さて、晴耕雨読、という訳ではないけれど、 今回も読書ネタ。
まあ大体、晴れてようが雨降っていようが、何かしら活字は読んでいる 訳だけれど。
今回取り上げる本は、丸谷才一著「思考のレッスン」。
丸谷才一の本は、むかーし「文章読本」を半分以上意味もわからず 読んでいたっけかなあ、位なじみが薄いんだけれど、 たまたま行った本屋で、この文庫本が平積みになっているのを手にとって パラパラと読んでいたら、意外にも?興味深かったので、 思わず買ってしまった訳だ。
これも一つの出会いだと思うし。 こればっかりはオンラインの本屋さんではなかなか出来ないことである。 でこの本、例えば目次の見出しを見るだけで個人的には興味がひかれる。
いわく、 「考えるためには本を読め」「ホームグラウンドを持とう」「7月6日を うたった俳句と短歌の名作は?」(思考の準備)
「『謎』を育てよう」「定説に遠慮するな」「仮説は大胆不敵に」 「考えることには詩がある」「大局観が大事」(考えるコツ)
「文章は頭の中で完成させよう」「レトリックの大切さ」「言うべき ことを持って書こう」(書き方のコツ)などなど。
いや、すんごく大それた事を言えば、普段自分が思っていることを 言い当てられたような、そんな感じだった。
この本を手に取った時はちょうど、「ナイーブな人」の内容を考え終わっ て、でもこんなの誰が読むんだろうなあー、なんて思いながら、日記を UPしていた時だったので、あ、もしかしたらこれでもいいのかも、 とちょっと励まされた気持ちになったのである。 ある意味他の人には、はた迷惑だった本と言えるかも?
でも、この本に書いてある内容にいちいち頷けるんだよね。 例えば、
僕は、「遊び心」をとても大切にしています。新しいことを言い出す 遊び心というか、遊びとしての新しい意見、みたいな気持ちがあるんで すね。
ほら、誰だって、新しい思いつきがひらめいたら楽しいし、それを うまく工夫して理屈にして行くのはもっと楽しいでしょう。
「遊び」なんて言うと、じゃあ不真面目なでたらめかと思われると 具合が悪いんだけど、大真面目ではないかもしれませんが、しかし多少 は頷けて、納得できる節もある、そう言えないことはないなあくらいの 説得力はあって、しかもおもしろいというのを心がける。 であるとか、 まず第一に、本を読む上で一番大事なのは何でしょう? 僕は、おもしろがって読むことだと思うんですね。おもしろがるとい うエネルギーがなければ、本は読めないし、読んでも身につかない。 無理やり読んだって何の益にもならない。 であるとか。
または、 考える上でまず大事なのは、問いかけです。つまり、いかに「良い問」 を立てるか、ということ。ほら、「良い問は良い答えにまさる」という 言葉だってあるでしょう。(略)
では「良い問」はどうすれば得られるのか?それにはかねがね持って いる「不思議だなあ」という気持ちから出た、かねがね持っている謎が 大事なのです。(略)
よく自分の疑問を人に話す人がいますが、これはお勧めしません。と いうのはそんなことを他人に話したって、だいたい相手にされない(笑)。 相手にされないと、「これはあまりいい疑問じゃないのかなあ」と自信 をなくして、せっかくの疑問が育たないままで終わってしまう。 とか、
また、 次に大事なのは、「仮説」を立てるということです。 どうも現代日本人は仮説を立てることが嫌いでね。仮説を立てること は邪道扱いされる。しかしどんな仮説であろうが、最初は仮説です。 仮説立てて、それでダメだったら自分で捨てればいいし、自分で捨て なくても世界が捨ててくれる(笑)。
とにかく最初に仮説を立てるという冒険をしなければ、事柄は進まな い。直感と想像力を使って仮設を立てること、これはたいへん大事な ことですね。
同時に、仮説を立てるに当っては、大胆であること。びくびく、おど おどしていてはダメです。(略) などなど。
もう、いくらでも引用したいくらい、学者丸谷才一の思考の過程を、 語り聞きという形で、平易な言葉で書いてあるので読みやすい。
もちろん、私と丸谷才一を比べるなんていうのはおこがましいほどにも 程があるが、偶然とでも言うべきか、似たような発想の仕方をする人が いるんだなあ、と心強くもあり、うれしかったのだ。
正直、この本で取り上げられている具体的な例の半分ほども、知らない んだけど、でもそういう知識の欠けている自分でも楽しく読み進むこと ができたし、まるで丸谷才一教授の臨床を見せてもらっているような 気分だった。
この本を読んだおかげで、自分の日記の方向性についてもちょっと 迷いがなくなったかも? まあ、あんまり暴走するのもあれなんで、せめてジャイアンのリサイタル よりは、ましなクオリティの文章が書けたらいいなと思ったり。
自分で何かを考え、書きたいという人にお勧めの本かもしれない。
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