ここ2、3日、やたら検索エンジンからのリンクが多いと思ったら、 例の長崎幼児殺人事件でヒットしているらしい。
で、例の少年について、たまたま雑誌の吊り革広告を見ていたら、 この少年が、ゲームセンター通いをしていた事から、「ゲーム脳」の 危険性についてまた、話題になっているらしい。
さて、「ゲーム脳」。 私は専門家でもなんでもないので、ここでは今までの報道の聞きかじり のアウトラインを述べるだけにしておくと、 TVゲームをしている人の脳の活動は、抑制され、感情などの発達が阻害 される傾向にあるという話らしい。
まあ、昔から似たような話は、時々あったと思うんだけど、これが 「ゲーム脳」という言葉として認知されたのは、一冊の本が原因である。
「ゲーム脳の恐怖」。これが書名。 今、残念ながら、手元に資料となる雑誌がないんだけど、この本が発売 された当時、AERAや、ニュース解説番組でも広く取り上げられたから、 覚えている人も多いかもしれない。
私は、その本は残念ながら読んではいないんだけど、雑誌の紹介記事を 読んで、へー、そうなんだあ、と思った記憶はあるし。
でもね、実はこの本、その後大論争?を巻き起こしているのだ。 その内容の是非ではなく、その内容の虚実性でもって。
つまりは、この本、実際に読んでみれば、かなりの「トンデモ本」らしい のである。
とりあえず、bk1のこの本の書評欄に行ってみてほしい。 そこで、自らも著書多数の精神科医、斉藤環が、内容に対して警鐘を 鳴らしている。
で、斉藤環に限らず、一般の人も含めて、この本の内容に関しては、 かなりの人が突っ込んでいるのだ。
斉藤環は、その後ゲームサイトのインタビューでも答えている。 インタビュアーが、ゲイムマンというあたりがちょっと痛いんだけど。
ただ問題なのは、いかにその本が問題本であったとしても、「ゲーム脳」 という単語が、例えば「援助交際」などと同様、少なくともメディアでは 一人歩きをしてしまっている事だろう。
すなわちその本の作者と編集者の意図を超えて、言葉として定着しつつ あるということだろう。 いや、その分本が売れるから、意図した通りなのかもしれないが。
でもね、ここでちょっと考えてみれば、何もTVゲームだけが悪者なのでは ないと思うのだ。
例えば、TVゲームではなく、ずーっとTV番組を見ている人は「TV脳」に 侵されているといえるかもしれないし、漫画ばっか読んでいる人は「漫 画脳」に、そして本ばっかり読んでいる人は「読書脳」に侵されていると 言えるのかもしれない。
そのうち「インターネット脳」なんて話も出てくるかもしれないが。
むしろ問題なのは、そうしたものに集中しすぎるあまり、他人とのコミュ ニケーションが、うまくはかれなくなっていることの方が問題なんじゃ ないのかなと思うのである。
で、時間つぶしならぬ「自分つぶし」をしているという意味では、 TVゲームも、TV番組も、漫画も、読書も同じだと思うのである。 なぜなら、そこに没入する限り、脳の一部だけが活性化することに代わり はないだろうと思うからである。
で、例えば、TVゲーム。 昔、RPGゲームが流行っていた頃、TVゲームはおそらく子供たちのコミュ ニケーションの中心にいたんじゃないかと思うのだ。
例えば、ドラクエや、FFが流行っていた頃、今自分がどの辺にいて、この 先どんなことが起きるか、という話で盛り上がっていたりとか。 そんな風に、TVゲームは、私の周りでもコミュニケーションの潤滑油に なっていた時代があったと思う。
また、時々出す例えだけど、月曜日は、土曜のドリフの話題で持ちきり だったり、それらはコミュニケーションの道具足りえた時代があると思う のだ。
また、今の時代でも例えばポケモンを友達同士で対戦したり交換する時は TVゲームも友達同士のコミュニケーションの潤滑油になっているのかも しれない。
ただ、今の時代、なかなかそういう風にコミュニケーションの媒介になり にくいのは、一人に一台、TVがある時代になって、お互いに干渉しない 空気が出来つつあるからじゃないのかな。
だから、今回の事件をきっかけにして、ただTVゲームだけを槍玉にあげて 取り上げるのではなく、バランスよく時間を使う習慣を作ればいいと思う のだ。
それこそ、寺山修司が、「書を捨てよ街に出よう」と言ったように、 何かに浸りきるのではなく、バランスよく摂取することが大切なんじゃ ないのかな。
食卓からTVをなくした途端、家族のコミュニケーションが活発になった 家庭もあるらしいし。
そうでなければ、結局、TVゲームが他のものに置き換わるだけだろう。
TVゲームをやる暇があったら勉強しろ、ではなく、勉強する暇があったら 会話しろ、くらいで、しつけはちょうどいいんじゃないのかなとも思うの だ。
でも最近の新書って、タイトルだけよくて、中身は実際はそうでもないって 本が増えていると思いませんか? やたら出版社が増えて刊行する数が増えたからかもしれないけど。 なんとなく、粗製濫造の印象もあったりするのだ。
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