パラダイムチェンジ

2003年05月08日(木) バブルのゆくえ

と、言うことで今回は前回の続き。
バブル経済のリスクについて。
バブルがはじけることがなぜ問題なのか。

まずはなぜ、バブル経済が起きてしまうのか。それは簡単、その国の
経済的成長率を見込んで、国内外から膨大な資金が流れ込むからである。
つまり、あの国に今、投資すれば自分の資産が2倍になる、と思えば
誰でもその国にお金を投資しようと思うでしょ?

日本のバブル経済を起こした元々の原因は、土地の値段が上昇したこと
ではない。1985年のプラザ合意によって、今まで1ドル240円だ
った、為替レートが一気に倍の1ドル120円にシフトしたことである。

これがどういうことであるかといえば、すなわちある日起きてみたら
日本は濡れ手で粟のように、今までの2倍の資産を持つお金持ちになっ
てしまったということである。

本来なら、為替レートが大幅にシフトしたことで、日本の輸出分野は
大打撃を受けるかと思われたが、そこは日本の底力。なんとかなって
しまった。

そうなると今度は、余ってしまったお金をどのように使うか。
結果、そのお金は日本のみならず世界中の不動産に多くが流れていき、
日本は空前のバブル景気を経験した。

で、その好景気の日本に対して、海外の投資家たちもだまって指をくわ
えて眺めているはすもなく、結果日本にはどんどんお金が集まるように
なり、経済の規模も大きくなった。
当時は4%もあった金利の高さも、日本に資金があつまった原因かも
しれない。

でも、やがてそのバブルははじけてしまう。
バブルがはじけた原因は、不動産取引の総量規制にあったとも言われて
いるが、本当の原因は個人的にはよくわからない。
でも結果として、日本には海外からもあまりお金があつまらなくなって
しまった。

だって、日本に投資したって見返りが少ないんだったら、投資する意味
ないでしょ?100万円預けて1年でたったの100円しか利子くれな
い国に誰が投資をするというのか。
その結果今まで、借金してでも回っていたはずの金融が、今度は
回収困難な不良債権の山の前に苦しむ結果となってしまったわけだ。

これはある意味、日本という国全体がクレジットローン地獄に陥って
しまったようなものかもしれない。
これが問題になるのは、結果として本業をも圧迫した結果、その人たち
の生活費すら、借金の返済に回さなきゃいけない状態に陥ることだろう。

もちろん、そんなことをしたら生きていけなくなっちゃうわけだから、
多くの人の場合は、借金の期限を延長して、月々のやりくりの中から
細々と借金を返していたわけだけど、今度はそんなことをしている内に
資産の価値が下がってしまう資産デフレが起こってしまい、借金を猶予
している銀行のほうの体力がなくなってきた。

そうなると、個々の借金の返済を待つ余裕がないから、無理に取立てする
貸しはがしや、新たな借金をしぶる貸し渋り、なんて事態になってきた
わけだ。
ついでに言えば、現在の株価下落の一因は、銀行の持ち合い株解消の為
と、厚生年金基金で儲けようと思っていた、企業の代行返上による株式の
売り注文一辺倒になっていることもある。つまりある意味では、
自分で自分の首を絞めているといえるのかもしれない。


また、さっき国自体がクレジットローン地獄に陥ってしまった、と書い
たけど、国には私たちにはない、特権がある。
それがいくらでも紙幣を刷ることができるという権利と、それによって
国の借金である国債の支払いに関しては、滞る心配がないという権利。

だから、国がいくら借金しても心配ないよ、なんてことは実はなく、
そんな風に自分の借金をチャラにするためにじゃんじゃか紙幣を刷って
いると、いつしか国の信用や、その通貨の信用が落ちてきてしまい、
結局その通貨の価値が今までよりも下になってしまったり、新たな借金
をするときに、今まで以上の金利をつけないと国債を買ってもらえない
という可能性がでてくる。

そして、その高くなった金利分を補うために更に紙幣を刷ると、益々
通貨の信用と価値が落ちてしまうという悪循環に陥りやすくなる。

つまり85年のプラザ合意では、2倍に跳ね上がった円の価値が
この先落ちる可能性をはらんでいるということである。
ちょっと落ちるだけならいいけれど、大幅に下がるとアルゼンチンの
ようになってしまう危険性もある。

まあ日本はまだ多額の預貯金を含めて、体力があるのでそこまでの危険
性はないと見られているわけだけど。


さて、話をバブル経済に戻す。
それでは、バブルのはじけてしまった日本に集まっていた、今までの
お金は今度はどこに集まるようになったのか。
それがアメリカ。

だからアメリカは製造業がいくら弱くて、輸出量より輸入量の方が多く
て国民一人当たりの借金がいくら多くても、好調な経済発展を90年代
を通して続けてきたわけだ。

だって、一人一人の借金がいくら多かったとしても、そこに投資すれば
倍になる可能性があるんだったら、みんな投資するでしょ?
実際、アメリカの企業の業績も好調だったわけだし。
そしてやはり、4%だか何%だかの高利な金利が続けば、やはりお金は
その国に集まるわけだ。

そう、集まっているうちはいいのだ。
でも、集まらなくなってしまったら?
やはりバブルははじけてしまう危険性が高くなる。

今までアメリカにこれだけの資金が集まっていた理由、それは何も
アメリカだけが好景気だったからだけではない。他にドルに代わる基軸
通貨になりうるものが見当たらなかっただけだという見方もできる。

でも今は広大なヨーロッパという市場を持つユーロという基軸通貨が
力を持ちつつあるし、アジアに目を移せば、12億の民が住む中国の元
という脅威もある。

もちろん、ユーロにしろ、元にしろ今すぐにドルに代わりうる魅力の
ある通貨になっている訳ではないけれど、この先ドルに代わる可能性は
十分にある。

事実、アメリカドル−ユーロは1:1の為替レートだったのが、段々と
ユーロ高になりつつあるという見方も存在している。
今のところはお互いに牽制しあっているという見方もできるかも
しれない。

でも、もしもドルよりユーロのほうが魅力的だということになった場合
あれほどアメリカに集まっていた資金は、雪崩をうってヨーロッパに
移ってしまう可能性はある。

だって、アメリカの金利も最近は下がってきているみたいだし。
だからブッシュさんは、戦時下という非常事態?にもかかわらず、更なる
個人消費を喚起するために、大幅な減税策を打ち出してきた。
それによって、景気後退の懸念を見せるアメリカ経済を何とか下支え
しようという腹積もりだろう。

でも個人消費が、ミニマムペイメントなどの借金によって支えられて
いる限り、結局海外からの資金流入という条件がなくなってしまえば、
アメリカのバブル経済は、急速にしぼんでしまう危険性はあると思う。
果たしてこの危険な綱渡りは成功を収めるのだろうか。

更に言えば、アメリカのバブルが終われば、この先どこかでバブル経済
が再び起こる可能性は果たしてないといえるんだろうか。
個人的には、行き場を失った多額の資金が世界中にある限り、いつか
またどこかでバブル経済が起こる可能性ははらんでいるような気がする。
それも割と近くの地域、たとえば中国で。


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harry [MAIL] [HOMEPAGE]

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