりあえず、一つだけ、何かを書きたくなって
しまった記事があったので、とりあえず書いてみる。

それは、 イラクの刑務所で、米兵が虐待行為をしていた、という
アレである。イラク人を全裸にしたり、電線を巻きつけて処刑ごっこ
に興じている様が、アメリカのメディアで大々的に?報道された
らしい。

しかも同時期にイギリスのメディアでは、英兵が同様に、イラク人に
対して放尿をしている様が新聞の1面に載ったらしい。


こうした情報が、ちゃんと表沙汰になったという所に、一種の自浄作用
というか、マスメディアの力を感じたりもするのだが、その一方で、
何故、この時期に、現地の人々の感情を逆撫でするような事を、駐留軍
兵士たちは行なったのだろうか。

ということを、つらつら考える内に、前に読んだある新聞記事を思い
出した。

東京新聞の特報面にのっていた、この記事である。
-ベトナム帰還兵が語る 本当の戦争-


この記事を再び読んで思うのは、よく「平時に人を殺したら、殺人犯
だが、戦争時に人をたくさん殺せば、英雄になる」なんて言うことが
いかに、その人の心理状態とはかけ離れた言葉だったのか、という事
である。

そして、いかに戦場で生きることが、人に対してストレスを与えるのか
という事かもしれない。

以下、少しだけ抜粋すれば、
「人を殺すのはとても簡単だ。悩む暇なんてない。ただ、訓練で撃つのとは全く違う。殺した瞬間、一つの境界を越えて別世界に入らざるを得ない」

「撃った後、そこに死体がある。やつが殺そうとしたからだ、と自分を正当化しようとした。しかし、吐き気がこみ上げる。上官はそれを見て一人前とほめる。慣れようと、もっと人を殺す。(略)人を殺すことで自分を殺していた」


そして、アメリカには、路上生活者の8割がベトナム帰りである、
という現実もあるらしい。


山田詠美の小説「PAY DAY!!!」 には、湾岸戦争帰りで、やはりPTSDに
悩み、アルコールがなければ正気でいられない家族が出てくる。

兵士になる前は、皆、普通の善良なアメリカ市民であったかもしれない
人たちが、戦場を経験することで、皆、正気を保つのが難しくなって
しまう。
今回のイラク戦争では、この記事の載った2月現在でも、イラク駐留軍
の自殺率は相当高いらしい。

それほどまでに戦場は、私たちの想像を越えた世界なのかもしれない。

つまり、今回の虐待を行なった彼らも、そうでもしなければ、自分たち
の正気を保つのは、とても難しいものであるのかも、しれない。

ただし、だからといって、彼らのした行為自体が許されるべきだ、とは
思わない。


逆に言えば、今まで普通の生活をしていた人々に、そこまでのストレス
を与えなければならない戦争状態に、陥らないような努力を、平時の
私たちは、最大限の努力をする必要があるんじゃないだろうか、と
改めて思うのである。

というより、今回の戦争は、そこまでして行なわなければならないもの
だったんだろうか。
そして、ベトナム戦争当時は州兵どまりで戦場には赴かなかった
ブッシュ大統領は、果たして自らの国民に対して、そこまでの苦労を
強いる合理的な理由は存在するんだろうか。

そして、これは対岸の火事ではない。
同じ事は、イラクに派遣されている自衛隊にだって起こりうる事だと
思うのだ。
今はまだ、実際の戦闘に巻き込まれてはいないからいいようなものの、
もしも、彼らが実際に、イラク人を討たねば自分たちの命が守れない
事態がきた時には、彼らの中からも、PTSDや自殺者が現れる可能性は
あると思う。そしてそれは、一過性の事で済まないのかもしれないの
だ。

なぜなら人間は、それほどまでに弱い生き物なのだと思うから。

そして、それはあの、沖縄や韓国で、度々暴行事件を起こしている
在日、在韓米軍にも共通する問題なのかもしれない。


でもって、話をもう少し大きくすれば、それは戦場に限った話では
ないのかも、しれない。

あの大学教授をはじめとして、この国で、あの人がなぜ?と思う人たち
の痴漢事件が多い理由の一つも、もしかしたら、今の日本で、人らしく
生きることが難しく、ストレスを絶えず感じなければ生きてはいけない
人たちが増えているからなのかもしれない。

ただし、だからといって彼らの行為を、正当化するつもりは全くない。
でも、人というのは弱いもので、できればその弱さをさらけ出さすに
すむ生き方ができる人たちが増えればいいのにな、と思うのだ。


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harry [MAIL] [HOMEPAGE]

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